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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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アトラスの傷跡

 
 
「ようし、一番乗りだな。さっそく迎撃準備をするぞ」
 エステル・シャンフロウの情報を見て、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は、真っ先にアトラスの傷跡にある宇宙港にやってきていた。この手前に絶対無敵要塞『かぐや』を設置して、最終防衛ラインとするつもりのようだ。
「ようし、こちらの準備は終わったぞ」
 なぜか土まみれになったルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が、ヨン・ナイフィード(よん・ないふぃーど)に言った。
「はーい。じゃあ、電気もらってきますね」
 ひとかかえもある巨大なコンセントをかかえると、ヨン・ナイフィードがトコトコと走りだした。絶対無敵要塞『かぐや』の主電源コードだ。一応、ちゃんと本体だけでエネルギーはまかなえるが、せっかく近くに補給基地があるのだから使わせてもらおうというちゃっかり屋さんである。
 三人が、野戦築城の準備に追われる間に、セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)は宇宙港の避難誘導を始めていた。
 宇宙港自体は、アルカンシェルの補給基地として機能していたため、物資保管や搬入のための倉庫や大型飛空艇発着場が主な施設のはずであった。だが、現在は何かジェットコースターのような巨大なレールが、宇宙港からぐるりとアトラスの傷跡を一周する形で建設されている。
「もうすぐ、ここは戦場になる恐れがあります。今のうちに避難してください」
 セレスティア・レインが、作業員たちを飛空艇の発着ポートへ誘導していった。そこには、第八式改・ボゥゲンシャウツンの姿があった。最近配備されたばかりの武者ケンタウロス型イコンだ。
「賊は南から来るらしい。北が、吉方だ。そちらへむかいなさい」
 イコンから降りて、同様に一般人を誘導していた東 朱鷺(あずま・とき)が、手に持った扇子で北を指し示しながら言った。
「なんだか、あわただしいな……」
 アトラスの傷跡の様子を調べに来ていたコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が、宇宙港の様子を見てつぶやいた。以前の戦いで超大型イコンを呑み込んだ火口は、今日は大人しく煙を噴き上げているだけだ。すべては溶け去って、今は跡形もない。
「ハーティオン、何をのんびりしているのよ、事件よ」
 そこへ、携帯を握りしめた高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)が、肩に星怪球 バグベアード(せいかいきゅう・ばぐべあーど)を乗せた夢宮 未来(ゆめみや・みらい)を連れてやってきた。
「何、事件だと!?」
 アトラスの傷跡の様子に気をとられていて、今まで周囲の様子にまったく気づいていなかったコア・ハーティオンが聞き返した。
「蒼空学園から連絡があったわ。武装集団がこちらにむかっているそうよ。また、面倒なことになりそうね」
 ため息まじりに、高天原鈿女が言った。
「ならば、することは一つだ。ここを守らねばならないだろう」
「ミライニ イイトコ ミセルゾー」
 コア・ハーティオンの言葉に被せて、星怪球バグベアードが言った。
「敵は、何を狙っているのだ」
「多分、これね」
 コア・ハーティオンの問いに、高天原鈿女がアトラス山をぐるりと一周している巨大なレールを目で示した。
 周囲のパラ実生たちは、新しいテーマパークのジェットコースターができたと喜んでいるが、その実体はシャトルを月軌道まで打ちあげるための施設である。
 現時点では、パラミタの宇宙空間にまで到達できる乗り物は機動要塞アルカンシェルしか存在していない。天御柱学院の第二世代イコンには大気圏脱出能力が開放されたが、通常は使用禁止のままである。
 往還機がたった一機というのは効率が悪く、また、月ゲートの転送能力がイコン一機分が限界と言うこともあって、新たにゴアドー島のゲートが開発されたのである。だが、ニルヴァーナの開発が大規模になっていくにしたがって、ゴアドー島のゲートだけでは輸送力の飽和状態がやってくるのは時間の問題であった。そのため、月ゲートからの最初の回廊の拡張が当然のように計画され、月への行き来も、もっと汎用的にできるように研究が進められていたのだ。
 その施設が、このカタパルトである。アトラスの傷跡を一周するほどのガイドレールを使って、その周囲に機晶石を使ったフィールド加速装置を使った一種のマスドライバーだ。力場で作られたトンネル内を大型飛空艇が加速されつつ周回し、十分な加速を得た時点で周回軌道を外れて月にむかう軌道へ射出されるのである。原理的にはコイルガンにも似た物であるが、磁力による加速ではない部分がパラミタの技術を象徴しており、磁力誘導体を必要としないことから磁場や熱の問題が発生しないため恐ろしく一般性が増している。
「分かった。これを守ればいいのだな。蒼空学園には、このハーティオンが、必ず守りきると連絡してくれ。いくぞ、バグベアード、合体だ
「イイトコ ミセル?」
 コア・ハーティオンに言われて、星怪球バグベアードが星怪球バグベアードを呼び寄せた。ハーティオン型のイコンにコア・ハーティオンが吸い込まれ、巨大な球体にバグベアードが吸い込まれる。直後に両者が変形を始めた。花咲くように開いた星怪球バグベアードが、パーツに分離して各部装甲と巨大なキャノンになる。
星心合体ベアド・ハーティオン!』
 名乗りをあげると、コア・ハーティオンは星心合体ベアド・ハーティオンを大地に降り立たせた。
「それじゃあ、その戦艦さんに連絡して、ハーティオンが味方だってちゃんと伝えるね」
 夢宮未来が、携帯を取り出すと、アトラスの傷跡の現状をフリングホルニに報告していった。