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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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●第1章 突撃は無謀?

「全速前進、正面から乗り込むぞ!」
 ブラッドレイ海賊団二番隊隊長、ランスロット・オズバーンから、ブラッドレイ海賊団の船長と一番隊隊長の行方を聞いた泉 美緒(いずみ・みお)こと、“黒髭”は島が近付き、相手の船が見えたことで、声を上げた。
 けれども崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)からデコピンを喰らってしまう。
「何すんだっ!」
「こちらの手勢、特に契約者の人数をよく数えて御覧なさいな。正面切って相手するには苦労しますわよ?」
 彼女に諭され、“黒髭”が改めて今日乗り込んでいる契約者たちの一覧を確認すれば、20人程しか居ない。
 相手は倍の40人程は居るハズだ。
「む……それも、そうだな」
 駆け出して行った船員には悪いけれど、“黒髭”は一度進行を止めることにすると、仲間たちに伝え直す。
 ブラッドレイ海賊団の船から見えないよう島影に隠れるように船を停めると、“黒髭”は契約者たちを集め、改めて策を練り直す。



「誰なんだろう、あの人たち……」
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)と同じ依頼を受けていた松本 恵(まつもと・めぐむ)は、島内を探索していたところ、雅羅が男女一組の謎の人物たちに連れ去られていく様子を目にして、思わず物陰に隠れた。
 雅羅と男女が向かう先にはジョリー・ロジャーを掲げた船が幾つか見える。
「兎に角、追いかけないと……!」
 強引に連れて行かれている様子に、恵は彼女らを追いかけて、船に乗り込むことにした。

 雅羅が連れ去られた刻より、少し遡る――。
「調査、頑張ってくるといい。俺はローデリヒと共に、ここでランチの準備をして待っているから」
 依頼を受けて島を訪れた雅羅へとそう声を掛けたのは、武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)だ。
 彼のパートナーのローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)が早々に、ランチの準備のためにキャンプなどに使われるような調理器具の用意を始めている。
 何故だか腑に落ちない雅羅であったが、依頼を遂行するためにも、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)らや恵と共に、島の調査へと出かけていった。
 そして、数時間。陽も高くまで昇り、ランチタイムに丁度良い時刻だということを告げている。
 仮設のテントに赤絨毯、白いテーブルクロスの上に並べられたのは、ローデリヒが素材も厳選して、腕によりを掛けて作り上げたスペイン料理のフルコース――牛のリブ・ステーキ、タコとエビのガリシア風、バレンシア風パエリア、マドリッド風ポトフ……などなどと、高級ワインだ。
「これなら、雅羅さんにも、喜んで戴けるでしょう……」
 ローデリヒは満足そうに頷く。
「そうだといいな」
 幸祐も頷き返し、雅羅たちの帰還を待つ。
 けれども彼女はなかなか帰って来ない。
 痺れを切らして、幸祐は冷めぬうちにと先に食べ始めた。
「あら、雅羅は?」
 そこへ、先に帰って来たのは、セレンフィリティと彼女のパートナー、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)であった。
「まだ帰ってきていません。どちらかですれ違ったりしませんでしたか?」
 ローデリヒが訊ねると、セレンフィリティたちは首を横に振る。
「まさか、また……!?」
 何かに巻き込まれたのかもしれない、とセレンフィリティたちは再び駆け出していく勢いだ。
「まあ、落ち着いて。始めに1つだけ言わせて貰おう……」
 幸祐が口元を拭い、そう告げる。
「何?」
 勢いを停められたセレンフィリティたちは振り返る。
「実に美味であった……」
 彼の言葉に、絶句したセレンフィリティたちは気を取り直して、駆け出そうとした。
「待て待て。向こうに“黒髭”の船が見える。彼らに応援を頼むのはどうだろうか?」
 彼女たちを止めながら、海岸沿いに少しだけ見える船影を指差した。
 たなびく旗は“黒髭”のものだ。
「それなら、彼らへの連絡は任せるわ。あたしたちは先に探して回る」
 そう言い置いて、彼女たちは駆け出していった。
「やれやれ……ローデリヒ、ヒルデガルド。ここを片付けて、“黒髭”の元に向かおうか」
「「かしこまりました」」
 2人のパートナーにそう告げて、彼らはテントなどを片付けると、“黒髭”海賊団の船へと向かった。

 一方、雅羅を探して駆け出したセレンフィリティたちは、“黒髭”の船が停泊しているところとは反対の入り江に、幾つかの船影を見つけた。
 物陰に隠れながら近付いてみれば、見覚えのある――ブラッドレイ海賊団だと示す旗が見える。
「連れ去られた……と考えるのが一番かしら?」
 セレアナが訊ねる。
「そう考えるのが状況的にも最もかもしれないわ。雅羅といい、美緒といい、そしてあたしたちといい、本当に海賊とは切っても切れない仲になったのね……」
 海賊との腐れ縁具合に、セレンフィリティの口からは乾いた笑いが漏れた。
「来年はきっといい年になるわよ……多分、きっとね」
 セレアナの励ましの後、2人はブラッドレイの船にこっそりと忍び込むこととした。