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怪談夜話(第1回/全2回)

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怪談夜話(第1回/全2回)

リアクション

「フィー、すごいよ!座布団飛んでるっ!」
 ファニー・アーベント(ふぁにー・あーべんと)は目を輝かせて座布団を見上げた。
「あっ、あれあれ! あれなら乗れそうだよ!」
 ぶつかってくる座布団を物ともせずに真っ直ぐ突き進む。
 パートナーのフィール・ルーイガー(ふぃーる・るーいがー)は、それを笑わずにはいられなかった。
 怖い話は苦手なのだが、ファニーがどうしてもと言うので付いてきた。
(話を聞いている時は……こっそりファニーの服を掴んでいる事にします……)
「乗っても良いですけれど、落ちないように…気を付けて、くださいね?」
「わ〜かってる!」
 危ないので止めたいのですが……やっぱり無理ですね。
「いたっ」
「あぁ……」
「……うぎゃっ」
「あぁ……」
「今度こそ!」
「ああぁ……」
 ファニーの顔全面に、イラつきの文字が見えた。
「あ、あの…ファニー? もう……十分頑張ったんじゃ……」

「いや、諦めない! 乗れるまで絶対あきらめないっ! やだやだー、宙に浮く座布団に乗りたいのー!」

「……」
「フィー、手伝って!」
「あ……はい」
 フィールが座布団を押さえつけているうちに、ファニーは急いで座布団に飛び乗る。
「あ、あれ? わぁ! 乗れた乗れた!」
「良かった……ですね」
 この禍々しい空気の中で喜べるファニーの心境には感心せざるを得ないものがあるが。
(怖い……)
 フィールはファニーの乗っている座布団をしっかりと掴んだ。

「どうしてこんなことしたのよ?」
 武尊の憑依された演技はモロバレで、シーリルに一瞬にして後ろに回りこまれ取り押さえられた。
(や、やばい……シーリルに抱きつこうとしたなんて、口が裂けても言えない)
「え、え、えっと……面白そうだなぁと思って」
 武尊はあさっての方を見ながら言う。
「私の驚く顔が!?」
「ちちちち、違う違う! だから、その……」
 シーリルは溜息をつくと武尊から離れた。
「全く……心配させないでよ」
「えっ」
「なんでもない!」
 シーリルが恥ずかしそうに背を向けた瞬間、何故だか分からないが、無意識に、武尊は後ろから抱き締めていた。
「……まだ、何かに乗ろ移られてるの?」

「あ、いや、これは──……感謝の、意味? オレの…愛?」

 シーリルは飛び離れると、真っ赤になって怒った。
「くだらないこと言わないでよ!」
 叩こうとするシーリルから、武尊は笑いながら逃げだした。

「座布団のくせに座られるのを嫌がるとは生意気な。己が本分を弁えるが良いわ」
 山本 夜麻(やまもと・やま)は前を見据えた。
「ヤマダ〜、そっち押さえて〜」
 夜麻はパートナーのヤマ・ダータロン(やま・だーたろん)に声をかける。
「正座じゃなくて腰掛けるみたいに乗る〜。僕、正座苦手なんだよね……百合園の人って正座平気なのかな? すごいな。どういう足してるんだろう」
「ブツブツ言う暇があるなら早く乗ってくれ」
「は〜い」
 しかしまあ座布団が宙を舞うって、国技館かよここは……
 ヤマは周囲を見回してため息をついた。
(あれ? ん? 座布団?)
 まさか……これは……山田くん座布団全部持ってっちゃいなさい的なアレなんじゃないか?
 つまり!
 一連の怪奇現象は怪談よりもトンチの利いた面白話を聞かせろという幽霊側の要求だったんだよ!!
「……」

