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団長に愛の手を

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団長に愛の手を

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「あれ、お話が変わっちゃいました?」
 団長と音子の話に混ざってきたのは、第四師団温泉開発責任者プリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)だった。
 技術科の女の子で、その中でも(少なくとも外見は)最年少と思われる女の子だ。
「さっき第四師団の話してたかなーと思ったんで来たんですよ。本当は騎凛セイカちゃんも誘いたかったんですけど、奈良行く準備で忙しいーって」
「なぜ騎凛を?」
「セイカちゃんが毎日団長と第四師団の資金難のことを考えているので、それについてお話しできればなーって」
 ちょこちょこっとプリモは団長に近づき、小声で囁く。
「中央と違って、地方票なんて交付金の配布しだいですから、ちょっとした事で大人気ですよ」
「……何が目的だ?」
「なんにもー。あたしはセイカちゃんのサポートをしてあげたいだけですー」
 小さく笑っておいて、プリモはちょっと団長から離れた。
 プリモの見た目は11歳。
 恋愛に興味はないものの、団長は嫌いでもないが……
(あたしを選んだら、団長これから『ロリコン校長』っていう別の意味で注目されちゃうよね)
 とプリモは思っていた。
 プリモの話を漏れ聞き、フランソワが話に加わる。
「そうそう、こういう機会だしさ! 団長に頼みたいことがあったんだ。空挺か機甲科に装甲車か(空挺)戦車を導入してくれないかな?流石に機甲科なんてのは格好がつかない気がするんだよね……」
 ジーンズの足を組み変えて、フランソワが女の子らしく、おねだりをする。
「…………」
 物と金をねだってくる女性陣に団長がじっと黙る。
 睨んではいないが、重い沈黙が流れる。
「さて、ここは酒ですかな」
 割って入ったのは、セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)だった。
「団長、酒でも酌み交わしましょうか」
「ふむ、酒は良いものだ。タダで酒が飲めて、飯が食える。なんと良い会であろうか」
 ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)が、セオボルトに同意して、酒を持ってこさせる。
 ケーニッヒはカッティが作った料理を端から平らげ、パーティの作法など無視して、皿の上に料理を山盛りにして、ガツガツと食べていた。
 五人前くらい食べたところで、ちょっと話に入るとかと思い、セオボルトが酒の話をしたので、酒が飲めると思って混ざってきたのだ。
「ま、酒と煙草があれば楽しめるね」
 フランソワもそれに乗り、スタッフが持ってきた酒を受けとる。
「さて、酒の肴は何がいい? ゴジ●のことでも話そうか?」
 自分の趣味の世界を展開しようとするフランソワを、ケーニッヒが止める。
「せっかく綺麗なねーちゃんがいるんだから、我が話してやろう」
「へえ、何の話ー?」
「戦場での話だ」
 ケーニッヒは自らの武勇談や死地での経験、銃やサバイバルナイフで相手を倒す方法などをリアルに生々しく大声でしゃべりまくった。
 しかし、ここは教導団。
 百合園のお嬢様たちにそんな血なまぐさい話をしたら、眩暈を起こしてしまうかもしれないが、教導団なので、むしろ話に乗ってくる。
「そうかな、ナイフで刺す場合にはさ、こうやって……」
 ケーニッヒの話にフランソワが乗り、音子も乗る。
 戦場経験の長い2人にとってはそれはむしろ面白い話だった。
「よーーし、じゃあ、気分が乗ってきたのでやるか!」
 酒が良く回ってきたケーニッヒがいきなり服を脱ぎ、上半身裸になって、自らの肉体を披露した。
 筋骨隆々たるその身体はまさに芸術品。
 歩兵科の中でも体躯の良いケーニッヒのそれは、筋肉好きの女性から見たら、たまらないものだった。
「この上腕二等筋の発達具合はまさに芸術作品だろう!」
 ぐっと腕を見せるケーニッヒに、どこからともなく、おおっという声が上がる。
 それに気を良くしたケーニッヒは、机の上からビール瓶を取った。
「さあて、では、余興だ! このビール瓶を真っ二つ!」
 そう叫ぶと同時に、ケーニッヒがビール瓶を割る。
 それまでの驚きの声とは違う、小さな悲鳴も混じるが、ケーニッヒは気にしない。
「はっはっは、物じゃ面白くないよな。それじゃ、ここは人間相手に、我の特殊部隊仕込みのマーシャル・アーツの技を実演……」
 ケーニッヒがセオボルトに手を伸ばしかけた時、その手を女性の手が掴んだ。
「はい、そこまで」
 またまた出動の宇都宮祥子とクロス・クロノスである。
「ん? せっかく乗ってきたところを…………うっ……」
 二の句を告げる前に、ケーニッヒは急性アルコール中毒でバターーンとぶっ倒れてしまった。
「……ランスロット卿」
 祥子はランスロットに頼み、それを運んでもらった。