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高山花マリアローズを手に入れろ!

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高山花マリアローズを手に入れろ!

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 さて、そんな出来事があったとは露程も知らず、先行部隊はまっしぐらに山頂を目指して進んでいく。

「次から、次へときりがないですわね」
 東雲 いちる(しののめ・いちる)が自分に向かって触手を伸ばしてくる食虫植物を『凍てつく炎』で焼き払いながらパーティーの先頭を進んでいく。
「この辺りは、この魔の植物の群生地なのです。おそらく、この山でも一番多いのではないでしょうか」
 クー・フーリン(くー・ふーりん)がファイアプロテクトで他の植物を守りながら答えた。
「そうみたいですね」
 いちるはうなずいた。
「ですから、なおさらスタインさんのために焼き払っておいてあげないと……」
 そういって、いちるは次に『ブリザード』を繰り出した。『凍てつく炎』による炎を相殺するためだ。
「火はしっかり消しておかないといけませんものね」
 いちるが言う。
「山火事になってしまっては大変だもの」
「あまり無理をなさるな、主殿」
 モルゲンロート・リッケングライフ(もるげんろーと・りっけんぐらいふ)がクールに言う。
「魔力も無限ではありませんからな」
「大丈夫」
 答えるより先に、いちるは転んでしまう。
「我が君足元にお気お付けを」
 クー・フーリンがあわてていちるに手をさしのべる。
「大丈夫ですってば」
 いちるは笑った。
「少し、不注意だっただけですから」
「疲れも出ているのでしょう」
 モルゲンロートが言う。
「主殿は優しく勇敢なようだ。それはとても良いと思う。もっとも。主殿は今のままで十分魅力的だと思うのだがね……だが、あまり無理をしてはいけませんな」
「まったくです」
 クー・フーリンがうなずく。
「私は、我が君はてっきり妹さんの看病に行かれるのかと思っていたのですよ」
「看病についてあげたい気持ちもあったのですが、スタインさんに何かあっては妹さんが悲しんでしまいますから……」
 いちるが答えた時、背後から触手が伸びて来た。
「あぶない! 主殿!」
 モルゲンロートがハルバードで触手をなぎ払う。しかし、触手は次々に伸びて来ていちるを捉えようとする。
「我が君を頼む! 私は根元を狙うから」
 そう叫び、クー・フーリンが深緑の槍で根元を集中的に狙う。
「まかせておけ!」
 モルゲンロートはハルバードで伸びてくる触手を次々に叩き斬っていった。
 やがて、根元が斬られ食虫植物は動かなくなった。それを見届けると、クー・フーリンはいちるの元に駆けつけた。
「大丈夫ですか? 我が君」
「ええ、おかげさまで……」
 いちるはにっこり笑って言った。
「では、引き続きスタインさんのためにお掃除を続けましょうね」
「やれやれ……」
 モルゲンロートは肩をすくめた。


「クマさんだ!」
 先行部隊の一人レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が嬉々として叫んだ。
 言葉と同時に、茂みから巨大な3匹のヒグマが現れる。
「うわあ……熊じゃ!」
 レキのパートナー、ミア・マハ(みあ・まは)がパニクって辺りを駆け回る。
「何怖がってるんだよ! やっぱり、子供だなあミアは」
 レキが笑った。
「ボクにまかせておきなよ。実は、一度クマさんと相撲してみたかったんだよね!」
「『クマさんと相撲』じゃと? どこが大人じゃ。大体、わらわから見ればレキの方が年下じゃし、妹みたいなものじゃ。まったく……図体と胸ばかり育ちおってからに」
 ぶつぶつつぶやくミア。
「大体、何故、食虫植物ではなく熊狙いなのじゃ、レキ!」
 ミアが非常に残念そうなオーラを出す。
「テンションだだ下がりじゃ」
 何か、不純なものを期待していたようだ。

「クマさん、相撲とろう!」
 そういうと、レキは自分の倍以上もあるクマに飛びかかっていった。先手必勝とばかりに『先の先』で熊の懐に飛び込み、両脇を抱えて足を引っ掛けて投げ倒す。不意をつかれた熊は、なんと投げ飛ばされてしまった。その、熊を見下ろしてレキがいう。

「ごめんね、クマさん。もふもふ好きのボクとしては本当はむやみに攻撃はしたくないんだけどね。薬草を採って帰るまで、ちょっとの間大人しくしていて欲しいんだよ」
 
 しかし、レキの言葉も虚しく熊は起き上がって、レキに襲いかかって来た。熊が前足を振り上げる。あまりの不意打ちに逃げ切れず、レキの体は3メートルほど吹き飛んだ。
「大丈夫か?」
 ミアが『リカバリ』を唱えてレキの体を回復させる。レキは立ち上がった。
「大丈夫。大丈夫。けど、穏便にすますのは無理みたいだね。これだけはやりたくなかったけど、しかたがない……」
 レキはラスターハンドガンを手にした。そして、熊に向かって『アルティマ・トゥーレ』を撃つ。武器から冷気を放たれ熊に大ダメージ。熊は唸り声を上げてその場に倒れた。
「とどめはささぬのか?」
 ミアが言う。
「ささなくてもいいよ。どっちみち戦闘不能だよ」
 レキが答えた。


