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イルミンスールの迷宮!?

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イルミンスールの迷宮!?

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5.決戦! 巨大虫ニーズヘッグ

 こちらは寄生虫撃破グループ。

 さきほどの寄生虫戦が一段落したところで、運搬班と護衛班を先に行かせたが、寄生虫撃破班はその場にとどまって、まだ敵の残りがいないかを調べていたのだ。

 瓜生 コウは、用意してきた登攀用具で入り込みにくい場所を率先して調査している。

 それまでもコウは道中の様子をメモしたり、マメに記録を付けながら、コウ自身が深い場所を優先して進んでいった。

 パートナーのリナス・レンフェアは、キャップライトをかぶり、コウの前に立って進んでいる。

 コウとリナスは、周囲を警戒しながら慎重に歩んでいった。
 穴からワームが飛び出す可能性があるので、小さい穴にも注意を怠れない。

「寄生虫たちの出所には、汚染源があるはずだぜ!」

 瓜生 コウがそういいつつ、怪しい箇所の中心部を調べていると、中に入れる穴があった。

「ここだ!」

 リナス・レンフェアはそうつぶやき、中に入っていった。他のメンバーも、続いて入っていく。

 穴の中は、驚くほど広い空洞になっており、美しい泉が流れている。

「きれい・・・」

 篠月 流玖は、美しい光景にうっとりと見とれていた。

 しかし、泉のそばには、今までに見たこともないような巨大ワームが、無数の寄生虫たちとともに鎮座していた。

「コイツが寄生虫たちのボスだな」

 デズモンド・バロウズがつぶやいた。

 ファタ・オルガナが続けて言う。

「これはニーズヘッグだ。昔、本で読んだことがある。
世界樹の根を食い荒らす、諸悪の根源だよ」

 根を食んでいたニーズヘッグは、こちらに気がつくと、むっくりと頭をもたげて「カーッ」と鋭い歯を剥き出した。

「行くぞ!」

 先陣を切ったのはエル・ウィンド。
 彼の繰り出すランスは、確実にニーズヘッグのわき腹を突いた。
 しかし、あまりの皮膚の硬さに、弾き返されてしまった。

「こ、これは手強い。さすがボスは一筋縄ではいかないぜ」

 これを見ていた生琉里 一葉は
「そうだ、エリザ様に対処の方法を訊いてみよう」
といって携帯を取り出し、エリザベートに電話をかけた。


 さて、こちらは地上組。

 エリザベートを中心に、そばでは日下部 社と望月 寺美が、身の回りのお手伝いをしていた。

 日下部 社は、心配そうな顔をしているエリザベートの気持ちをやわらげようと、『面白い』話を披露していた。

「『世界樹イルミンスール』と掛けまして、『高い買い物』と解きます。その心は〜。
どちらも根(値)が張る。でしょう〜♪」

 しかし、この駄洒落にイラッときた望月 寺美に
「校長先生に迷惑掛けちゃいけませんよぉ〜」
とボディブローを喰らわせられてしまった。

 そこへ、エリザベートの携帯に、生琉里 一葉から電話がかかってきた。

「もしもし、エリザ様? 生琉里 一葉です。
ニーズヘッグの弱点を知りたいのですが、どうやって戦えばいいか教えてくださいませんか?」

 しかし、エリザベートも方法はわからなかった。

「ごめんなさ〜い。私もわからないですぅ。
あ、でも日下部 社くんに調べてもらうから、大丈夫ですよぅ」

「ええっ! 俺が調べるんですか〜?」

 突然エリザベートから話を振られた日下部 社は、面食らったものの、対処方法を調べに世界樹の前まで来た。

「うーむ、どないしたらええんや?」

 と、そこへリスのラタトスクが樹から駆け下りてくるのに出くわした。

 ラタトスクは、世界樹イルミンスールに棲み付いて、樹のてっぺんから根の底まで駆け回っているのだ。

「そや、ラタトスクはん。アンタこの樹のことは詳しいやろ。
ニーズヘッグの弱点を教えてくれへんか?」

 日下部 社がそう頼むと、ラタトスクは得意げに答えた。

「そんなこと造作もないね。ニーズヘッグは、常に根をかじっていないといけないんだ。
だから、ニーズヘッグを根から隔離してやれば、力が発揮できなくて弱ってくるよ。
おまけに、うろこの様な硬い皮膚も、ブヨブヨに変わってくるからね」

「おおきに! さすが、イルミンスールの伝令役は物知りだね! ありがとう!」

 日下部 社は大急ぎで携帯電話を取り出すと、根の中にいる生琉里 一葉に、今の話を伝えた。

 そして、エリザベートの元に帰って来た。


 さて、ニーズヘッグの対処方法を聞いた寄生虫撃破班は、早速根からの隔離作戦を開始した。

 アルフレッド・スペンサーは、禁猟区を樹の根に対してかけた。
 こうすることで、根そのものが護られるようになる。

 さらに、水神 樹が囮になって、ニーズヘッグを根のないところにおびき寄せた。

 パートナーのカノン・コートは光条兵器を取り出し、水神 樹に託す。

「光条兵器なら、斬るものを選べるから、樹を傷つけることなく戦えるだろう」

 ニーズヘッグは、水神 樹の陽動作戦にまんまと引っかかり、根のない場所へおびき寄せられた。
 しかし、根を食べ続けなければ弱ってしまう。

 ニーズヘッグは、慌てて根のあるところに戻ろうとしたが、そのときはもう、寄生虫撃破メンバーたちに、ぐるりと周りを取り囲まれてしまっていたのだ。

 水神 樹の光条兵器がニーズヘッグのわき腹を襲う。

「グサリ!」

 今度は確かな手ごたえがあった。

「グオォォォォン」

 ニーズヘッグは、苦しげなうめき声をあげ、暴れだした。

 クルード・フォルスマイヤーは、水神 樹と同じく、光条兵器の使い手だ。

「…ユニ! 銀閃華を!…」

 クルードがそういうと、パートナーのユニ・ウェスペルタティアは銀色に輝く光条兵器「銀閃華」を差し出した。

 しかし、ユニが銀閃を取り出すとき「ビリビリッ」という音がした。
 銀閃華は旧型なので、取り出す時にユニの服が破れてしまったのだ。

「……俺は負けない……どんな奴が相手でも……」

 銀閃華を手にしたクルード・フォルスマイヤーはそういうと、暴れているニーズヘッグめがけて駆け出していった。

 クルードの銀閃華は、文字通り銀色の火花を閃かせながら、ニーズヘッグの腹や背中を切り裂いていく。

 瓜生 コウと周藤 鈴花は、炎熱魔法を全力で撃ちつづけた。

 リナス・レンフェアも、コウに敵の攻撃が当たらないよう、援護に全力を尽くした。

 ファタ・オルガナと白波 理沙は、少し後方にいて、ニーズヘッグが根のあるところに戻らないよう、押し返している。


 エネルギー源である根から隔離されたニーズヘッグは、もはや彼らの敵ではなかった。

 苦しげなうめき声をあげながら、口から煙を吐いている。

「よし、みんなで一斉に止めを刺すぞ」

 デズモンド・バロウズの音頭で、剣・槍・魔法、それぞれの攻撃が一斉に巨大虫を襲う。

「ギャオォォォォォォォォウ!!」

 ニーズヘッグは、耳をつんざくばかりの断末魔の叫びをあげると、それっきり動かなくなった。

「やったぁ! これで寄生虫は全滅ね」

 日紫喜 あづまはこう言い放ち、寄生虫撃破メンバーたちは手を取り合って喜んだ。