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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「あいかわらず、緊張感のない奴らだなあ」
 マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が、呆れたようにつぶやいた。
「きゃー、お久しぶりー」
 ドドドと、砂を蹴たてて駆けてきた朝野 未沙(あさの・みさ)が、マサラ・アッサムにだきつこうとジャンプして飛びかかってきた。
「うわっ!」
 ぎりぎりのところで、マサラ・アッサムが体を翻して躱す。
 勢いあまった朝野未沙が、頭から地面の砂に突っ込んだ。
「大丈夫なの、姉さん?」
 あわてて、朝野 未那(あさの・みな)朝野 未羅(あさの・みら)と協力して朝野未沙を助けあげた。
「あいかわらずだなあ」
 腰を引きながら、マサラ・アッサムが安全距離をとる。
「無邪気なスキンシップなんだもん」
 顔についた砂を手で払い落としながら朝野未沙が言った。
「今日は、ゴチメイに新しくホワイトが加わると聞いたんで、衣装を縫えるようにいろいろ持ってきたんだよ」
「気が早いなあ」
 パートナーたちに持たせた白い甘ロリ衣装やメイド服を広げて、朝野未沙が言った。
「サイズを合わせたいから、ココさんに今着ている服を脱いでもらいたいと……」
「調子に乗ると串刺しにするよ」
 毒牙をココ・カンパーニュの方にむけかけた朝野未沙に、マサラ・アッサムがエペを突きつけて言った。
「だって、本人がまだここにいないんだもん。本人さえいれば、あれやこれやのサイズをこの手で測って……」
 両手をわきわきさせながら、朝野未沙が続けた。
「だから、突き刺すと……」
 マサラ・アッサムが剣の切っ先でツンツンして、朝野未沙を止めた。
「そうだな。最初から、シェリルと一緒だったら、こんなことにはならなかったのかもね……」
 あらためて悔やむように、ココ・カンパーニュは言った。
「みんなは、パートナーを見つけて、パラミタに来るのに抵抗はなかったのかなあ」
 ぽつりとココ・カンパーニュが誰にともなく訊ねた。
「ボクは、冒険できて楽しいけれど」
「我も、別に疑問はいだいてはおらぬが」
 明るく答えるカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の横で、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が愛用のレールガンを手入れしながら言った。
「アメリアと契約を交わしたのは地球でだったけれど、別にパラミタに来ること自体はあまり大げさには考えなかったなあ。こっちに来て、玉兎の封印を解くこともできたし、マリルと契約することもできたんだぜ」
 パートナーたちに囲まれた高月 芳樹(たかつき・よしき)が、ちょっと感慨深く言った。
「わらわたちは、パートナーと一緒にいられることが幸せなのですじゃ」
 伯道上人著 『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)がうなずく。
「でもさあ。私みたいに、地球にいられなくなったのならまだしも、一緒にいるだけなら、地球でもいいんじゃないのかなあ。それに、もしパラミタに来たことで、自分の意志以外のことをさせられるかもしれないとしたら……」
 避難所の長椅子に座ったココ・カンパーニュが、長テーブルに突っ伏すようにしてつぶやいた。
「それに従うか、拒むかは、本人の問題でしょう」
 麗しきマリル・システルース(まりる・しすてるーす)が、自らをココ・カンパーニュが暗に示唆したアルディミアク・ミトゥナに重ね合わせるようにして言った。彼女自身、シャンバラ離宮を守護していた六騎士の一人だったのだ。本来の十二星華がどんなものなのかは聞きおよんでいないが、どこか通じるものを感じたのだろう。
「やっぱり私は大馬鹿かな。シェリルをそんな選択で悩ませたくないと思って、彼女の選択自体をできなくしてしまったんだろうか。その結果が……」
 ぼそりとココ・カンパーニュは言った。結局、シェリル・アルカヤのことを思ったつもりでやったことが、結果としてすべて裏目に出てしまった。
