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黒い悪魔をやっつけろ!

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第2章 乙女の秘密のバスタイム

「これくらい神様もお許しになる筈です」
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)はボトルを手に、呟いて1人頷く。
 美容の為には仕方なかったのだ。全ては魔法薬の為に。
 彼女は、彼女とロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)は、混乱している高原瀬蓮(たかはら・せれん)の部屋に忍び込み、ピンク色の化粧水を拝借したのだ。
 でもそれだけじゃ明らかに足りないので、処分に困っていた校長からも、仕方ないので自分達が使ってあげると貰い受け、浴場の貸切許可までとった。
「円様準備はよろしくて?」
「うん」
 バスタオルを巻いて浴室に入った桐生 円(きりゅう・まどか)に続いて、ロザリィヌが浴室に入る。
 ロザリィヌが広げた両手の上に、小夜子が魔法の液体を乗せる。
 ロザリィヌは濡れた手を開けた円の胸に当てた。
「ひっ、冷たい……っ」
 ピクリと震えた円だが、そのままロザリィヌに身を委ねる。
「うぅぅぅ、くすぐったい、でもこれで大きくなるなら」
 桐生円15歳。外見年齢11歳にしても、これはないぜと思える、およそAAAカップ(せめて文字だけ大きくしてみました)。手の平サイズというか、幼児の手の平サイズともいえるこの胸の小ささにコンプレックスを持ち、焦りを感じている彼女の耳に、魔法薬の噂が入ったのはつい先ほど。
 美肌。大きくなる。美しい女性になるための薬!
 この単語を聞き、それならこの胸も、この胸も大きくなるに違いないと、薬を手に入れようとしている乙女達に混ざることにしたのだ。
「瀬蓮ちゃん、いつもよりお肌綺麗に見えたし、あたし達も綺麗になろうねっ」
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)も、薬を塗られる円を微笑ましげに見ながら、バスタオルを巻いて浴室へと入っていく。
「塗り塗りし合うのって楽しいですよねっ」
 蒼空学園の桐生 ひな(きりゅう・ひな)も、特別に浴室に入れてもらって、液体を手にとって小夜子の顔に塗っていく。
「ありがとうございます。うふふ、くすぐったいですわ。それでは私も」
 小夜子も液体を手にとって、ひなの顔へ塗っていく。
「もっともっと、この辺りとかもお願いします〜っ」
 ひなは右頬を小夜子に突き出した。
「うふふ、あとは可愛らしい唇にも塗り込めば、もっとぷるぷるするかもしれませんわ」
 バスタオル一枚だけの姿で、乙女達は互いの顔への塗り合いっこをきゃぴきゃぴ行なっていく。
「みんなすべすべしてていいわねぇ〜、おねぃさん妬けちゃうわぁ〜」
 オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は、浴室には入らず、脱衣所から乙女達が戯れる姿を微笑ましげに眺めていた。
 吸血鬼というもともあり、美貌には特に拘っていない。
「若いっていいわねぇ〜、一瞬の美しさだものねぇ〜」
 微笑みながら見回せば、脱衣所には彼女達の可愛らしい数々の服が畳まれている。
 見慣れた百合園の制服に、蒼空学園の制服だとか。
「オリヴィアに着れそうならちょっと着てみてもいいかもぉ〜」
 服を手に取って、広げてみる。
「小夜子さんのシスター服には少し興味があるのよぉ〜。歩ちゃんの服もちょっと見てみたいわぁ〜」
「着せ替え着せ替え? ミネルバちゃんはG警戒中ー。なんにも起きないとつまんないなー」
 ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)は、耐熱性の高い手袋を嵌めて、金属製の水鉄砲を構えている。中には熱湯が入っているがすぐに冷めてしまうので、マガジンという名のポットも常備している。
 わくわくGの出現を待っているが、今の所気配はない。
「痛い! 痛いからやめてよ!」
 浴室で円が大きな声を上げた。
「うひひ、大きくなりたいのじゃろ? 他人にもまれると効果倍増なのじゃ。大人しくせい!」
「痛っ、痛いよ……!」
 ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)が、徹底的に円の小胸を撫で捻り回す。
