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VSサイコイーター

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VSサイコイーター

リアクション

 鴉と凪、渚は蕾を襲った。三人のうち先陣を切ったのは渚だった。【ハンドガン】で撃つ。
 しかし、蕾も自分が襲われやすいよう。《サイコキネシス》を使い、自らが強化人間であることをアピールしていた。
 銃弾は蕾の体を貫いた。《ミラージュ》の幻影の。本体が渚の背後をつく。
「……それは幻影……あなたは……もうおしまい……」
「そうは……させません!」
 だが、凪が《殺気看破》で蕾本体の位置を見破っていた。八極拳の重たい一撃が【鉄甲】乗って蕾へと迫る。
「……今です……秋人様……」
 攻撃が迫る中蕾はそう呟いた。《精神感応》と共に。
 蘇芳 秋人(すおう・あきと)はスコープ越しに、標的の頭を捉える。【対物ライフル】のトリガーを引く。遠くのビル、スナイプポジションから放たれるはゴム弾。しかし、運が悪ければ相手は死ぬ。しかし、その覚悟で敵に向かわなければ、蕾が危ない。
 《スナイプ》と《シャープシューター》の発動。
(確実に一撃で意識をとばす!)
 凪へと飛来するゴム弾。鴉が凪へ覆いかぶさるようにして、彼女を地面へと伏せさせた。凪の攻撃も失敗したが、秋人のヘッドショットも外れた。鴉の《超感覚》の賜だ。
「渚! スナイパーだ! 位置を割り出せ!」
「分かっている! だが、ハンドガンで応戦できないのだよ!」
 渚は着弾の後から、秋人のいる方向を大まかに割り出す。その方向の路地に【煙幕ファンデーション】を投げ、スナイパーとしての優位性を封じた。フレンドリーファイアの恐れが出て、秋人は次弾を撃てなくなった。
(大丈夫……秋人様……応援が……きました……)
「夜月、お前か……」
 同じ蒼空学園の生徒である彼を見て、氷室 カイ(ひむろ・かい)が呟いた。鴉もまさかとは思ってはいたが、本当に同じ学校の生徒と戦うことになるとは――。
「氷室 カイだっけ……こっちも……仕事なんでね。悪く思わないでください!」
 《轟雷閃》で奇襲。《封印凍結》と《紅の魔眼》で強化した攻撃。それくらいしないと相手は強い。
「カイ!」
 カイを襲撃者の場所へと導いた雨宮 渚(あまみや・なぎさ)が、他の襲撃場所を知らせようと近づく。
「渚! お前はそっちにいる奴を頼んだ!」
 カイが、彼女に叫ぶ。鴉の攻撃はカイに癒着する魔鎧・ルナ・シュヴァルツ(るな・しゅう゛ぁるつ)が《煉獄斬》で打ち消し、余波を《歴戦の防御術》で受けきる。
「なかなか、よいではないか、血沸き肉踊るわ」
 ルナは襲撃者を讃える。そして、カイにこう伝えた。
「負けるのは不愉快だ」
「わかっている」
 カイはルナに答え、【緋陽正宗】【蒼月正宗】の二振りを抜いた。
 一方、雨宮 渚は御剣 渚と対峙した。同じ名を持つ女同士、強化人間同士の対峙。
「貴様も――、渚なのか」
「あなたも。悪けど容赦しない!」
 片や、家族共々無実の罪を着せられ、果てに本当の犯罪に手を染めた者。
 片や、家族を皆殺しにされ、自らの力に翻弄された者。
 対峙のさなか、煙幕が薄くなっていく。
(分がわるい! 凪!)
 《精神感応》で御剣 渚は凪に命令した。撤退命令だ。凪は蕾との近接戦闘を放棄し、路地に隠していた【軍用バイク】に跨り、エンジンをふかした。渚は、走ってきたバイクのサイドカーに乗り込んだ。
「鴉……!」
 凪が彼の名を呼ぶ。呼ばれた彼は、使い魔のカラスとコウモリを呼び出し、カイとルナに目眩ましを食らわして、サイドカーとバイクの間に飛び乗った。その瞬間ゴム弾がバイクを掠った。あのまま戦っていたら、確実に頭にヒットショットを受けていただろう。
 彼らは役目を十分に果たしたと、自ら判断し、襲撃地から走り去った。

