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リアクション
第6章 ゴーストタウンの生存者を探せ
「なかなか生存者を見つけられませんね・・・。帰り時間が過ぎてしまったようで、朝まで戻れなくなってしまいました」
レンガ造りの建物の中を、窓から覗き込みながら樹月 刀真(きづき・とうま)が言う。
「まったく・・・朝までこの町の中にいることになるなんて・・・」
文句を言いながらも漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は刀真と一緒に、家の中に誰かいないか建物の中を外から覗く。
「この町は生きた匂いがまったくしないようですが・・・」
「えぇ・・・まさに死者の町の呼び名に相応しいわ」
「それに・・・なんだか空気も重いですね」
死者の妄執が満ちた町の影響か、刀真は息苦しく感じた。
「そういえば俺たち食べ物を持ってきませんでしたよね」
「えぇ、朝までお腹空きっぱなしよ」
「といっても食費がやばいんですけど。おかしいですよね、今月分ちゃんと足りていたはずなんですが」
「そ・・・そうなの・・・」
「ここに来る前に、しっかり食べてから行こうと思ったんですよ。丁度お米をきらせていた上に冷蔵庫の中も空っぽでしたから、買いに行こうとしたら財布の中身が空っぽでした・・・」
「あぁ・・・それはきっと食費が本に化けたのよ!」
じっと目で見る刀真の視線を、月夜は必死に逸らそうとあさっての方向を見る。
「えーっと、行方不明者を探さなきゃ」
なんとか話を逸らそうと、辺りをキョロキョロ見回す。
「ねぇ見てあそこ!」
月夜が指差した方向を見ると、路上に倒れている行方不明者らしき少女を見つける。
傍へ駆け寄って息があるかどうか確認するが、すでに彼女は息絶えていた状態だった。
「顔がめちゃくちゃに潰されているわ・・・」
「のっぺらぼうたちの仕業でしょうか」
「たぶんそうね・・・」
「そろそろ聖水の効果が切れてしまいます。生徒たちが集まっている家庭科室へ急ぎましょう」
聖水が切れそうになっている刀真と月夜は、急ぎ廃校舎の方へ駆けて行った。
「生徒たちは見かけたけど、行方不明の人は見当たらないね」
両手で鉄パイプを握り締め、まなかはゴーストに怯えながら進む。
「この場所で普通の一般人が生きていられたら、それはそれで不思議だな」
「そうかもしれないけど・・・。ただ単に迷い込んじゃっただけなら助けてあげたいよ・・・」
「―・・・たしか被害者は顔をめちゃくしゃにされていたんだろ?」
「そうなんだよねぇ・・・想像しただけで本当にもう・・・怖すぎだよぉ・・・」
小声で呟くように言うと、食堂からガタンッと物音が聞こえた。
「だ・・・誰かいるの・・・?」
「まず先に俺が見てこよう」
「待って、私も一緒に行く!」
まなかはシダの後を追い、食堂へ入って行った。
「そこに誰かいるのか?」
シダの声に人影がビクと震える。
長いテーブルの下から、生存者と思しき青年が恐る恐る顔を出す。
「よかった、やっと生存者を発見できたよ。ねぇそこのあなた、私たちと一緒にトンネルの外へ・・・」
生存者へ声をかけたまなかは、言葉を途切れされる。
途中で止めてしまったのは、彼の背後に顔のない化け物がいたからだ。
シダが助けようと彼の元へ走るがすでに遅く、ゴーストによって青年の顔は包丁で斬り落とされてしまった。
真っ赤な鮮血がテーブルと床に飛び散る。
「な・・・何をしているんだ?」
斬った青年の顔を自分の顔につけようとしているゴーストの異様な行動に、シダは驚愕の声を上げる。
「こんなのじゃ・・・こんなのじゃ駄目だぁああ!」
ゴーストは奪った顔を外し、ベシャッと青年の顔の断面へ叩きつける。
逆上した化け物は手にしている刃物で、その顔を何度もザクッザクッと斬りつけた。
向かってこようとするゴーストを、シダは標的の両腕と頭部をランスで斬り落とす。
「このぉおお!」
止めといわんばかりに、まなかが鉄パイプでゴーストの顔を叩きつける。
「せっかく生きている人を見つけたのに・・・」
俯いて涙を流しているまなかの黒髪を、シダは優しく撫でて宥めてやった。
「生存者いねぇのかよ」
1階の廊下を歩きながら、武尊たちは生存者を探していた。
「誰かいないかー?いたら返事しろぉお!」
又吉は大声を上げて呼びかけようとする。
「いそうにないね・・・」
「しっ!何か聞こえるわ・・・」
伽耶たちは声が聞こえた方へ向かう。
「見つけましたわよ!」
声を上げてシーリルは武尊たちを呼ぶ。
そこにはシクシクと泣いている少女の姿があった。
「もう大丈夫だぜ。朝になったら一緒にトンネルの外へ行こう」
「顔が・・・私の顔が・・・」
隆光の言葉が聞こえないのか、少女は返事をせずに泣き続けている。
「―・・・顔?顔がどうかしたの?」