……ねーよ。アホなこと考えてないでヤマモトのお守でもするか。

 ヤマは自分のツッコミに、自嘲気味に苦笑する。

「ヤマダ〜! ヤマダ〜!! 乗った乗った! 写真、写真撮って!! 写メ写メ!!」

 夜麻は携帯を投げ渡すと、思いっきり最高の決めポーズをヤマに向かってしてみせた。
「超、気持ちイイっ!」
 ヤマは乾いた笑いをしながら、ボタンを押した。

「うわぁ……本当だったんだ……」
 朝野 未沙(あさの・みさ)は目の前に広がる異様な光景に気圧されながらも、勇気を奮い起こした。
 こんなチャンスはもう二度と来ないかもしれない。
「未羅ちゃん、未那ちゃん、行くよ!」
『うん!』
 パートナーで姉妹の朝野 未羅(あさの・みら)朝野 未那(あさの・みな)の二人は、真剣な目をして大きく頷いた。
「一番乗り〜!!」
 目の前の座布団に未沙はかぶりつくと、暴れようとする座布団を押さえこんだ。
「お姉ちゃ〜ん、苦しいよ〜」
「姉さん、苦しいです〜」
 同じように飛びついた二人も暴れる座布団と格闘している。
「頑張って! 絶対にチャンスはやってくるから!」
「うん、頑張る〜」
 やがて。
 上下左右に振り落とされそうになりながらも掴んでいたのが功を奏してか、抵抗する気配が消えていた。
 未沙はゆっくりと足をかけて乗ってみる。
「乗っ…た、乗れた! ……う〜ん、なんか不思議な感じー」
 目の前のバタバタした人間模様を見ながら、妹達に視線を戻すと。
「わー、飛べたの!」
 未羅が手放しで喜んでいた。
 体重がほかの二人に比べてやや重いため、乗っても浮かび上がらない座布団もあった。
 なんとか乗れる座布団を見つけ出して、今、ここにいる。
 感動!
「姉さん、ほらちゃんと乗れましたよー!」
 運動はあまり得意な方ではない未那は、苦労はしたものの、乗れることが出来た。
「すごいですねぇ〜浮いてますよ」
「最高〜!」
 悲鳴が飛び交う部屋の中で、三人は楽しそうな声をあげて笑いあった。

「あ〜あ〜あ〜」
 エリスは憑依された人間の症状を真似してみた。
 いつもいつも虐められているティアを驚かせてみたい!
 そんな思いがふつふつと沸きあがり、挑戦してみることを決意した。
「あ〜あ〜あ〜──……あ?」
 目の前のティアはポケットからカメラを取り出して、そんなエリスの姿を撮り始めた。
 なんだか、マズイ。
「あ〜、あ、あ〜…あれ? 私、何やってたんでっしゃろ? おかしどすなぁ〜あいたたた、なんか身体の節々が痛いどす〜」
 わざとらしく腕を押さえる。
「あっ、もしかしてティアが助けてくれたんどすかぁ?」
 その言葉に、ティアは持っていたカメラを下ろした。
「……助けたって何ですか?」
「え?」
「取り憑かれて意識が飛んでいたのであれば、記憶がないはず。なのに助けてくれたってどういう意味ですか?」
 目が据わっている。尋常じゃない、怒っている!

「ご、ご、ご、ごめんなさい〜〜〜〜私が悪かったどす〜〜〜〜ちょっと驚かせてみたかったんどす〜〜〜」

 エリスはティアの足元にひれ伏して土下座した。
(その格好……シビレますわ…)
「わたくしの足にキスしたら許してさしあげますわ!」
 女王様キャラに変貌したティアは、恍惚の笑みを浮かべてエリスを見下ろす。
「ひぅ……!」
 エリスは思いきり目に涙を浮かべた。

 意識を取り戻したエレンディラは、傍で心配そうに自分を見つめている葵に抱きついて泣きじゃくった。
 事の次第を説明していると。
 先程去っていったはずの座布団がまたやってきた。
「ひっ……」
「大丈夫、怖くないよエレン。これがさっき話した、ざぶ」
 葵は目の前の座布団に飛び乗った。
「ざぶ、ちょっとあっちに動いてくれるかな?」
 葵の言葉に。
 ふよ、ふよ、ふよ、ふよ……
 亀の歩みで進んでいく座布団。
 なんて愛らしく、なんて愛くるしい!
「エレン、エレン見てる!? あたしの言うこと、この子ちゃんと聞いてくれるんだよ!」
「本当ですね。きっと葵ちゃん、気に入られたんですよ」
「そ、そっかな?」
 葵は照れくさそうに、はにかんだ。
 素直に動いてくれる座布団に、自然と愛着が湧いてくる。
 しかし……、遅い。
「ちょっと妬けますね」
「え?」
「なんでもありません。落ちないで下さいね」
 とびっきりの笑顔でエレンディらは言った。

「だー! ワーワーキャーキャーニャーニャーピーピーキーキーうるさいぞ!!」
 静麻は喚いた。
 だから嫌だったんだ、こんな面倒くさいことは!
「皆さーん、落ち着いてください〜」
 レイナを横目で睨みながら、静麻は溜息をついた。
「ともかく、そんなに騒ぐから相手も調子に乗って騒ぎが大きくなるんじゃないか! 憑かれた奴なんかも容赦なく気絶させてしまえば良いだろ!!」
 この状況では誰も話しを聞いていないと分かっていても、静麻は叫ばずにはいられなかった。
「静麻! こっちに来て下さい!」
「ったく人使いの荒い……」

『ぴょーーーーーーーーーーーー』

「ひっ!」

 耳元で突然笛の音。

『ぴょーーーーーーーーーーーー』

 振り向くと、乃羽がリコーダーから口を離し、にやりと笑った。
「な、何してるんだ」

「雰囲気演出」

「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「あのね、あのね、さっきよりも上手く吹けるようになったんだよ!」

