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紙ペットとお年玉発掘大作戦

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紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション

 紙蝶が舞い、佐々良皐月の頭の上にとまる。
「紙蝶さん、ワタシは宝物じゃないよ?」
「……ある意味、間違ってないけどねぇー」
「縁……」
 佐々良皐月と佐々良縁は笑みを交わし、歩く。
「縁さん、皐月さん!」
「こんにちは!」
 やや遠くから緋桜遙遠と紫桜遥遠が駆け寄ってきた。
「もしよかったら、協力しませんか?」
「うん、いいよぉー。ね、皐月?」
「……う、うん」
「では、お願いします!」
 声に応えるかのように、二匹の紙ペットが螺旋を描くように上昇して羽を重ねた。
 二匹を光が包み、跳ねて二匹を輝かせると、ふ、と消えた。
「あれ……いないよ?」
 佐々良皐月が首を傾げる。光が消えると同時に、紙ペット二匹の姿が消えていた。
「あそこです!」
 緋桜遙遠が声を張り上げる。雑草が茂る場所の手前に、二つの光が飛んでいた。
「掘ってみようかぁー」
 緋桜遙遠と佐々良縁は土を掘り返す。
 銀製の宝箱と、木製の宝箱がそれぞれ出てきた。
「今度は皐月が開けてねぇー」
「うんっ!」
 佐々良皐月は嬉しそうに木製の宝箱を開ける。
「キレイ……」
 サンザシのペンダントが入っていた。
「一緒に開けましょう……せーのっ!」
 紫桜遥遠の木製の宝箱、緋桜遙遠の銀製の宝箱が同時に開かれる。
「あ……! お揃いです!」
 紫桜遥遠は嬉しそうに微笑む。二人の宝は、同じ形状の銀のナイフだ。
「そうですね……あれ?」
 緋桜遙遠が宝箱を覗く。底に、日に焼けた布が入っていた。
「まさかこれ、ボロ布ですか?」
「きっとそうですよ! 校長の元へ持っていかなければいけませんね」
 緋桜遙遠は紫桜遥遠の言葉に頷こうとして、止めた。
「でも、協力すると言ったばかりで……」
「行ってきなよぉー」
 いつの間にか二人に近寄ってきていた佐々良縁と佐々良皐月が微笑む。
「そのかわり、校長に何もらったか、あとで教えてねぇ」
「はい。いいですよね、遙遠?」
「……すみません。行ってきます」
「いってらっしゃーい」
 学校に向かって走り出す二人を、佐々良縁と佐々良皐月はにこやかに見送った。

 スコップで土を掘り返す音。
 七枷陣が、宝箱を手に取った。楽しげに笑い、宝箱を開く。中身は、ふんどし。
「……これがお年玉って……」
 肩を落とす彼のやや遠くで、大きな水音。背後で仲瀬磁楠がライトブレードを構え、音の先を睨む。
「ちっ、魔物が寄ってきたか。小僧、お前は下がれ」
「はぁ?」
「何がはあ? だ。小さな鍵の書は湖に落ちて使えんだろう、だから下がれと言った」
「誰のせいで落ちたと思って――」
「無手の役立たずが前にいても足手まといだ。後方から援護しろ」
「うわ〜い、とってもコロしてぇ〜」
 七枷陣が、小さな鍵の書を振り上げかけると、小尾田真奈が機関銃を持って二人の間に立った。
「ご主人様、下がってください! 敵が……来ますっ!」
「チッ……真奈、磁楠! 任せんぞ!」
 向かってくるチョクシンガニに、小尾田真奈が【轟雷閃】を乗せた機関銃の射撃をぶつける。
 さらに仲瀬磁楠が【火術】を使用。蒼紫の炎が、雷と合わさってバチバチと音を立てた。チョクシンガニが倒れる。
「…………」
 七枷陣は、両拳に力を込めた。
「置いてゆくぞ小僧」
「……チッ、カニのハサミに挟まれて氏ね!」
「私は小僧ほど愚かではないからな」
「はあ?」
「お二人共、もう少し仲良く――」
「キュイ!」
 小尾田真奈が言い争いに割って入ると、二匹の紙ドラゴンが鳴き、鼻先で土を突いた。
「そこにあるのですね?」
 小尾田真奈が土を掘り返す。
「陣、掘れ」
「はあ!? 自分で掘れ!」
 言い争いつつも仲瀬磁楠も土を掘り返した。宝箱を取り出す。
 中身は、鏡。仲瀬磁楠と七枷陣を映し出している。
「……フン」
「ご主人様、見てください!」
 嬉しそうに小尾田真奈が宝箱に入っていたメイド服を見せた。と同時に水音。
「また来たか」
 三人の視線が、音の先を睨む。七枷陣は【ファイアストーム】を放った。

 別の場所にも、チョクシンガニは現れていた。
「っ、不覚だったな……」
 和原樹は顔をしかめる。
 フォルクス・カーネリアの【ディテクトエビル】で警戒していたものの、宝を掘っている間に距離を詰められ対峙する形となった。
「仕方ない。やるしかないの」
 ショコラッテ・ブラウニーは【子守歌】を歌おうと咳払い。
 愛沢ミサも【アシッドミスト】を構え――。
「……待つのです」
 箒に乗っていた鷹野栗が、四人の前に降り立つ。
「……戦わずして勝つのが一番なのですよ」
 そう言って光精の指輪で人工の精霊をつくり出し、チョクシンガニの気を引く。
「じゃあ、任せたよ」
 和原樹達は頷きあい、その場を後にした……。
「……間に合ってよかった」
 四人が去ったことを確認してから、鷹野栗は箒に乗り、チョクシンガニに笑みを向けた。
 挟もうとするチョクシンガニを、遊ぶように飛びまわって避ける。
「ふふ、楽しいのですよ」
 危険な戯れを満喫してから、鷹野栗は箒を進ませた。
「……チョクシンガニさん、こっちにくるのです」
 人気のない、静かな方へ誘導する。
「……さあ、ここですよ」
「ヲオオッォオオウ!」
 チョクシンガニは一声鳴き、水の中へ入って行った。
「……いつか部室に来てほしいのです……あ」
 紙鷹が近くの茂みを示していた。その場所を掘り返す。
 宝箱の中には、エレガントなミニハットが入っていた。