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黒い悪魔をやっつけろ!

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黒い悪魔をやっつけろ!

リアクション

 寮内は連日Big・Gに悩まされていた。
 恐怖のあまり、退寮した生徒も何人もいるらしい。
 他校生を中心とした協力者達は、談話室に集合し、黒き巨大な悪魔の討伐を始めることにする。
「数にも注意するのだわ。食べ物を扱う調理場と食堂は特に多いそうなのだわ。この談話室でも、百合園生達は毎日おやつを楽しんでいるようなのだわ」
 九条院 京(くじょういん・みやこ)は、そろりとソファーを動かしてみる。
「!?」
 いた。
 思わず声を上げそうになる。Gが特別怖いわけではないが、好きではない。
 カサカサなどという音ではなく、ガサガサと大きな音を立てて、ソファーの下に存在した大きな黒い悪魔が移動をする。
「そ、そちらに行ったのだわ。気をつけるのだわ!」
 京が談話室の隅で固まっていた百合園生達に声をかける。
「きゃーっ」
 黒い悪魔の姿に百合園生が悲鳴を上げる。
「明るい場所に逃げるのだわ。光が射し込んでいる窓際あたりにはいないようなのだわ!」
 京は急いで百合園生の方に向かう。
 まるで悲鳴に反応するかのようにBig・Gが1匹、いやもう1匹ソファーの下から現れて、羽を広げる。
「任せておいて下さい!」
 飛び出したアインが、飛び立ったBig・Gに横から蹴りを入れる。即座に水鉄砲を向けてその黒き体に撃ち放つ。
 中に入っていたのは、食器用の洗剤だ。
 更にアサルトカービンで爆炎波を放つ。
 炎が噴射されたかのように放たれ、Gの体を焼いていく。
「汚物は消毒です!」
 アインはそう高らかに声を上げた。
「そう叫ぶのが礼儀だってどこかで見ました!」
 ……と、付け加える。
「既に寮中のGが巨大化したといっても過言ではないようです。各員配置についているようですから、ボク達はここ一体のGを殲滅しましょう」
「そ、それはそうかもしれないけれど、何か飛ぶよ、飛んでるよ、このG達!」
 ツヴァイが冷静に言葉を発するも、お目付け役のはずだったアルマが泣きそうな声を上げながら、グレネードランチャー型の光条兵器の乱射を始める。
 当った。命中したのはいいが、ぶしゃりと巨大な体から液体が流れ出て、壁と床に散乱する。
「ひぃぃ」
「この辺りには卵がある可能性もありますな。1匹たりとも逃がしてはなりませぬぞ!」
「こ、こうなったら、寮ごと焼き払うしか……!」
 飛び散った液体と、ルヴァイの言葉にパニックを起こしかけるアルマ。
「姉上。アルマ。前方の黒い奴に、乙女ストリームアタックを仕掛けますぞ」
 ツヴァイが天井に張り付いたGに矢を放った。
「うっ」
 気丈に振る舞いながらも小さな悲鳴を上げつつ、アルマも光の弾を放つ。
「跡形もなく消し去ります!」
 アインが爆炎波を放ち、天井にひっついていたGを焼き尽くす。
「火を使いすぎると寮に被害がでるのだわ。でも、潰すとこうして体液で凄いことになってしまうのだわ」
 飛び散っているGの体液に身震いしながら、京は顔を覆って座り込んだ百合園生の前に立つ。
「大丈夫なのだわ」
「あ、ありがとうございます」
 百合園生達は皆で手を取り合って固まりながら震えている。
「なるべく凍らせるのだわ」
 京は氷術を放って現れたBig・Gを凍らせることにする。
「さて、また愉快……もとい、ひどいことになってるねぇ」
 佐々良 縁(ささら・よすが)の声には、楽しそうな響きが含まれている。
 日中は暗く、人の目が届かないところに潜んでいるG達だが、体がこれほどまで大きくなってしまっては、壁の隙間に入り込むことが出来ない。ソファーや置物を退かせば、その後から出るわ出るわ……!
