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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

リアクション


ー熱烈大歓迎ー



 予告当日。
 薔薇の学舎の寮に変熊 仮面(へんくま・かめん)が居るという事なので、直接寮に向かっている火焔と葵の姿があった。
 寮の入り口では七尾 蒼也(ななお・そうや)エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が火焔達を待っていた。
「……えっと……それは何かのギャグなのか?」
「なるほど……ギャグなのか」
 蒼也の言葉にエヴァルトは納得したようだ。
「いえ、本気ですが……やはり変でしょうか? 影の薄さをカバーしようと思ったのですが……」
 そう、昨日、健勝に渡されたキラキラ衣装を身につけてやってきたのだ。
 確かに……目立ってはいる。
 遠くからでも見つけられるだろう。
 一緒に歩いてきた葵は恥ずかしそうにしているが……当然の反応といえよう。
「わ、悪くないんじゃないか? 確かに目立ってはいるし……」
 蒼也は目を合わせずにそう言った。
「秋月さんは……男装か?」
 エヴァルトは隣に居た、葵に話しかける。
「うん! 男の子に見える……かな?」
 葵は薔薇の学舎に入る為にいつものツインテールをとき、後でまとめてリボンで留め、薔薇学の制服に薔薇の飾りを付けている。
 その姿をくるっと回って見せた。
「可愛い男の子に見えるから大丈夫……じゃないか?」
 蒼也が言うと、葵は嬉しそうに笑顔を見せた。
「ああ、そうそう。へんた……げふん! 変熊は自分の部屋にいるそうだ」
 蒼也からの情報を得たメンバーは早速、変熊の部屋へと向かっていったのだった。


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 薔薇の学舎の寮の中に入ると一同は一歩引いた。
「…………これは……入らなければいけないのでしょうか?」
 火焔の言葉に全員答えない……いや、答えたくないのだろう。
 なんと寮の壁という壁に青太のポスターが貼ってあるのだ。
『本日、和風の美少年現る!』
『薄幸の美少年と戯れるチャンス!』
『寂しい君もムフフな一夜!』
 というキャッチコピー付きで、合成写真のポスターだ。
 中には艶めかしいポーズをとった裸のものまであり、普通の人には入りづらい空間と化している。
「やっと来たか!」
 薔薇の香りを漂わせ、踊りながらやってきたのは変熊仮面だ。
「!?」
 変熊仮面のいつもと違う服装にもメンバーは驚きを隠せない。
 仮面を付けずにパジャマだ。
「ああ、この格好か? 仮面をしない時は服を着るのがマイルールなんだ」
「ああ……そうなんですか……」
 なんとか火焔が言葉を絞り出す。
「それと、このポスターも素敵だろう? これで青太はこの寮にいる薔薇学生によって足止め出来るかもしれないだろう?」
 一応、自己防衛らしい。
「という訳で探偵さん、後はよろしく頼んだぞっ! 俺様これから寝るから」
「ええっ!? なんで寝るんですか!?」
「嫌、だって、パジャマだから。あ、そうそう薔薇学は金持ちのご子息ばかり……ここで見事評判上げれば、金持ちから依頼が押し寄せるぞ。やったね、影薄探偵さん!」
「影薄……あ、ああ……頑張りますよ……はは……」
 変熊仮面は満足そうに頷くと、自分の部屋へと案内した。
 その部屋の周りに火焔達は警戒を開始した。
 部屋に入るかと誘われたが、全員丁重にお断りした。
 蒼也は隣の部屋の住人に頼みこんで部屋を借り、エヴァルトと葵、火焔達も張り込みを開始したのだった。


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 変熊仮面の隣の部屋、蒼也とは丁度反対にあたる位置の部屋には『禁猟区』を展開している清泉 北都(いずみ・ほくと)とその犬耳をもふもふして遊んでいるリオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)
 さらに、着替えをしている佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)に、変装のお手伝いをしている仁科 響(にしな・ひびき)が詰めていた。
「……それって本当に騙せるの?」
 北都が変装中の弥十郎に話しかける。
「熊くんとは身長、体重も近いし、髪の色も同じ。瞳の色は違うけど、これなら仮面を付ければごまかせるでしょ。あ、仁科。熊くんの髪型ってこんな感じだっけ?」
 鏡でセットしていたが、どうにもしっくりきていないらしい。
「うん、大丈夫じゃない? でも……幾ら姿格好が似ているとしても……釣られないと思うよ」
 響は弥十郎の髪の毛をセットし直しながら、呟く。
「よし、これでマスクとマントを付ければ……どう?」
(……あ、似てるかも)
 弥十郎の変装完了姿を見て、響はそんな事をちょっと思っていたが、あえて口にするのは避けたようだ。
「肌を露出するのもやぶさかじゃないって思ってたけど、今日はパジャマで助かったよ」
「確かに……裸の人と認識していたので驚きました」
 北都の耳をいじる手を止める事なくリオンは言う。
「って、いつまで触ってるの! 触るの禁止!」
 顔を真っ赤にして北都が抗議するが、リオンはその手を止める事はしない。
 むしろ、もっと楽しそうに耳をいじりだした。
「気持ち良さそうなのに、止めるなんてできませんよ」
「仲が良いね」
 その様子を見ていた、弥十郎と響の声がハモッたのだった。


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「うぅ……半ズボンだなんて……しかも、このポスター……」
 寮の中に入ってきたのは薔薇学の半ズボン制服を着た青太と円だ。
 青太は相変わらず、半ズボンが苦手なようだ。
「あっふーん♪ にゃっは〜ん」
 何やらどこかの部屋から怪しげな幼子の声が聞こえてくる。
「あっ、そこの乳首はだめ……」
 青太はその言葉を聞いて、どうして良いかわからず、あわあわしてしまっている。
 円はそんな青太を楽しそうに眺めていた。
「八つめだから!」
「えっ? 八つ……?」
 わけのわからない言葉を言われ、さらにフリーズしてしまっている青太の側のドアが急に開いた。
 出てきたのはご満悦のにゃんくま仮面だ。
 中で何があったのかは怖くて聞けない。
「お、昨日の兄ちゃん、ええ体しとりまんにゃぁ〜」
 青太の足に体をいやらしくすりつけると、青太は鳥肌が立ち、フリーズしてしまった。
「やらにゃいか! って、兄ちゃん……そんなに可愛い反応すると可愛がりたくなるにゃ〜。もちろん今日は新しいパンツはいて来たんだろうにゃ?」
「いえいえ! 結構です!」
「むっ、女の香り……!? どこにいるにゃー!?」
 女性の香りを嗅ぎつけたにゃんくま仮面は青太そっちのけでどこかへ駆けて行ってしまった。
「じゃあ、行こう。もう少しのはずだよ」
「うん!」
 青太と円はとうとう変熊仮面の部屋へと到着してしまった……。


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 薔薇学の中をうろうろと歩きまわっているのは漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)だ。
 樹月 刀真(きづき・とうま)に男装を手伝ってもらって、制服を着用し、紙をキチンと1本にまとめている。
 男装の麗人だ。
 月夜は誰かを探しているのかきょろきょろと見回している。
「途中まで一緒だったのに……どこ?」
 一緒に来た刀真を探しているようだが、どうやらはぐれてしまったらしい。
 携帯を取り出し、何度も刀真に電話をかけるが出ない。
 メールも一応、打ったが返ってこない。
「……でも、変熊の元には来る……よね?」
 そう気付くと、変熊の部屋へと踵を返したのだった。


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「あ、誰か入った!」
 北都と、壁に耳を当て、中の様子をうかがっていた蒼也が同時に叫んだ。