 
 狐の面は風祭 凪(かざまつり・なぎ)にゆっくりと姿を見せた。背後から奇襲をしてくると予想していた凪にはあまりにも、意外な事だった。真正面からの襲撃。
 いや、これこそ、自分たちの動きを予測しての奇襲では? と凪は考えてしまう。何故なら、凪を守る者たちは凪の背後にしか隠れていないのだから。
「ボクに任せて!」
 鳴神 裁(なるかみ・さい)が【ロケットシューズ】で凪を追い越し、狐の持つ【ブレード・オブ・リコ】を食い止めるのに間に合う。凪も裁に《サイコキネシス》で力を貸す。二人の力で狐の攻撃を押し返す。
「ドール!」
「いきますよ! 狐さん!」
 狐の攻撃を凌ぐと魔鎧ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)に《真空波》を撃たせた。しかし、《フォースフィールド》で打ち消される。しかし、更にアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)が《霧隠れ》で霧化していた体を具現化させ、《アボミネーション》で狐のスキルを封じることに成功した。
「ふふ、これでスキルは使えなくなったわね。狐さん」
「おとなしくするのだ。貴殿も命はおしいであろう?」
 警告を込めて【最古の銃】を狐に向ける。
 狐の面の下。トライブが漸く口を開く。
「……なるほど、これほど手勢を集められるのか」
 口角を上げて呟く。声は少し悔しげに。
「もう、十分だろう。あとは結末まで“高見の見物”といくか」
 エキスパート部隊員の凪の実力も“強化人間狩り”の襲撃に備え、指示していたブラウのリーダーとしての実力もわかった。FRAGへの手見上げは十分だ。雇い主の言う分の働きはしてないが、十分に引っ掻き回せただろう。と、判断しトライブはレッサーワイバーンをコールした。
「ごにゃ〜ぽ! 逃げる気なの!」
 裁が翼風に扇がれながら叫ぶ。
「じゃあな。縁があったらまた会うだろう!」
 空高くワイバーンが飛翔した。トライブは空の上で仮面を脱ぎ捨てた。


 コレは茶番劇だ。
 襲撃ではない。予定されていた出来事だ。
 ウー・ジェン・スーと言う赤髪仮面の男は御剣 紫音(みつるぎ・しおん)と武器を交えていた。そして、テレパスで会話を交えていた。
(黒幕が潜伏しているのは何処だ?)
(ここから北区に近い、空きビルだ。そこに俺らは集められた)
 競り合いから距離を置く。アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)が《天のいかづち》で牽制。けして、相手には当てない。演出。
(“強化人間狩り”の目的はカノンだ。今カノンも襲われているはずだ)
(カノンの方でも襲撃があったと聞いたどす。だいじょうぶかえ……)
 綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)からの情報。カノンの安否は今は不明。紫音の魔鎧アストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)の《ライトブリンガー》が飛ぶ。《パイロキネシス》で相殺する。派手に見えて、低威力調整。
(“強化人間狩り”の正体はキュゥタと名乗るゆる族だ。しかしアイツは……)
 と、ここで、シオン・グラード(しおん・ぐらーど)が加勢に来る。茶番劇も潮時かと、ウーは考える。纏う魔鎧に《神速》を使わせて、戦線離脱。
(詳しいことは後で話す。オルフェリアには先に伝えておいた)
「待て! 取っ捕まえてやる!」
 敵を追おうとするシオンを紫音が止める。
「追わなくてもいい。あいつも味方だ!」
「味方? そうは見えなかったぞ」とシオンが抗議する。
「わけあってな。でも《テレパシー》で敵のアジトと正体はわかった」
 それを聞いてシオンは驚く。「ほんとうか!」と。