 パラミタに戻れば、十二星華として扱われるだろうことは予想できた。シェリル・アルカヤはシェリル・アルカヤであって、もうアルディミアク・ミトゥナではないとココ・カンパーニュは決めつけていた。けれども、それをすべての人間に強要することはできない。ましてや、本人に……。
「やっぱり、私は、一言シェリルに言いたいんだと思う……」
 つぶやくココ・カンパーニュの前に、コトリとティーカップがおかれた。
「どうぞ」
 狭山珠樹が、ニッコリと微笑む。
「ありがとう」
 ココ・カンパーニュは、迷わず熱い紅茶を一口含んだ。
「パラミタへは、戻ってきたというよりは、芳樹と一緒にやってきたという感じの方が強かったわね。私のいる場所はもう芳樹の隣だったから、パラミタはただの場所でしかなかったのかもね」
 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が、高月芳樹のすぐ横で言った。
「リーダーは、私たちに出会ったときに言ったではないですか。ここが私たちの場所になるのではなくて、ここを私たちの場所にするのだと」
 ペコ・フラワリーはそう言うと、道明寺玲の手伝いをしていたイングリッド・スウィーニー(いんぐりっど・すうぃーにー)にカップを返した。
「そうだったかなあ。でも、そのとおりだ」
 顔をあげて、ココ・カンパーニュが答える。
「ちょっといいかしら」
 携帯を片手に、千石朱鷺が、ココ・カンパーニュたちに声をかけてきた。
「わたくしのパートナーのトライブ・ロックスターから情報が入りました。侵入するならばこのルートが一番手薄だそうです」
 千石朱鷺が、海賊島のマップを銃型ハンドヘルドコンピュータで砂浜の上に投影しながら言った。
「環状島になっているわけですか。真上の侵入が一番よさそうですが、さすがにそれは予想されているということですね」
 ペコ・フラワリーがちょっと考え込む。もともと、高空からの急襲を予定していたのだが、それに対する守りが考えられているのであれば、別の手を考えるしかなさそうだ。
「とりあえず、海賊船は私に任せてもらいましょうか。で、あの、今度は海に突き落としたりしないでくださいね」
 サンタのトナカイを準備したクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が、自らの役割を宣言した。
「いずれにしろ、アルディミアクに対する仕打ちに、今まで海賊に味方していた者たちが、独自に救出に動く空気があるそうです。トライブも動くそうですから、うまく連動するか、こちらも動きを急ぐ必要はありますね。なにしろ、別の意味でアルディミアクを狙っている者はたくさんいそうですから。ああ、もちろん、トライブもそうですから、変な気を起こされないように早くする必要は感じます」
「それは……、この間のパンツ番長みたいな奴がいたら……文字どおり叩き潰す!」
 幾度となくスカートの中を狙われた件を思い出して、ココ・カンパーニュが拳を握りしめて言った。もちろんこの場合、人としての原形を残さないという意味である。
「通信が活発になってきているね。海賊たちは海賊島からどこかへ行くみたいだ。出発を急ぐように連絡を取り合っている」
 テントの端で通信機をいじりながら如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が言った。
「クイーン・ヴァンガードも、そろそろ攻撃をしかけるようなことを話し合っているね。なるべく俺たち以外の情報を混乱させるようにするけれど、こちらも急いだ方がいいね」
「捕虜のことは何か言ってませんでしたか?」
 如月正悟の横で、ユリ・アンジートレイニーが訊ねた。彼女のパートナーであるリリ・スノーウォーカーたちの安否は、まだはっきりとしていないのだ。
「うちのメイコも、連絡がないのであるが……」
 マコト・闇音(まこと・やみね)が自分のパートナーのことを心配して言ったが、ここは信じて待つしか方法がない。
「捕虜はいるみたいだけれど、誰とまでは特定できないなあ。もっとも、海賊たちは捕虜になんか構っていられないみたいだから、へたに脱獄とかしなければ海賊島に取り残されて安全だとは思うけれど」
 手に持ったヘッドフォンを片耳にあてながら、如月正悟が答えた。
「よし、そいつらもまとめて、さっさと助けに行こうぜ」
 新田 実(にった・みのる)が、皆を急かす。