空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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ネフェルティティ女王をあやせ! 2

こうして、一行が、泣いているネフェルティティを前にもめていると。

「たぶん、お腹がすいているんですよね。
ミルクを作って来ました」
山葉 加夜(やまは・かや)が、ひと肌くらいの温度にしたミルクを、
哺乳瓶に入れて持ってくる。

「あーうー!」
「はい、今あげますからね」
ネフェルティティは哺乳瓶に吸い付いて、勢いよく飲みはじめた。

「わあ、よかった。
やっぱりミルクがほしかったんだね」
ノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)が、にこにこして言う。

加夜とノアは試行錯誤しつつ、
粉ミルクを溶かして、ひと肌の温度にしたのだった。

「そういえば加夜はミルク出ないの?」
「ノアってばもうっ! ミルクは出ませんっ!」
ノアに言われ、加夜は赤くなる。
「なんで出ないの?」
「なんでってその……赤ちゃん生まれてないですし」
「ああ、そっか、そういえばそうだね」

加夜は、ノアとそんな会話をしつつ、
幸せそうにミルクを飲んでいるネフェルティティの顔を覗き込みつつ、思う。
(そういえば、涼司くんとの間に子どもができたら、
どんな感じでしょうか。
きっと、涼司くんなら、優しいお父さんになってくれそうですね)

やがて、ネフェルティティはミルクを飲み終わって、
抱っこしている加夜の顔をじっとのぞきこむ。
「あー、うー……」
「どうしたんですか?」
「あう、う……」
ネフェルティティは、何か物足りなさそうであった。

「もしかしたら、まだお腹がすいているのではないか?
結界を使うのにエネルギーを使ったから、
普通の赤ちゃんよりお腹がすくのかもしれん」
セレスティアーナが、ネフェルティティの能力について指摘する。

「じゃあ、お乳をあげましょう。
……というわけで、碧葉、まかせたわ」
羽切 緋菜(はぎり・ひな)は、
パートナーの羽切 碧葉(はぎり・あおば)に、提案する。

「このミルクを碧葉の胸に塗って、
おっぱいを吸わせてあげましょう。
もう片方の胸には蜂蜜を塗ってね」
「って、なんで私なんですか!?」
「だって、赤ちゃんも大きい方がうれしいでしょ?
碧葉ってたしか、Fカッ……もごっ」
「きゃーっ!? 皆の前で! や、やめてくださいっ!」
碧葉が、慌てて緋菜の口をふさぐ。

「……こほん。
ともかく、大きい方がより母性があふれてていいんじゃないの?」
「そ、そんなこと言われても……」
「ね、お願い」
「……わかりました。ちょっとだけですからね!」

碧葉は、緋菜に押し切られて、ミルクを塗り、ネフェルティティにくわえさせる。
「なんか……こういうのも悪くないですね……緋菜」
「ふふ、幸せそうね」
ネフェルティティはミルクの味に少し落ち着いたようだった。

「あ、でも、ちょっと待って。
たしか、赤ちゃんに蜂蜜をあげるのはダメだったんじゃ……。
蜂蜜は生ものだから」
理子がそのことに気づいて言った。

「あと、そんなことしてないで普通にあげた方がいいんじゃないの?」
「それもそうね」
「え、ひどいですよ!」
理子のツッコミに、緋菜はうなずき、脱いでいた碧葉はショックを受ける。

「よしよし、じゃあ、ミルクをあげましょうね」
牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)が、
ひと肌にしたミルクの入った哺乳瓶を持ってくる。
「あー!」
ネフェルティティは喜んで、牡丹の哺乳瓶に吸い付いた。
「おいしいですか? よかったですね」
幸せそうなネフェルティティに、牡丹が優しく話しかける。

ミルクを飲み終わったところで、
牡丹のパートナーの身長32センチの機晶姫、
レナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)が、
ベッドに横になったネフェルティティの上をふよふよと旋回し始める。

「ほら、メリーゴーランドみたいでしょう?」
牡丹が言い、レナリィは、
赤ちゃん用メリーゴーランドのように、
ネフェルティティの頭上をくるくる回り続ける。

目が合って、微笑みかけるレナリィに、
ネフェルティティは笑い返す。
「きゃっきゃっ。あう。あー」

「うーん、目が回っちゃったよー……」
「おつかれさまでした、レナ」
レナリィをねぎらい、牡丹が微笑する。

さて、これでネフェルティティの機嫌が直り、一安心、と、一同は思ったのだが。

「うっうっうっ……うああああああああああああああん!」

ネフェルティティは急にぐずり始めた。

「どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおしたの、
ネフェルティティちゃあああああああああああああああん!?
あたしがママよーーー!!」
扉をバーンと開いて、
ニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)が、ものすごい勢いで走ってきた。
その姿は、あたかも、子連れの熊のようであった。

その様子にビクッとなるネフェルティティと、他の一行であったが。

「これはおしめね!
野郎どもは一旦外に出なさい!
レディーの前よ!」
が、ニキータは、非常にてきぱきとした態度で、
ネフェルティティの要求を理解し、男性陣を追い出しておむつを交換する。
誰も、ニキータはいいのか、などと突っ込むことはできなかった。

最初はニキータを怖がっていたネフェルティティだが、
おむつをかえてもらい、機嫌がよくなったのであった。

「やーん、かわいいわあ、
ニキータ姐さんの母性本能、擽られまくりよ〜」
「……母性?」
タマーラ・グレコフ(たまーら・ぐれこふ)が、ぼそっとつぶやく。

「あーん、かわいいいいいいん」
ニキータが、ネフェルティティに頬ずりする。
幸いにも寝起きではなかったため、
タマーラがいつもやられているようにゾリゾリすることはなく、
ネフェルティティはご機嫌であった。

「……将来が、心配」
そう言ったタマーラの指を、
ネフェルティティが小さな手でつかむ。

「あうー」
「あら〜天使ちゃん、お姉ちゃんね」
「……」
ニキータに言われ、タマーラは、無表情ながら、
そっと、ネフェルティティの柔らかな髪をなでたのであった。