『ぴーーーぴょーーーーーーーーー』

「上手い?」
「………………」

 満面の笑みで尋ねてくる乃羽のせいで、疲れがどっと増した静麻だった。
 もう、動きたくねぇ。

「悩み事があるなら相談してください!」
 白い顔の女生徒に向かって、エルシーは叫んだ。
「ちょ……またでございますかっ!」
 目を離すとすぐこれだ。
 何故か標的にされてしまうエルシーに、呆れながらもルミは駆け寄っていく。
「妖精さーん、どこにいるんですか!? 出てきてください、イタズラしちゃだめですよ!」
「──妖精?」
 ふよふよと。
 座布団に優雅に乗りながら、この状況を高見の見物していた雪華が敏感に反応した。
「妖精? 妖精なんて何処におるん? ウチも見たいわっ!」
「見たいですか? 私も見たいんですよぉ。これはですね、妖精さんのイタズラのせいなんです」
「ふむふむ」
「首を絞めるっていう行為がお好きなようです」
「なるほどね〜コイツが……っぐ、ぅ」
「あららぁ、またですね」
「く、くるし」
「平気ですか? 気持ち良いですか?」
「そ、そんなわけな……」
「……うふふ」
 その可愛らしい笑顔は、まるで地獄の底へ連れていこうとするサタンのそれのように思えた。
「エルシー!」
 ルミがまたしても体当たりをして女生徒を引き離した──本当は傷つけたくないのだが。
「何やってるんですか! 助けなきゃ駄目ですよ、死んじゃいますよ!」
「死ぬ?」
 きょとんとした目で首を傾げるエルシー。天然なんて可愛いものじゃない。
 雪華は大きく息をつきながら思っていた。
 こんなに可愛い顔をしているのに。
 で…デビル……。

「ふんっ!」
 エリシアは座布団を叩き落した。
「ふんっ、ふんっ!!」
 そして、すれ違った憑依中の女生徒をとっ捕まえて、装備していた得物で一発……
「え、エリシア!」
 陽太が慌てて止めに入った。
「なんですか?」
「いや、えと……いくらなんでも彼女達に対しては……」
「さっきの出来事をお忘れですか!? わたくしは部下として、貴殿を守る義務がありますわ!」
「そ、それはそうですか……」
「貴殿の弾けそうになった顔、思い出してもゾッとしますわ! 弾けたらどろどろのぐちゃぐちゃのべちょべちょになってしまうんですよ!」
「そうですね……」

「トマトです! ぶちょぶちょですわ!!」

「……はぁ」
「倒して倒して…倒しまくります」
 エリシアの目に、殺気がこもっている。
「はい……」
 行き過ぎとはいえ、自分のことを心底心配してくれているエリシアに、陽太はもう何も言えなかった。

「幽霊の正体見たり! くらえっ外道照身霊波光線! 用具室へレッツゴー!!」
 神代 正義(かみしろ・まさよし)は片手を高く上げると、喧騒の真っ只中をずんずん突き進んでいく。
「ちょ、ちょっと待ってください〜──っ! ひっ!! ひゃっ」
 一々怖がるパートナーの大神 愛(おおかみ・あい)に、正義はため息をついた。
「何をそんなに可愛い子ぶってる? こんな座布団ごときに声を上げるなん……って、あれぇ? もしかして怖いのか? 声を出すってのは怯えてる証拠だぞぉ〜」
 嫌らしい笑みを浮かべて愛を見る。
「だだだだ誰が怯えてるって証拠ですか!? 幽霊なんかに座布団なんかに怖がったりしませんよ!」
「よっしゃ、その意気だ! ほら行くぞっ!!」
 正義は何事も無かったかのようにくるりと背を向けた。

……怖いに決まってるのに、どうしてそこで無視が出来る!?

「──……おやっさぁ〜ん!」
 愛はもう一人の正義のパートナー、猫花 源次郎(ねこばな・げんじろう)に泣きついた。
「あの人、ひどすぎますぅ〜」
 源次郎は、一人じゃ正義を止められないと愛に言われ、喫茶店を臨時休業して一緒にやって来た。
「正義……ノリノリなところ悪いが、愛は幽霊が苦手みたいだから程々にしとけよ?」
「っ!? あれはただのラップ音だ! ──…なっ!? 俺の進路を妨害するとは……ゴーストバスター・シャンバラン! 参上!!」
「おい、わしの話を……」
 どこから取り出したのか。
 隠し持っていた野球バットで、座布団を叩き落した。
「今のは、ただのぽるたぁがいすと!」
 高笑いをしながら歩き続ける正義の後姿を見ながら、愛と源次郎は大きなため息をついた。
「ほら、もうすぐここから出られるから頑張んな」
「ぅうう……もう勘弁してくださいよぉ…」