少女へ優しく伽耶が声をかけるが、まったく返事が返ってこない。
「泣かないで・・・あたしと一緒に・・・あっ!」
なかなか泣き止まない少女の肩に伽耶が手を置こうとした瞬間、少女の姿はその場から消えてしまった。
「き・・・消えた!?」
又吉は驚愕の声を上げた。
「幽霊・・・だったのかしら。可哀想に・・・死に迷ってしまっているのね」
泣きながら消えた少女の霊に対して、シーリルは悲しそうな顔をする。
「あっ・・・あれ・・・」
食堂の方から真っ赤な血に染まった包丁を片手に、徘徊しているゴーストを伽耶が見つける。
「化け物がぁああ!舐めんじゃねーぞ、この野郎ー!」
アサルトカービンをゴーストに向けて、又吉はトリガーを引き標的へ銃弾を浴びせた。
武尊もショットガンで相手の頭を狙い、銃弾を撃ち込む。
伽耶とアルラミナの2人がかりで、アシッドミストの術を放ち、ゴーストはドロドロに溶解した。
「どうやらもう・・・生存者はいないようだな。家庭科室へ行こうぜ」
彼らは生徒たちが集まっている家庭科室へ向かった。
「―・・・誰?そこに誰かいるの?」
悲しそうにシクシクと泣く声が聞こえ、ヘイリーは声の主を探そうと辺りをキョロキョロと見回す。
「―・・・・・・・・・そこに・・・」
リネンは泣きながら校舎の外へ出て行く少女の姿を見つけた。
「追いかけよう!」
2人は少女の後を追い、後者の外へと出て行く。
レンガ造りの家の角を曲がった所で、少女の姿は消えた。
「ゆ・・・幽霊!?」
目を丸くしてヘイリーは叫ぶように言う。
「ねぇ・・・これ」
リネンが指差した方を見ると、顔をめちゃくちゃに潰された少女の亡骸があった。
「たぶんそうね・・・さっきみた幽霊の亡骸よ」
「リネン危ない!」
ゴーストの気配を察知したヘイリーが、リネンの身体を庇い、路上へ倒れ込む。
リターニングダガーで何度も斬りつけてゴーストの四肢を切断し、頭部を斬り離した。
「視界が悪いわね・・・逃げるわよ」
逃げようと前を向くと、のっぺらぼうが手にする凶器がすぐそこまで迫っていた。
しゃがみ込んでなんとか回避する。
「いっぱい来たわよ・・・あっちにも・・・こっちにも!」
ヘイリーたちはその場から逃げようと全力で走るが、道に迷ってしまった。
「行方不明者・・・見つからないわね。こんな町に長い時間いたとしたら、生存している確立はないのかしら」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は食堂の引き出しを開けて、誰か隠れていないか確認する。
「まぁ・・・普通の一般人は無理だろうな」
探し疲れたのか、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はため息をつく。
「生きていたらそれはそれで驚きだな」
カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がカロリーオフクッキーを食べながら、ダリルの言葉につけたすように言う。
「もしかしたら・・・ていう気持ちがあるのじゃない!」
眉を吊り上げてルカルカはダンッと足を踏み鳴らす。
「この街全体が想念の産物なんだろうか・・・?」
カルキノスは眉を潜めて考え込みながら、空かない棚の取っ手の隙間に鉄パイプを入れ、無理やり開いてみたが誰もいなかった。
「なっ何?」
低い声音で呻くような声が聞こえてきた。
「ゴーストのお出ましのようだ」
「声の大きさからして近くよね?どこに・・・」
辺りをキョロキョロと見回していると、胴体が半分に割れた顔のない化け物がルカルカの足を掴み、手にしている包丁で刺す。
もう一度ルカルカを刺そうとするその手へ、カルキノスは鉄パイプを殴りつける。
ダリルが傷ついた彼女の足をヒールで癒してやる。
「さっきは油断したけど、今度はそうはいかないわ。逃げる奴はただのゴーストよ。逃げない奴は特殊部隊で訓練されたゴーストよ!」
無茶苦茶なことを言いながら楽しそうに笑い、手斧でゴーストを微塵に斬り刻んでいく。
血しぶきと肉片がルカルカの方へ飛び散り、ついた肉片をカルキノスが取って床へ捨ててやった。
ルカルカたちは飛び散った肉片をグシャベチャッと踏みながら食堂の外へ出た。
「さっきから亡骸ばかりで生存者が見つからないですね」
「もしいたらすごい生存力の持ち主でしょう」
「怖いにゃぅ・・・箱から出たくないにゃぅううっ!」
「あっ!」
エメは路上を走っていく人影を見つける。
追っていくとそこには行方不明者らしき人間を襲い、顔をめちゃくちゃにつぶしているゴーストの姿があった。
蒼は鉄パイプで、アレクスはリボンアームで掴んだ手斧をゴーストに叩きつけてなんとか倒すが、襲われていた人間はすでに息絶えてしまっていた。
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