「うわぁー、すげー」
 パートナーの佐々良 睦月(ささら・むつき)は元々女の子に見える外見だが、更に念入りに女装しての加勢だ。でも、ふいに出る言葉遣いまでは変えられないようだ。
「あうぅ……気持ち悪いよー」
 もう1人のパートナーの佐々良 皐月(ささら・さつき)は、壮絶な光景に怯えながらも、出来るだけ遠くから一生懸命箒を伸ばして、Gを叩こうとする。
「よっとー。こんなもんかな」
 ぶすっと、睦月がランスでGを刺した。
 流れ落ちる体液、落ちるGの手足――。
「まったく、撃ち放題ったらありゃしないなぁ」
 縁は、アーミーショットガンで出来るだけ壁を傷つけないよう、Gを撃っていく。当然体液が飛び散り、肢体がバラバラに飛んでいく。
「寮に損害を与えてはいけないことの方が厄介ですわね……」
 続いてジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)が液体が入ったバケツを持って、談話室に現れる。
「死骸を見たくない方は、外に避難していて下さい」
 ジュリエットのパートナージュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)が、震えている百合園の寮生達にそう言葉をかける。
「はい、先輩。ごめんなさい」
 加勢できないことを詫びつつ、百合園生達は外へと避難していく。
「大丈夫ですわ。少しの間隠れていて下さいね」
「洗剤入れるじゃん」
 温かい目でジュスティーヌは後輩達を見守りつつ、アンドレ・マッセナ(あんどれ・まっせな)と共に準備を始める。
「ゴキブリ退治と聞いて飛んできたよー。素手でつかめる神経の図太さのボクに任せろー」
 蒼空学園からやってきた鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)は、Gの死骸を見ても動じることなく銃――水鉄砲を構える。
 腰にはいくつもの水鉄砲を差し、完全にウエスタン気分だ。
「つかめる……って凄いなぁ。でも、肉体的にも精神的にも苦痛を伴うから、実際に直接触るわけにはいかないよね」
 イルミンスールから援護にきたラーフィン・エリッド(らーふぃん・えりっど)は、メイド服、2重に重ねたゴム手袋、度のないめがね、マスク、スカートの下にジャージのようなズボンを穿き、完全防御体制を整えての参戦だ。
「……ねぇ……か、帰っちゃダメ?」
 共に訪れたパートナーのヴィオレッテ・クァドラム(う゛ぃおれって・くぁどらむ)は、ラーフィンの背中に縋りつき、周りを見ずに震えている。
「そこっ!」
 隅に潜むGめがけて、翔子は台所用洗剤入りの水鉄砲を発射した。
 液体を浴びてなお、Gはガサガサと動き回る。
「もう一発! 今度は左側面にいくよ!」
 巨大すぎて、一回の発射ではBig・Gを仕留めることはできなかった。続け様によく狙って翔子は水鉄砲を打つ。
「そう、Gは体中油だらけで水じゃ窒息させにくいんだよね。だから、こうして洗剤を混ぜて油分を分解し、気門を潰すんだ」
 ラーフィンも水鉄砲の中に薄めた洗剤を入れていく。
「ヴィオレッテちゃん、魔法でやつらを弱らせて!」
 背後にいるヴィオレッテに手を回して、背を叩くが、
「……あぁぁぁぁぁぁぁ……む、無理無理無理無理無理……」
 と、ヴィオレッテは震えるばかりだった。
「しょうがないな……。おい、全婦女子および家事に関わる人間の宿敵め! 逃げたら苦しみ倍増だよ!」
 やむなく、ラーフィンも狙いを定めてGを撃っていく。
「こっちも頼むよー」
「了解〜」
 撃たれて落ちたGや、Gの死骸、犠牲になった家具などは、縁に頼まれ睦月が袋の中に詰めていく。
「きゃははははっ、ぎゃはははっ、あーっはっはっはっ」
 最中、突如響いたけたたましい女性の笑い声に、なんだろうと睦月は顔を上げた。
「皐月? なにして……ちょ、ちょっと皐月さーん?」
 笑い声の主に、縁が声をかける。狂ったような笑い声を上げているのは縁のパートナーの皐月だった。