 駒姫 ちあき(こまひめ・ちあき)は口笛を吹いた。
 まさかここまでとは、夢にも思っていなかった。
 特殊講堂の噂を聞いてヒマ潰しにやってきただけだというのに……
 ちあきは目の前に広がる光景に、心奪われていた。
「ちちちち、ちあき、ちあき! 帰ろう! もう帰ろう!!」
 涙混じりに、パートナーのカーチェ・シルヴァンティエ(かーちぇ・しるばんてぃえ)が訴えてくる。
 練習が始まった途端にちあきにしがみついてきたカーチェだが、もう我慢の限界だった。
 噂を強制的に聞かされた為に、一人で家に残っていることが怖く感じられてついてきたのだが……
 この結果だ。
 後悔先に立たず!
「用具室に行ってみよう、カチェ」
 ちあきの言葉に、カーチェは思い切り首を横に振った。
「嫌だ、絶対嫌だ! 幽霊が出るかもしれない用具室に行くなんて死んでも嫌だ!」
「……じゃあ置いてくよ」

「っ!!」

──轟く悲鳴。
 ピアスから発せられる強大な禍々しいオーラ。取り憑かれたたくさんの人々。空飛ぶ座布団。
 こんな所に一人取り残されるのも絶対嫌だ!
「わ、分かった、行く! でも絶対中には入らないよ」
「じゃあ他にも誰か……」
「僕たちも一緒に!」
 神和 綺人(かんなぎ・あやと)とパートナーのクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が声をかけてきた。
「噂を聞いてやってきたんだ。用具室に──きっと何かがあるんだと思う」
「楽しみにしていた夜話会が中止になってしまったら残念すぎます!」
「中で何が起こっているのか調べて、それを解明させる! このまま夜話会が無くなったら嫌だから……」
 せっかくクリスと一緒に夜話会を楽しもうと思っていたのに。
「絶対に中止になんてさせない!」
「はい!」
 綺人とクリスは、大きく頷きあった。
「俺も! 俺もいいかな?」
 少しばかり怯えた表情の御影 義徳(みかげ・よしのり)が、慌てて側にやって来た。
(怖い話は苦手なんだよ。しかもこんな怪奇現象! 大体、何でこんな目に合わなきゃいけないんだ!)
「もちろん! 一緒に行こう」
 内心のびくびくさ加減を悟られないように、義徳は気丈に振舞った。
 悟られてたまるか。
「…あのぉ……」

「うわっ!」

 思わず義徳は声をあげてしまった。
 心臓がばくばく言っている。
「すみません……そんなに驚かせる気はなかったのですが……」
「き、気にしないでよ」
 真口 悠希(まぐち・ゆき)は申し訳なさそうな顔で義徳を見た。
(きっと怖がらせてしまった……)
 図星である。
 悠希は、校長の桜井 静香(さくらい・しずか)さまにナイトとして百合園を守ると誓っていた。
 大好きな静香さまの為、百合園の平和の為に頑張らなくてはっ!
 心の中で、大きく叫んだ。
(ボク……実は意外と幽霊とかは平気なんだよね。でもあまり怖がらないと、女の子として変に思われてしまうかもしれないから、少しだけ怖いフリをしつつ皆と一緒にこの件を解決しよう!)

 静香さま、ボク……貴女のナイトとして立派に事件を解決してみせますっ! 待っていてくださいね!

 悠希は静香の笑顔を思い浮かべた。
「あたしも行くよっ」
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)がひょっこり顔を出した。
「あたしが用具室を案内するから大丈…ぶ……あれ、この声……」
 歩は耳を澄ました。
 皆もつられるように目を閉じて意識を聴覚を集中させる。
「泣いてる……すごく辛そうにしてる。多分噂通り、用具室だと思う。あたしは女の子を探して元気づけるよ!」
 歩の言葉に、皆も大きく頷く。
「早く行って原因を解明しなきゃねっ」
 お友達になれるといいな。
 歩はぼんやりとそんなことを思った。
 泣いている理由を聞いて、しっかり相談に乗ってあげたい。
──出口に向かって走り出した面々だったが……
「あ、開かない!」
 障子戸が、まるでストッパーでもかけられているかのように、びくともしなかった。
 閉じ込められている!?

「ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎぃやああぁあああああああ!!!!!!」

 カーチェが叫んだ。

「うわ、うわあああああわああわわわああ!」

 続いて義徳が。

 二人の怯えが感染して、皆の恐怖心にも火をつけてしまった。
「た…たすけ、て…たすけてえぇえぇぇえぇぇええ!」
「開けてください〜〜〜〜」
「なんだこれぇ! 出れないよ〜〜〜〜!!!」
 皆が一斉に、障子を破って手を突き出した。