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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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第三章

――スパ施設、入浴場にて。
「……ふう」
 温泉の心地良さに、九条 風天(くじょう・ふうてん)が声を漏らす。
 少し熱めであるが、それがまた気持ちがいい。
「これで水着で、ってのがなければいいんですがねぇ……」
 独り言を呟く。水着とはいえ着衣のまま湯に浸かる、という行為に風天は少し違和感を持ちながらも、湯の心地良さに身を任せていた。
「……ん?」
 ふと、浴場の隅の方で見知った人物を見たような気がした。
「んー、あれは……久世さんですかねぇ?」
 目で追っていったが、何をしているかよくわからない。
「……まあ、いいか」
 挨拶をすべきかとも考えたが、施設の人間らしき人物も居るので邪魔をしてはいけない、と風天は思った。
「ああ、そういやこれがありましたね」
 風天は温泉玉子を割り、中身を口に入れる。つるんと口に入り込み、黄身を割るとトロリと口に味が広がる。
「ああ、これですよこれ……」
 そう呟き、緑茶を啜った。濃厚な黄身の味の後には緑茶のいい後味が残る。
「いいですねぇ……のんびりできますねぇ……」
 風天は目を細め、疲れが溶けるのを感じていた。

 今日、スパ施設に再生案を持ってきた者達が集まってきた。
 一人一人、それぞれの案を聞くためになななとボニーは彼らとスパ施設を回る事になっていた。
 まずは、なななとボニーは久世沙幸(くぜ・さゆき)に連れられ、入浴場に来ていた。
「それじゃ最初は私の案からね。私はお客さんのお背中を流すサービスを考えたよ」
「背中を流すサービス、ですか?」
「うん、疲れと一緒に垢も流しちゃえ、って」
「それじゃ座って座って」
 なななを椅子に座らせると、沙幸は垢すりにボディソープをつけて泡立て始める。
「じゃ、始めるよ〜」
 そういうと、垢すりでなななの背中を擦りだした。
「……う、うぅ……あぁそこ辺り……」
「どうかな?」
「うぁ〜……届かない所が気持ちいいよ〜……」
「えへへ〜お客さん、かゆい所はございませんか〜?」
「もっと右……あーそこそこ……」
 なななが緩みきった表情で声を漏らす。
「沙幸さん」
 藍玉 美海(あいだま・みうみ)が沙幸の手を止めさせる。
「美海ねーさま、どうしたの?」
「ええ、垢すりもいいですけど、それだと角質が傷つく方もいらっしゃるのでは?」
「あ、それもそうだね……」
「というわけで、わたくしも案がありますので今度は沙幸さんが座ってくださいな」
 そう言って、なななと沙幸が交代した。
「で、どうするの美海ねーさま?」
「ええ、垢すりではなく、素手で背中を流して差し上げます。こうやって泡立てて……」
 美海が手にボディソープを塗り、泡立てると沙幸の背に触れる。
「こうすれば肌の弱い方でもサービスできますわ。どうかしら、沙幸さん?」
「うん、気持ちいいよねーさま」
「そうですかそうですか、おっと手が滑りましたわ」
 ずるん、と美海の手が背中から前へと滑る。
「ね、ねーさま!?」
「あらあら、ついでだから前を洗って差し上げますわ。ついでにマッサージも、と」
 むにむにと、美海の手が沙幸の胸を揉む。間違いなく、マッサージではない手つきだった。
「ちょ、ちょっとねーさまぁ!」
「全く、マッサージだというのに沙幸さんたら……そんなわたくしを誘うだなんていけない娘ですわ」
「ね、ねーさま! そんなセクハラ駄目だよぉ!」
 沙幸が制止するも美海は全く聞いておらず、しまいには沙雪を押し倒していた。
「……あの、さすがにこれはお客様嫌がるかもしれないので」
 目の前の18禁スレスレな光景に、ボニーが苦笑しつつ言う。
「背中流されるのは気持ちよかったんだけどなー。残念」
 なななが残念そうに呟いた。
「……さて、次はボク達かな」
 ミリー・朱沈(みりー・ちゅーしぇん)が、入浴場を見回しつつ言った。
「あれ、場所はここでいいの?」
「いいよ、ここなら隅っこだし、迷惑掛からないでしょ」
「迷惑?」
 ミリーの言葉に、なななが首を傾げる。
「ところでミリー、フラットは何をすればいいのぉ?」
 フラット・クライベル(ふらっと・くらいべる)がミリーに問いかける。
「ん? さっき言ったよね、ちょっとボクと手合わせして切り傷とか作ってって」
「「え゛」」
 なななとボニーが固まる。
「な、何故そんなことを!?」
 硬直から解けたボニーがミリーに言う。
「ん? ああ、この温泉って疲労回復健康増進打身捻挫切傷などが効能なんでしょ? それならその効果を宣伝しようと思って」
「ああ、そういうこと。それじゃ、始めようかぁ」
 そう言って、フラットが武器を構える。同時にミリーが身構えた。
「よし、開始ッ!」
 ミリーの合図と同時に、二人が駆け出す。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「え?」
 ボニーの言葉に、ミリーの動きが止まる。
「あ」
が、フラットは止まりきれず、
「ごふぁっ!?」
武器が、腹部にめり込んだ。
「……あーあ、だからそんな教導団のビキニタイプなんてやめればよかったのに。布があれば軽症ですんだかもしれないよぉ?」
「そ、そういう問題じゃないと思うんですけど!?」
「だ、大丈夫!?」
 なななが問いかけるが、ミリーは身体中ビクビクと痙攣するだけである。
「とりあえず、温泉に入れてみるねぇ」
 そんな様子だというのに気にもせず、フラットはミリーを温泉に放り込むと自分も入る。
「……うん、疲労には効くかもしれないねぇ」
 呑気に言うフラットの横で、ミリーがプカプカとうつぶせのまま浮き上がってきた。
 いくら効果があるといっても、一瞬で回復するわけがない。魔法じゃあるまいし。
「……打ち身、効果無し」
「言ってる場合じゃないよ!」
 なななとボニーが慌てて、ミリーを助け出す。
「……お客様、少なくてよかった」
 ボニーがぼそりと呟いた。