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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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第四十二章:彼女のHPはまだ0にならない

 さて、分校では最後の戦いが始まっていた。
「真王寺写楽斎を倒します。全員協力を要請します」
 委員長代行の御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は、委員会のみならず分校全体に号令をかけた。
 委員会のルールにより一度は仕切りなおしとなってしまった写楽斎との決着は、舞花の立会いの元厳正に行われる。
 そのままぶっ殺せばいいじゃないか! そんな声を舞花は却下し続けていた。決闘委員会の存在意義が消滅するからだ。これは喧嘩でも襲撃でもない。勝負なのだ。
 例え相手が極悪非道でも、決闘委員会は戦いに私情を挟まない。その鉄則が守られているから、委員会は生徒たちに受け入れられているのだ。赤木桃子が自分の全てを注ぎ込み一命を賭して築き上げた組織を、舞花も堅守するつもりだ。
 桃子は、あの襲撃を受けた後も標的にされ続けていた。
 写楽斎は賞金を賭けていたし、桃子が決闘委員会の委員長だという噂が流れ、分校内が騒然となった。
 桃子の噂を聞いて、モヒカンやならず者たちが結集して攻撃してくる。
「ヒャッハー! 赤木桃子を殺させろー!」
「あの悪党クソ女を葬り去れーー!」
 彼らの中には賞金稼ぎもいるが、多くは私怨を抱いているチンピラたちばかりだった。
 決闘委員会に不満を持つ者、あるいは桃子に痛い目に合わされたことのある悪党たちが逆恨みしておりいつか仕返しをしてやろうと復讐心をつのらせていたのだった。
 桃子がいた教室にはついにモヒカンたちが大挙して押し寄せるようになったので教室を転々とすることになった。
 舞花は、押し寄せるならず者たちを決闘システムを上手く使って一掃し、校内に名乗りを上げた。
「今の委員長は私です! 文句がある人はどこからでもかかってきなさい!」
 舞花は写楽斎を悪の根源にまつりあげ、倒すべき仇敵として分校中に知らしめた。【宣伝工作】も使用し、情報専門員もフルに活動している。校内は狩猟場のようになっているが、むしろ歓迎だ。
「狙われ続け追われている桃子さんは、一般生徒です。こんな理不尽な陰謀の犠牲者としておいていいのでしょうか!」
 舞花の仕事は早かった。強制捜査で押収した証拠品などを元に、明らかな不正として特命教師たちを名指しで非難し、これまでの陰謀も知らしめた。罪はでっち上げなくてもいくらでもあったのだ。
 一方の写楽斎もそのままやられるわけもなかった。逃げ出した後再起し、特命教師の残党を集め、傭兵団を雇って立てこもっている。写楽斎も負けじと宣伝作戦を続けていた。
 自分たちは、分校を良くしようと働いていたのに勢力を拡大する決闘委員会に排除されようとしていること。舞花の言っていることは全部でたらめで外部から分校を乗っ取りに来たのだとか、規則を厳しくすることによって生徒たちを弾圧しようとしているのだとか、地下教室に犯罪者を匿っていることとか(これは本当だが)あることないことを宣伝して回っていた。
 標的は委員長代行を名乗った舞花にも移りつつあった。特にネット工作が酷い。舞花への個人攻撃で中傷誹謗やネガキャンが書き込まれている。擁護するブログは炎上し、委員会の掲示板は一般生徒が要望を書き込めないほど荒らされまくりだ。全部写楽斎の仕業だった。
 舞花もネット工作員を使って写楽斎と特命教師たちのあることないこと書き込ませ続けた。おかげで両陣営が荒らしまくり酷い有様だ。
 陰湿な攻撃は写楽斎のほうが得意だったりする。例えば、舞花は屋根から汚物をばら撒いたりは決してしないが、写楽斎はできるのだ。舞花も、分校にいる間に写楽斎の煽動によって散々陰険なイジメに遭遇した。トイレで上からペンキを投げ込まれるなど当たり前で、少し休憩を取っていた部屋にゴキ○リの大群が押し寄せる体験をしたのは彼女くらいだろう。
 そういう意味では写楽斎は非常に強敵だった。舞花じゃなかったら、心が折れて逃げ出している。
「赤木桃子と御神楽舞花を倒せ!」
 いつしか舞花までがターゲットにされてしまっていた。
 あちらこちらで決闘を含める大小規模の紛争が起こり、分校は半ば内戦状態になっていた。決闘委員会は総出で対応するが間に合わないほどだ。
「安心しろ。お前のネガキャン書き込みは全部俺が消去しておこう」
 機械神として電子戦をしていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が分校の施設を占拠していた。
 描写はないが、あの後、真オリュンポスは電子戦に耐えられなくなり、施設を放棄したのだった。天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)は、結局ドクター・ハデス(どくたー・はです)の反撃に敗れ分校を去っていった。二人がどこへ行ったかは他の人が良く知っているだろう。
「どうしてこんなところに女の子が監禁されていたのでしょうか?」
 オリュンポスが去った施設を調査していた委員会によって、月見里 迦耶(やまなし・かや)は救出された。彼女は、何がなんだかわからないうちに事件に巻き込まれ事情を知ることもなく保護された。
 迦耶もまた、写楽斎の被害者の一人だったのだ。十六凪に施設を貸しけしかけたのも写楽斎だったのだから。
 残念ながら、善意の塊である迦耶の思いが届かない世界もあるのだ。言葉など通用しない。それがパラ実なのだった。