「ヒグマなんて、熊鍋にして食っちゃえばいいのよ!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はクマに対峙しながら叫んだ。彼女は、メタリックブルーのトライアングルビキニの上にロングコートを羽織るだけの姿で、煽情的な美しい肢体を惜しげもなく晒している。
「セレン、あんまり調子に乗ったらだめよ」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が恋人を軽く諌める。こちらも、黒いロングコートの下にホルターネックタイプのメタリックレオタードのみを着用。同じく、無防備すぎるその肢体を『女王の加護』と『ディフェンスシフト』で守っている。
「油断大敵よ!」
「そうね」
 セレンはうなずくと、自らもその美しい姿態を女王の加護で守りを固めた。それから、アサルトカービンを高く頭の上に掲げる。そして、
「いくわよお」
 と、ヒグマに狙いを定めて、引き金を引いた。

 パアン……パアン……!

 シャープシューターを用いた射撃で、遠距離から確実にダメージを与えていく。

 パアン……パアン……!

 ヒグマの体のあちこちから、真っ赤な血が噴き出す。得体の知れない痛みにヒグマは半狂乱になり、うなりながらセレンに向かっていった。

「こっち、こっち!」
 セレンはからかうように叫びながら、そのすらりとのびた美しい手足を踊らせて逃げ回る。その後ろをヒグマが首をふりながら追いかけていく。程よい位置まで離れると、セレンはまた振り返って銃を乱射した。しかし、いくつものダメージを与えるものの、殺すにはいたらない。
「さすが……しぶといわね。でも、遊びはここまでよ」
 セレナはつぶやくと、パートナーのセレアナに合図を送った。セレアナはうなずくとランスを手に、忍び足でヒグマの背後に回る。ヒグマはセレンに気をとられていて背後の敵には気付かない。その調子……一歩、二歩……気付かれてはいけない。
 幸いクマはセレンに気をとられている。無事、射程距離内に入り込むと、セレアナはランスを構え、スキル『ランスバレスト』を用い、強力な突進攻撃でクマの体に槍を貫通させた。クマに大ダメージ! 唸りながら振り返ったクマに、今度は『チェインスマイト』で続けざまに槍を繰り出す。

 グアアアア!

 クマは猛り狂ってセレアナに襲いかかっていった。前足の爪がシルバーのレオタートを引き裂く。
「きゃ!」
 白い柔肌が露になった。
「危ない! セレアナ!」
 セレンは叫ぶと、

 パアン……パアン……!

 背後から銃のを乱射。
 その弾が熊の腹をぶち抜き……

 ドサア……

 ついに力つき、クマは大きな音を立てて崩れ落ちた。
「やった?」
「やったわよ!」
 うなずくセレアナにセレンが駆けつける。そして二人は武器を構えて得意げにクマを見下ろして言った。
「私たちにかかれば、こんなもんね」


「ったく……目の毒だな。あの二人」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、横目でセレン達の戦いぶりを見ながら苦笑した。
「でも、今は見とれている場合じゃないよな」
 エヴァルトの目の前には巨大なヒグマがいる。エヴァルトはスキル龍鱗化を発動させ皮膚を硬質化した。そして、盾を片手に熊に突進していく。

 グゥアアア……

 熊がエヴァルトに向かい首をふる。そして、立ち上がってエヴァルトを捉えようとした。エヴァルトは軽々とジャンプして熊の後ろに着地する。
 熊が振り返り咆哮をあげた。そして、再びエヴァルトに襲いかかってくる。エヴァルトは腰を落として構えると襲いかかってくる熊の腹に拳を入れた。熊の体が思い切り吹き飛び、口から血を吐いて倒れる。一撃で岩や壁を打ち抜くことができる『ドラゴンアーツ』のスキルを用いた攻撃だ。

 グル……ルルル……

 熊はうめきながらも立ち上がろうとする。エヴァルトはその熊に近づくと、ヒプノシスをかけた。
「眠れ。無益な殺生は好まない……」

 グル……ルル……

 もう一度エヴァルトはヒプノシスをかけた。
「眠れ。それとも熊鍋になりたいか?」
 その言葉に反応したかのように、熊は眠りについた。
「よし……」
 エヴァルトはうなずくと、その場に熊を残して歩きはじめた。