「痛いことするのダメーっ!」
 心優しい歩は、痛がる円を見て、意を決し魔法薬に飛びつき、胸に抱きしめてナリュキを非難の目で見る。
「わかったわかった。歩にも塗ってあげるのじゃ。なまら優しくじゃ。気持ちよくさせたるにゃー」
 ナリュキは塗れた手を、歩の首筋に当ててそっと撫でていく。
「きゃっ、くすぐったいっ」
 歩はくすぐったさに、笑みを浮かべた。
「肌同士で擦り合わせた方が効率がよろしいですわ〜♪」
 突如、ばさりとロザリィヌがバスタオルを落とす。
 歩の手から魔法薬を回収して、自らの美しい肢体に振り掛けていく。
「それは良案じゃ。薬の量にも限りがあるからにゃ、効率良く塗りあうには一番じゃ」
 ナリュキも、バスタオルを投げ捨てると、薬に塗れたロザリィヌに抱きついていく。
 肌を重ねて、擦り合せて時折甘い声を上げながら互いの体に魔法薬を浸透させていく。
「円様もいらして?」
 ロザリィヌが艶かしく手を円に差し伸べる。
「う、うん」
 2人とも胸が大きいし、言うとおりにすれば成長するのだろうかと、円はロザリィヌの手を取って2人の中に入り込む。
 3人の白い体が絡み合い、互いの肌に肌を滑らせていく。
「小夜子様も、お薬の調達を手伝って下さったご褒美ですわ」
「きゃ……っ」
 ロザリィヌが小夜子の腕をぐいっと引き、肩に手を滑らせ、バスタオルの中に差し入れていく。
「歩もこっちに来んか。可愛がってやるのじゃ♪」
 ナリュキが歩の腕をとった。
「えっ、えっ、えーっ……これ、良いの?」
 歩は足を一歩後に引いた。
「おーっほっほっほっ! 親睦を深め合うためにも必要なことですわ! おーっほっほっほっ!」
 ロザリィヌの高笑いが響き渡った――その時。
「そこまでですー!」
 ドゴスッ!
「きゅぅーなのじゃー……ばたり」
 G撃退用に用意してあったひなのハンマーが炸裂し、ナリュキを打ち倒した。
「えいっ。ごめんね!」
 ナリュキの手から逃れた歩も、光学迷彩で姿を消してロザリィヌの背後に近付くと、ぽかりと頭を殴った。
「おーっ、ほっほぉぉっ!?」
 つるんっ。
 と、滑って転んだロザリィヌも目をぐるぐる回してその場にばたりと倒れる。
「寮長とか、先生に知られたら大変なことになっちゃうよっ。ごめんねーっ」
 歩は謝りつつ、ロザリィヌの体を引き摺って湯船の方に連れて行く。
「このままだと冷えちゃうから」
「そうですね」
 小夜子もバスタオルの上からドキドキしている胸を押さえ、大きく息をついた後、歩を手伝ってロザリィヌとナリュキの2人を湯船の中に、支えあうような形に絡み合わせて沈まないように入れるのだった。
「はあっ、痛かったよ……」
 円はじんじん痛む胸を両手で包み込む。
「あっ……」
 心なしか大きくなっていた。
 少しだけふっくらしている胸に円の顔ににまりと笑みが浮かぶ。
 ……勿論腫れて一時的に大きくなっているだけだけど。
「でたでたBig・Gがでたー!」
 嬉々としたミネルバの声が、脱衣所から上がる。
「うわっ、大きいです」
 ハンマーを手に真っ先にひなが駆けつける。
「思いっきりあそぶぞぉー。汚物は消毒だー!」
 シャープシューターを使いって、ガサガサ移動する巨大なGに向かってミネルバは熱い湯をかけていく。
 ぼてり。
 熱い湯を浴びて、飛んでいたGが床に転がった。
「えーい!」
 すかさず、ひながハンマを打ち下ろす。
 ぐしゃりと潰れて、体液が床に飛び散った。
「ひっ」
 小さな叫び声を上げて、歩は脱衣所に飛び出した。
「せ、制服についたら着れなくなっちゃう」
 慌てて制服の元に駆けつけるが――。
「サイズがちょおっとぉ小さいかなぁ〜」
 歩や小夜子の服を着ながら、Gが出ても全然気にせず、ほわほわーんと笑っているオリヴィアの姿があった。
「あーっ、あたしの服っ。こ、この格好じゃ外に出られないし」
「ぶ、武器は武器は……」
 素手で始末するのには抵抗があって、小夜子が籠を手に取ったその後から。
「いやーっ!」
 巨大な黒い塊、Big・Gが、小夜子にダイビング!
 びっくりして小夜子は歩に抱きつき、そのまま脱衣所に転がった。
「あっ」
 その体に躓いて、ひなも転がった。
「あはははっ、あはははは〜っ」
 ミネルバは狂ったように水鉄砲を放ち捲くり、滅多に体験できない変わった射的を楽しみ続ける。
 円は胸が痛くてそれどころではなくて、ロザリィヌとナリュキは湯船の中で意識を失ったまま幸せそ〜に抱き合っていた。