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団長に愛の手を

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団長に愛の手を

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「いやーー、なんか暗いっすねえ! おいらなんてやーっと、教導団に着いて超ゴキゲンっすのに!」
 黄 明(うぉん・みん)が『軍師』の扇子を振りながら、明るく入ってくる。
 黄明は教導団に入ろうとして、うっかりイルミンスールに行き、そのまま織機 誠(おりはた・まこと)とノリで契約してしまった英霊……じゃなくて、魔女だ。
 って、英霊が来たタイミングで、コーメイって名前で作って、魔女!?
 と、つっこみたい人もいそうだが、英霊は外で繋がれてるエクリプス・ポテイトーズ(えくりぷす・ぽていとーず)がそうだったりする。
 なお、エクリプスは飼い主の関羽がいないため、赤兎馬に会えず、ふてくされている。
「あ、金様、さっきの鮪さんプロデュースの格好ダサかったっすね! あははは!」
「ちょ、コーメイ!?」
 誠が止めようとするが、黄明はまったく気にしない。
「おいらもヘンな格好っすからね! むしろおいらの人民帽と帽子交換して下さいっす! ほら、団長の帽子、大きい割に何も止めるところがないっすから、おいらの帽子の方が落ちなくていいっすあるよ!」
 黄明は団長の帽子に手を伸ばそうとしたが、誠が祥子たちの視線に気づき、慌てて止める。
「むぅ。ま、いいっす。本題は別っすから!」
 黄明は扇をバッと広げて、金団長に持ちかける。
「どーっすか校長! このコーメイを女の相棒候補にでもしてみないっすか!」
 そして、今度は扇をパチンと閉じて、外にいるエクリプスを差す。
「本来なら三顧の礼のところを、ただいまなら一顧の礼でお求め安くなってるっすよ!
更に、名馬の的盧もついてくるっす!」
「……あれは的盧か?」
「そう思えば何でもそうなるっす! ほら、金団長には関羽だけだからかわいそうっすから、ここはおいらを……」
「え、ええと……」
 他校の生徒が盛り上がる中、そこに入っていいのか迷いつつ、島村 幸(しまむら・さち)
は声をかけた。
 幸が遠慮するようなのは珍しい、と同じ蒼空学園の生徒が見たら、思うかもしれないが、さすがに場所が他校であり、他の学校の校長先生なので、幸もいつもより大人しかった。
「なんだ?」
 金団長が振り返り、その目つきの悪さと、先ほどまでのいじられっぷりに幸は、心の中で密かに萌えた。
(……この人やっぱりいじめてオーラが出てますね。この額からそもそもそういう匂いがしてましたが……)
 幸の可愛い妹たち(主にイルミン生)が団長ファンで、いつの間にか団長のファンクラブを作りたいということになり、いろんな団長の写真を撮るために、幸は団長に声をかけた。
 もっとも、幸自身は団長をいじくりたいのではなく、いじくられる団長を見るのが萌えるらしい。
「金団長、団長の(ヘタレぐあいさの)ファンなんです!! お願いです、これにサインいただけませんか?」
「他校の男子にサインを求められると思わなかったが……まあいい」
 団長の言葉に、幸の眉毛がピクッと動いたが、団長のために、そして、写真を撮って来て欲しいとお願いしてきた妹たちのために、ここは切れずにおいた。
「写真もいいですか? 教導団以外の学校にファンクラブを作りたいので、布教のためにお写真が欲しいのです!」
 実は断られたら、隠しカメラをカバンに仕込んで撮ろうかと思ったのだが、クロスに見つかり、それは会場を出るまで預かる、と持って行かれてしまった。
 なので、正攻法で行くしかない。
「布教とかファンクラブと言われても困るが……わざわざ他校から来てくれたことだ。悪用しなければ、一枚くらいは構わん」
「ありがとうございます!」
 幸は礼を言い、ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)と共に準備を始めた。
「何となく分かった気がしてきました、妹たちがいう団長の良さが!」
「は……?」
「今、私のマッド心にキュンと来ました! これが萌えっていうものなんですね?!」
「幸、萌えとはなんですかな? あの御仁とその萌えというものにどのようなつながりが??」
 来る前はイヤイヤだったはずなのに、何やらうれしげな幸に、ガートナは不思議そうな顔をする。
「そうですね、団長さんを見てるとヘタレとか、断るように見えてちょっとOKしちゃう受けな部分とか、なんとなく分かり始めてきた気がします!」
 各学園の妹たちに写真を配るため、いそいそと幸が用意を始める。
 ガートナはまだ不思議そうな顔だったが、画用紙にアルミホイルを被せた簡易レフ板を作成した。
 これで写真映りを良くするためだ。
「はい、それではいいですかー? 行きますよー!」
 幸は団長に壁際に立ってもらい、写真を撮ったのだった。