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「封神計画」邪なる魂たち

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「封神計画」邪なる魂たち

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第2章 落ちたらペシャンッ・・・足場用の木材切り出し

「天辺までの高さは50mか・・・結構高いな。高い場所で細かい作業をするには、やはり足場が必要か・・・」
 ルフナに設計図を見せてもらった天 黒龍(てぃえん・へいろん)は、足場を作ろうと手頃な木がないかイルミンスールの森の中を探し歩く。
「(切りすぎて森林破壊をしないように)」
 黒龍が必要以上に森の木を切ってしまわないか、紫煙 葛葉(しえん・くずは)はメモに書いて注意する。
「そ・・・・・・それくらい分かっているっ」
「(だといいが)」
「―・・・なっ何だその目は」
 じーっと疑いの眼差しを向ける葛葉に思わずたじろぐ。
「(いや、別に)」
「くっ・・・・・・」
 注意のついでにからかわれた黒龍が、悔しそうに顔を顰める。
「さすがにこの辺りの木は丈夫だな・・・」
 バスターソードを木こりの斧のように振るい、切り落とそうとする。
「(片側からだけでは、木が割れてしまう。逆からも切らなければいけない)」
 メモを見せて黒龍に助言してやる。
「―・・・そうか。途中で割れてしまっては・・・、足場として使えなくなってしまうからな。どうした・・・?」
 とんとんと指で肩をつっつく葛葉の方へ振り返る。
「(森の資源を大切に)」
「葛葉・・・・・・分かっていると言ったはずだ。―・・・何度も言わなくていい!」
 彼のメモを見た黒龍は思わずムッとして怒鳴る。
 怒っている彼に対して葛葉はメモ帳で口を覆い隠しクスリと笑う。
「(この私が自然破壊をすると思っているのか!?)」
 刃に怒りを込めてガスッゴスンッと殴りつけるように木を切る。
 ズズゥウウーンッ。
 切り倒された木が轟音を立てて地面へ落ち土煙が視界を塞ぐ。
「やっと1本目か・・・」
 空気中を漂う土を吸い込まないように袖で顔を覆う。
「後・・・、何本いる?」
「(20本だ)」
 足場に必要な本数をメモした紙を黒龍に見せる。
「―・・・2本目、・・・3本目。後7本も切らねばならないのか。割と力仕事なのか・・・」
「本来・・・なら、チェーンソー・・・や、斧など、で・・・切る・・・、もの・・・だ」
 不慣れな者が剣で切り倒すことは困難だと黒龍に言う。
「なぜそれを早く言わない?」
「聞・・・かれ・・・・・・なかった」
「せめ・・・て、・・・・・・ランスバレスト・・・や、・・・抜刀術・・・・・・など、の・・・技・・・が、あれ・・・ば。楽・・・に、切り・・・倒せる・・・・・・かも、しれ・・・ない・・・・・・」
「―・・・くっ。そんな目で私を見るな!」
 もっと簡単に木を切れるように、なぜ用意してこなかったのかと、じっと目で見つめる葛葉の視線に耐え切れなくなり黒龍は彼に背を向ける。
 結局、20本切り終わるのに1時間もかけてしまった。
「はぁ・・・これくらいでいいだろう。葛葉、・・・手伝ってくれ」
「(では17:3で)」
 筆ペンを袖から取り出し、葛葉は紙に書いて黒龍に持ってやる割合を見せる。
「何・・・?17本も持ってくれるのか・・・悪いな。(木を切って疲れている私を気づかってくれたのか?)」
 葛葉が気づかってくれたのかと思い、7本の木を彼の方へ寄せる。
 ところが葛葉は黒龍の傍にある3本の木を抱え、封神台の建築現場へ向かう。
「待て葛葉・・・。おまえが持つのは、そっちではないぞ」
「(黒龍が17、俺が3という割合だ)」
 メモに書いて黒龍に見せ、有無を言わさず仲間が待つ場所へ戻っていく。
「わ・・・私が17・・・・・・だと!?葛葉・・・待て、待て・・・・・・待ってくれ。葛葉ーーっ!!」
 置いていかれた黒龍の声が、森中に響き渡る。

