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ペンギンパニック@ショッピングモール!

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 最終章

 カモメも意地があるのか、突入しては撃退を繰り返している。
 現時点、ペンギンの被害は出ていないが、このままでは最後まで安心はできない。
「そこでこういうのはどうだろう」
 遊軍として随所でペンギン保護をしてきた神崎 優(かんざき・ゆう)は、ある手段を思い付いてデパート前にやってきた。安芸宮稔の放水から着想を得たのだという。
「氷術のできるメンバーは協力してくれないか。あるいは、水の散布を」
 難しいかもしれないが、と言いながらも、優の口調には力がある。多弁ではないものの、多くの者を動かさずにいられない説得力だ。
 やがて優の提案は、実現した。

「ご覧下さい。いま、ショッピングモール『ポートシャングリラ』に奇蹟のような光景が出現しています!」
 ハンディカメラを向け、六本木優希が興奮気味にこの光景をレポートしている。
 奇跡的、とは大袈裟ではない。『ポートシャングリラ』の随所に、氷でできた橋が出現したのだ。
 放水で溜めた水を利用し、氷術の使えるメンバーが一気に力を解放したのだ。
「優がこの奇策を提案したときは、どういうことかと思いましたが……」
 陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)も橋造りに協力している。
「氷の橋ならば、ペンギンも安心して乗ってくれますし、橋桁が高いのでカモメへの対処もしやすくなりますね」
「ああ、優にはいつも驚かされっぱなしだな」
 さすが俺が選んだ男、と言いたい気持ちを神代 聖夜(かみしろ・せいや)は胸にしまっておいた。さすがに照れ臭い。聖夜もまた、持てる力を総動員して、この壮麗な橋に力を付与している。
「さあ、この橋なら安心ですよ。ケガした仲間がいたら遠慮無く連れてきて下さいね」
 氷の橋に立つ佳人、それが水無月 零(みなずき・れい)である。欄干に手をかけると実に冷たいのだが、この季節にはいい涼みになる。優しくペンギンに微笑みかけて、橋の上に来させることに成功する。
 同じようにペンギンを誘導しようとしていた優だが、ややあって肩をすくめた。
「この役目は零に任せよう。俺には、少し荷が重い。こんな仏頂面ではペンギンが怖がるだろうしな……」
「そんなことはないですよ。さっきから、優を慕ってついてきてくれているペンギンが沢山いるじゃないですか」
「作り笑顔の一つもできない俺に、ついてくるとは酔狂なペンギンもいたものだ」
「なに言ってるんですか」
 零は本当にこの人を愛おしく思った。彼は、彼の魅力に気づいていない。
「だからこそ、いいんじゃないですか」
 ペンギンだけじゃない。自分も、聖夜も、刹那も、そんな優だからこそ、どこまでも従うと誓っているのだ。
「よくわからないな……? それに俺には、別に得意なことがある」
 腰の『乾坤一擲の剣』の柄に手を伸ばし、優はひらりと氷の橋から身を躍らせた。
 行く手には怪鳥の群れがある。トウゾクカモメが最後の突撃を駆けてくるようだ。
「聖夜、来られるか? 刹那と零はペンギンを死守してくれ」
 白刃が陽光に煌めいた。
「俺は俺の、役目を果たそう」

 赤ペンギンを探し続けてへとへとになったジェイコブは、ぼんやりと氷の橋に目をやり、そこで愕然となる。
 橋めがけてパタパタとかけてくるペンギン……その色は赤い!
「あれか! 赤ペンギン……!」
 しかしペンギンは、仲間と合流するや落ち着いたのか黒い色に戻った。
「焦ったときだけの特殊体質だったわけか。一羽だけになって焦ると赤くなる……か」
 疲れてはいたが、ジェイコブは笑いがこみ上げてきた。単身でいるペンギンを追う、という方針は正しかったわけだ。
「リーズ、見たか?」
「ええ、しっかりと」
 リーズはぱたぱたと駆け、そのペンギンに近寄って挨拶した。手には銀色の魚がある。
「こんにちは、ペンギンさん。これはお近づきの印です。私とお友達になりませんか?」


 最後に、諸々の結果について述べよう。

 パラミタコウテイペンギンの犠牲は一切発生しなかった。これは参加者の活躍のおかげである。誘拐されたり売り飛ばされるものもなかったことも強調しておく。移送船は出航し、ペンギンたちは無事、新居に向け旅立っていった。

 夕刻が近づくと、変異トウゾクカモメは一斉に退却してしまった。ただしその大半は討たれ、生き残ったものも存分に教訓を得たことは容易に想像される。今後彼らが驚異になる可能性は低いだろう。
 敵が去ったと同時に、姫宮和希が勝ち鬨をあげ、佐野亮司やアシャンテ・グルームエッジらも次々とこれに加わった。皆、手傷こそあれ表情は明るかったという。

 遊園地での包囲殲滅戦は成功したものの、遊具は多少壊されてしまった。その点だけは残念だが、被害は小さく、グランドオープンまでに修理は完了の見込みである。
 なお、その後会長のショッピングに、影野陽太らしき少年の付き従う姿が確認されたという目撃情報がある。

 リーズが区別用の腕章を巻いた特殊体質のペンギンについて、その詳しい調査は動物園に任せることとなった。
 リーズの懇願もあり、決してそのペンギンに生体実験を施さない約束がなされたことも述べておきたい。

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 ご参加ありがとうございました。マスターの桂木京介です。

 さて、今回はペンギンと遊ぶ人、戦う人、と皆さん見事に別れて下さいましたので、シーンを交互に書くような形式でお届けしました。
 アクションを読み、それをリアクションに起こすという行為はただのコピー&ペーストではありません。当然、アクションに込められた想いを読み取ったり、付け足したり加えたりという想像と創造を伴います。そして、活き活きと書かれているアクションに対しては、この行為がとても楽しいのです。今回も、圧倒的に『楽しい』アクションばかりお寄せいただき感激しております。

 それでは、今回はこの辺で。
 また新たなシナリオでお会いできる日を楽しみにしています。桂木京介でした。