「え? ゴキブリ? どこにいるのー、私には見えないよー? きゃはははははっ」
 なんかもう、ひたすら遠くを、空の彼方を見ているような瞳で、皐月はカタールを振り回して接近戦でGを斬って斬って斬りまくって、その身に体液とGの死骸を浴びていく。
「さ、さつきねーちゃんだめだよ!」
 睦月は狂った皐月の姿に恐怖を感じながらも、止めようと近付くが、彼女の赤い瞳にはもう何も映ってはいないようで、耳にも睦月の声は届かない。
「きゃはははははははっ。ここにはゴキブリなんていなーい。きゃははははっ」
 皐月は笑い声を上げながら剣を乱舞させていく。
「ごめんっ」
 トスッと、縁は皐月の首筋に手刀を叩き込んだ。
「あー……無理に連れてこない方がよかったかな……参ったぁ」
「さ、さつきねーちゃん……」
 体液にまみれた体に驚愕しながら、睦月が皐月の体を抱き止める。
「私は仕事を続けるから、どこか安全なところに避難させて」
「う、うん。と、とにかく片付けなきゃ。焼却場に持っていった後、庭で待ってるね」
「お願いね」
 縁は銃を構えて次のターゲットに向けていく。
「もー、びっくりだよ……ホント」
 睦月は皐月の体についているGの死骸を丁寧にとって、袋の中へと入れていく。
「それにしてもやっぱり、凄い大きさだね。こんなのが百合園からヴァイシャリーそして、パラミタ全土に広がったら鏖殺寺院に匹敵するほどの脅威だよ」
 翔子は、水鉄砲でBig・Gを攻撃していくものの、一撃で息の根を止めることは非常に難しく、やむなくハンドガン型の光条兵器を構える。
「壁は傷つけないからね!」
 光の弾を放ち、壁に張り付いたBig・Gの体を撃ち抜いて仕留める。
「この大型の水鉄砲ならば……!」
 ジュリエットはウォーターガンとも呼ばれる大型の水鉄砲を構えて壁に這い上がるGに液体を浴びせていく。
「近寄らせませんわ」
 ジュスティーヌはディフェンスシフトで防御体制をとった。
「まって。それって水鉄砲の再装填に時間かかるじゃん? 装填してる間に襲われたらアウトじゃん? 三人縦隊で順次噴射して、先頭が撃ち尽くしたら次が出て、その間に再装填するようにしないとヤバいじゃん?」
 元軍人だったアンドレが水鉄砲に、バケツの中の水で薄めた洗剤を入れながら声を上げる。
「三段噴射ですわね。わかりましたわ」
「はい」
 ジュリエット、ジュスティーヌはアンドレの案に従い、縦に並んで順番に狙いを定めて1匹ずつGを始末していく。
 3人の連携により、確実にGが仕留められ、ぼとり、ぼとりと落ちていく。
「他愛もありませんわね。どこよりも早く片付きそうですわ。うふふふっ」
 ジュリエットが勝ち誇ったような笑みを浮かべ、水鉄砲を撃つ。
 絶え間なく、繰り返される水鉄砲の攻撃により、談話室の床は水浸しになっていた。
 ぴちょんと、跳ねた水がラーフィンの背にしがみついていたヴィオレッテの頬に当った。
「ひっ」
 ビクリと震えて、顔を上げた……その彼女の目に、天井から落ちてくるBig・Gの姿が映った。
 ただのGだって苦手なのに、その、その想像を絶するサイズにヴィオレッテは目を見開いて、魔法を打ち放つ。
「うわあああああーっ、やだーーーーーっ!」
 放った魔法は、雷術。Gに当てて、弱らせてくれとは言われていたけれど。
 床で塗れているGにも、何も考えず、雷術を打つ。
 とにかく見えるものすべてにヴィオレッテは雷術を放っていく。
「ヴィオレッテちゃ……うっ!」
 体に雷が走り、ラーフィンが膝をつく。
「うひゃっ」
「きゃーっ」
「痛っ」
「あつっ!」
「やめ……っ」
「やだやだやだーっ!」
 悲鳴が次々と上がり、討伐隊の女性達が痛みが走った体を押さえて蹲っていく。それでもヴィオレッテの攻撃は続き、ばたりばたりと……Gと一緒に女性達が倒れていく。
「やだーっ。……って。……あ、精神力切れちゃった♪」
 精神力切れでヴィオレッテは我に返り、動く生物がいないことを確認すると、くるりと背を向けて一目散に外へと走り出す。
「じゃ、後は頑張ってね!」