-AM9:30-

「外装のページは・・・これですね。今回はこの高さだと100分の1の縮尺にしたほうがよさそうです」
 工学部の教科書を参考にしながら、影野 陽太(かげの・ようた)はノートパソコンを使い、図面用ソフトで足場の図面を作る。
「用紙サイズはどれくらいにしましたの?」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が傍から画面を覗き込む。
「プリンターで印刷するわけじゃないんですけど、枠内に全体が入るように一応A1にしておきました」
「平面図の他に4方向の側面図をそれぞれ作らないといけないみたいですね。寸法の数値を入れてっと」
「木材の位置が離れてしまいましたわ陽太」
「はわっ!?」
 操作ミスにはっと気づいた陽太は、慌てて移動のツールがないか探す。
「えっと・・・えーっと、どれでしょうか」
「寸法の下にY軸とかがありますわよ、これをいじればパーツの位置がくっつのでは」
「そうですね・・・横に離れてしまいましたから、この場合は・・・これですね」
 X軸の数値をいじり木材の画像パーツを移動する。
「釘を打つところも分かりやすくしておきましょう」
 木材の画像に重ねるように、釘だと分かりやすく色をつけて配置する。
「結構おおざっぱな気がしますが、俺たちが見て理解出来ればいいですよね」
 完成した足場の図面をエリシアに見せる。
「これくらいなら分かりますわ」
 じーっと画面を見つめ、たりない箇所がないかチェックする。
「やっと・・・・・・戻って、・・・来た・・・か」
 先に建築現場へ戻っている葛葉が、図面を作っている陽太たちから重そうに木を抱えてイルミンスールの森から出てくる黒龍へ視線を移す。
「葛葉・・・私が何往復したと思っている・・・」
「(筆談用のメモとペンを落としてしまうから、それ以上は持てなかった)」
 さらさらとペンでメモに書き、黒龍に見せて説明する。
「だからといって・・・これはあんまりでは!」
「(足場を作るためには、木を何本か先に持ってきたほうが効率がいい)」
「それは・・・そうだが・・・・・・」
 彼のメモを見て言い包められたかのように納得させられる。
 現場ではすでに葛葉が持ってきた木を、陽太が血煙爪で足場用に切断している。
「―・・・あっ、おかえりなさい。重たかったですよね、ご苦労様です」
 戻って来た黒龍の視線に気づき、彼の方へ振り返って声をかける。
「先に持ってきていただいたのをたして10本ありますわね、ありがとうございますわ」
 設計図を見ていたエリシアがニコッと微笑みかけて礼を言う。
「これくらい・・・どうということはない」
 重たい木を運び疲れきっていることを気づかれないよう、いつもの冷静な態度で振舞う。
「それよりも足場作りの方、・・・頼んだぞ」
「えぇ任せてください、今日中にはなんとか作ってみせますわ」
 そう言うとエリシアは足場作りへ戻った。
「乾いた木が縮んでしまいますから、20cmより少し大きめにしておくんでしたっけ」
 陽太は設計図を見て幅と厚みを確認する。
「支えの部分に使う木材の厚みは・・・いくつですの?」
「今、確認しますからちょっと待ってください。えーっと・・・15cmですね。乾いた木が縮むことがありますから、予定より小さくならないように気をつけてください」
「15cmより大きめにすればいいんですわね」
 彼が切りやすいようにチョークで印しをつける。
「サイズ的にこんなものですの?」
「えぇそれくらいで。支えが折れてしまわないように、丈夫にするためにはそれくらい必要みたいですから」
 印しにそって血煙爪を使い木を切り、ギュィイイーンッとけたたましく建築現場に鳴り響く。
「だいたいこんなもんでしょうか?」
 戻って来たパートナーを呼び、陽太は切り分けたサイズを見てもらう。
「そんなものですわね。乾いた時のサイズが大きければ鉋で削ってしまいましょう」
「念のため見張りの方がいる近くに置いておきましょうか」
 陽太は木材をトナカイのソリに乗せて運ぶ。
 封神台の土台がある場所へ行くと、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が台座を中心に“の”字型に堀り進めた堀と柵の内側と外側に、落とし穴をしかけている。
「足場用に使うやつね。柵の内側に入れておいてちょうだい」
「分かりました」
 柵を飛び越え陽太は木材を置くシートを広げる。
「ではゴーレムにそちらへ運ばせますわ」
 エリシアはゴーレムに命じて運ばせてシートの上へ置かせた。