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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

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溜池キャンパスの困った先生達~害虫駆除編~

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●第四章 真相と植樹のランチタイム

 溜池キャンパスに程近い木立。その近くに、大きな青いシートが広がっていた。
「どうぞですー」
 ミーツェ・ヴァイトリングが重箱の中身を振る舞う。
「食べちゃっていいの?」
「食べて平気ですー、ウィルの料理じゃないですからー」
 クラーク波音の問いかけにゆっくりと頷いたミーツェ・ヴァイトリング。
「そう? じゃあ頂きます」
「頂きます……にしても、今回の事件の原因は些細なことだったんですね」
 おにぎりを頬張りながら、アンナ・アシュボードが語る。
美しい肌を保つため、木の樹液を得るために木を切っていた……と。気持ちは分からなくもないですが……学校の物を切るのはいけませんね」
「そうか? 俺にはわからないな」
 唐揚げを口に運びつつ、弐識太郎が首を傾げた。
「ピオス先生、お疲れ様です」
「あぁ。俺の得た情報は役に立ったか?」
「はい。樹液が魔物のフェロモンに似ていたり、食糧になっていることはピオス先生でないとわかりませんでしたよ」
「そうか? まあ、役に立ったならそれでいい」
 アスクレピオス・ケイロンと島村幸がおかずを頬張りながら話している。島村幸の手には、新種の虫が入ったカゴが握られていた。
「ロボットを見つけたのは俺達だぜ?」
 得意げに話すのはソーマ・アルジェント。そのパートナーの清泉北都は、木々の傍で監視をしていた。
「ほら、ちゃんとやるんだよ! 自分のやったことくらい自分でどうにかしなきゃねぇ」
「ごめんなさいー……」
 しゅん、として羽田美保が手を止めた。その手は樹になる果物の苗が入った箱を持っている。
「わらわも手伝ってやってるのじゃ。しっかりするのじゃ」
「そうですよ。ちゃんと植えましょう」
「泣くな美保。手を動かすんだ」
 レキ・フォートアウフ、ミア・マハと、羽田美保の兄である起木保が植樹を手伝っていた。
「植えるだけじゃだめだよ。ちゃんと育って実がなるまで育てなきゃいけないからねぇ」
「はいー……」
「育った実は皆に分けてあげてねぇ」
 清泉北都の指導を受けながら、涙を拭って羽田美保が植樹を続ける。

「えーと、羽田美保先生は……伐採ロボ『バッサイーン』に木を切らせ、運んでもらった後に樹液を得ていたんですね」
「ああ、空になった樹は日付由耶先生に焼いてもらってたらしいぜ」
 ソア・ウェンボリスが緋桜ケイと真相の確認をしていた。本郷翔は予想外の結果に、腕を組んでいた。
「結局、ソールの予想が当たっていたのですね」
「俺のおかげで、樹液が肌にいいって分かっただろ。当然の結果だぜ」
 言いながらソール・アンヴィルは集まったメンバーの品定めを始めた。
「そう落ち込まないでください。俺達の調査が、重要な役割を果たしたじゃないですか」
 御凪真人は慰めるように本郷翔の背をぽんぽん叩いた。
「はあ……酷い目に遭ったな……」
 その近くで如月玲奈は深々とため息をついた。彼女にとって、踏んだり蹴ったりの一日だった。
「お疲れ様ね……まさか魔物じゃなく人のせいで倒れるとは思ってもみなかったな」
 カロル・ネイが苦笑する。原因をつくったゴザルザ・ゲッコーは手近な木につるされている。
「あそこにあるアレも調理しますですー?」
 東條カガチが集めた食糧を指し、ミーツェ・ヴァイトリングが首を傾げた。
「お、じゃあこいつを頼もうかねぇ」
 差し出したのは幼コカトリス。ミーツェ・ヴァイトリングはこくりと頷いた。即座に焼き鳥へと姿を変える。
「美味そう……だけど、食えるかわからないからねぇ」
 言って歩き出す。七枷陣のもとへ。
「陣ちゃん、差し入れ」
「あ、サンキュー……」
 やけに親切な東條カガチに首を傾げ、焼き鳥を口にする……が。
「味はいいけど……なんだか舌がぴりぴりす……るっ!?」
「コカトリスはだめか……残念だねぇ」
「どうした陣? 顔が真っ青だが」
 じたばた暴れる七枷陣と不審がる仲瀬磁楠を背にため息をついて、東條カガチは山にしていた魔物の死骸を漁り始めた。
「何はともあれ、一件落着じゃな」
 セシリア・ファフレータが思い切り伸びをした。
「やっと小言から解放されるんじゃな」
「何か言ったか?」
「さてのう……」
 悪戯っぽく笑って、セシリア・ファフレータが身を翻した。
 その傍らで白衣を借りることに成功した黒脛巾にゃん丸が楽しげに白衣を抱いていた。リリィ・エルモアも楽しげな表情でプリンを口に運ぶ。
「あの先生、クビになるそうですね」
「でも、植えた木の管理の仕事を任命されたようです」
「甘すぎる気もしますが……」
「先生も反省しているみたいだし、いいんじゃない?」
「木を勝手に切っていたとはいえ、魔物を呼び寄せようとしたわけではないですからね。それくらいが妥当でしょう」
 レイディス・アルフェイン、樹月刀真、風森巽、ティア・ユースティ、緋桜遙遠が植樹の様子を遠目に見て語り合っている。
「ショウ、怪我の具合はどう?」
「もう大丈夫だ」
 葉月アクアの心配に葉月ショウが答えた。
「バッサイーンは羽田先生が改造をしたらしいね」
「起木先生に言って借りればよかったでしょうに。兄妹なんですよね?」
「起木先生は自分で作ったものを弄られるのが嫌いらしいですよ」
 椎名真、朱宮満夜、影野陽太が伐採ロボットについて語り始めた。当のロボットは、起木保の隣を動き回っている。
「これで蒼空学園の秩序は守られた!」
 前原拓海は満足げに頷いた。

 この事件に携わったメンバーが、食事をしながら、語りながら、昼を共に過ごす……。
 そこにあったのは、溜池キャンパスが平和を取り戻した姿。
 明るい笑い声が、学校を埋め尽くした。



担当マスターより

▼担当マスター

鳳羽 陸

▼マスターコメント

鳳羽陸第三回目のシナリオでした。皆様、このシナリオに御参加いただきありがとうございます!
初のノーマルシナリオ。人数少ないはずなのに微妙に遅くなってしまい申し訳ありません……。
ともあれ、お楽しみ頂けたなら幸いです。

ちなみに……起木保はもう少し、使います。その時はよろしくお願い致します。

では、また次の機会に。