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空京古本まつり

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「おやぁ、これ……は?」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は西の店で古びた書物を見つけた。
 賈思キョウ著 『斉民要術』(かしきょうちょ・せいみんようじゅつ)仁科 響(にしな・ひびき)に見せる。
「あ、これ。私と同じなのかな」
 『斉民要術』は魔道書のようだと感想を伝え、響も「これは……イルミンの奥にしまってある重要な本レベルだね。なんでこんなものが……」と訝しがる。
「ただ、なんだか眠っている感じがするね」
 『斉民要術』が付け加えた。 
「うーん、とりあえず買っておくかぁ」
 財布を出そうとしたところで、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が顔を突っ込んでくる。
「あー、コレ探してたんだー。譲ってくれよー」
 弥十郎が返事をする前に、本をひったくると「ひゃーっはっはっは。悪いなー」と大笑いして、さっさと金を払い出て行った。
「なんなのです。あれは?」
「いきなり横取りか」
 『斉民要術』と響は憤慨したが、弥十郎は「まぁまぁ」となだめる。
「それでも一応伝えておこうかなぁ」
 弥十郎は知り合いに電話をかけた。
 いろいろ買いあさっていた大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ) も、棚に収められていた怪しげな本を手にする。

 ── おや? これは値段の張りそうな本やな そういうたら、おもしろい噂もあるし。こいつは一儲けできるかな? ──

 値切れるだけ値切って買い付けた。
「まだ買うんですか?」
 泰輔と讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)の荷物持ちになっていたフランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が悲鳴をあげる。
「まぁ、儲かったらなんぞご馳走したる。もうちょっと待っとき」
 トレジャーセンスで掘り出し物を探していた中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)も、シャンバラの伝承に関する本を見つけていた。
「これは……面白そうな本ですわね」
「クジ付き?」
 漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が混ぜっ返すが気にしない。値段が高めだったものの、そのままに購入した。
「これは夜の楽しみが増えそうよ」
 佐倉 紅音(さくら・あかね)はクトゥルフ神話に関する本を探して歩き回っていた。
「おじさん、これいくら?」
 クトゥルフ神話ではないものの、興味深い本を見つけた。値札が付いていない本だったので、買うのを躊躇した。
「うーん、そんな本あったかなー」
 店主が迷っていると、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が駆け寄ってくる。
 後ろでは滋岳川人著 世要動静経(しげおかのかわひとちょ・せかいどうせいきょう)が指差している。
「その本、待った!」
 大岡 永谷(おおおか・とと)と奪われた蒼空学園の蔵書であることを確認すると、クロセルは店主と紅音に説明する。
「……と言うわけで探してたんです」
「そう言うことなら」と店主も紅音も納得した。
 クロセルは山葉に連絡する。
「そうか! 回収第1号だ。もっとも意外に流出してるんだな、対応を急がないと……」
「お礼、期待してますよ」
「任せとけ」
 非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)天城 瑠夏(あまぎ・るか)は同時に同じ本に手を伸ばした。
「あ、どうぞ」
「いえ……どうぞ」
 2人して手を引っ込める。
「じゃあ」
「それなら」
 またしても2人して手を伸ばした。
「先に見ても……良いですか?」
 瑠夏の了解を貰い、近遠が本を吟味する。
「あぁ〜、そう言えば……こんな様な本が蒼学の図書館にもありましたねぇ〜」
 ユーリカやアルティアにも見せるが、あまり興味を示さない。
「買おうとは思ってますけど、とりあえず……どうぞ」と瑠夏に渡した。
「ん…この本、気に入った」
 瑠夏はひと目で買う気になる。近遠を見て「ジャンケンで……どうですか?」と提案した。
「そうですね。後腐れなく、一回勝負で」
 シェリー・バウムガルト(しぇりー・ばうむがると)イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと) が見守る中、「ジャーンケーン……」と掛け声を出す。
「ポン!」と近遠と瑠夏がグーを出したところで、3本目の手がパーを出した。
「ごめんなさい。その本、とっても大事な本なの」
 手の主はルカルカ・ルー(るかるか・るー)だった。
「横取りするようで、ごめんね」
「これも……勝負ですからぁ」
「そうですね」
 近遠も瑠夏もあっさり引き下がる。 
「これで涼司も喜ぶよね」
 ルカルカは図書館の蔵書を抱きしめた。