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リアクション
「いや、見事な舞台でした」
ステージを降りるジーナたちに、北嶺公名代峯城 雪秀(みねしろ・ゆきひで)は、満足気に頷いた。
「地球の芸能は派手なモノが多いですね。みな、ああなのですか?」
「流石にローラーブレードで飛んだり跳ねたりというのは余り無いですが……、多分、四州よりは派手だと思います」
雪秀の問いに、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が答える。
四州公と顔見知りになっておきたいと考えていた美羽は、その手始めに雪秀に話しかけていた。
「僕は元々、シャンバラから遠く離れた離島の出身なんです。それで、四州島がどういう所なのか、興味がありまして――」
「なら、一度四州島を訪れてみるといい。我が東野や南濘などは、外国人を――もちろん地球人もだが――積極的に受け入れているよ」
「そうなのですか!それでしたら是非、東野について教えて頂けないでしょうか?」
「勿論、構わんよ。我が東野藩は――」
向こうでは、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が東野公広城 豊雄(こうじょう・とよたけ)といい雰囲気で会話をしている。
コハクも、美羽と目的は同じだ。
「確かに。皆さんの着てる衣装は、四州の元と比べると、非常に大胆で、かつ動きやすそうな服装をですものね」
「私はロイヤルガードなのですが、やはり役目柄、制服は動きやすさが重視されるのです。雪秀様は、どのような衣装がお好きなのですか?」
「そうですねぇ……。私などはやはり、女性らしい服装の方が落ち着きます」
「それでしたら、これなどはいかがですか?」
雪秀に悟られないように【メタモルブローチ】に触れる美羽。
その身体が眩く輝き、一瞬で【振袖】に早変わりした。
「おぉ、これは凄い!先程の女性もそうでしたが、地球の女性は皆早変わりが出来るのですか?」
「いえいえー、流石にそんなコトはありません。雪秀様、実はこれにはちょっとした仕掛けがありまして――。お知りになりたいですか?」
「ハイ、それはもう是非」
「でしたら雪秀様。私のお願いを聞いて頂けますか?」
「お願い――?」
「はい。私に、四州島のコトを教えて頂けないでしょうか。私、四州島にとても興味があるんです」
「いいですよ、お話ししましょう。ですから、早く教えて下さい――」
(やった!掴みはカンペキ!)
雪秀の食いつきの良さに、内心跳び上がって喜ぶ美羽であった。
「校長!」
「は、ハイ!」
百合園女学院校長の桜井 静香(さくらい・しずか)は、いきなり随員の秋月 葵(あきづき・あおい)に凄まれ、目を丸くした。
「あの、飛び入りして来てもいいですか?」
「と、飛び入りって?」
「みんなのステージ見てたら、私も踊りたくなってきちゃって。飛び入りして来てもいいですか?」
「そ、それはいいけど――」
「ホントですか?有難うございます!」
礼を言うが早いか、舞台の方へダッシュする葵。
司会の社に手短に談判すると、出演の了承を取り付けた。
「えー、次は飛び入りの参加です。百合園女学院の秋月葵さんが、神楽舞を披露致します。では葵さん、どうぞ!」
雅楽の流れる中、【エリート巫女服】姿で中央に進み出る葵。
いつもの可愛らしいイメージとはうって変わって、凛々しく、荘厳な舞を舞う。
そして舞の最後に【白鳩の群れ】が一斉に飛び立つと、会場から歓声が上がった。
「鳩は、地球では平和と幸せの象徴と言われています。この鳩が、皆さんに幸せを運びますように――」
葵の言葉に、会場から拍手が巻き起こった。
「飛び入り参加の方が続きます!次はアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)さんの『不思議の国のミュージカル』です!」
「ワタシがミンナを、不思議の国に案内シマスヨ〜」
コミカルな曲と共に舞台に現れるアリス。
その後に【シールソルジャー】と【わたげうさぎ】がチョコチョコ続き、最後にジャイアントピヨがその巨大な体躯を揺らしながら登場した。
音楽に合わせてジャイアントピヨと手をつないだアリスが踊り、その間を、シールソルジャーがちょこまかと動き回り、うたげうさぎがピョンピョン跳び跳ねる。
「ザカコ、私も一緒に踊りたいですぅ〜」
「どうぞ。構いませんよ、エリザベート様」
「ウン!」
踊りの輪に飛び込んでいくエリザベートを、アリスが笑顔で迎える。
2人の、決して上手ではないが、可愛らしい踊りに皆の顔が緩む。
「一緒に、踊るヨ!」
「踊るですぅ〜!」
やがてアリスとエリザベートは舞台に降りると、観客たちの手を引いて踊りに誘い始めた。
何人かが、笑いながら舞台へと上がる。
「ちょ、ちょっと!アレ!」
「ん、どうした?」
来賓たちの歓談を撮影していた七篠 類(ななしの・たぐい)は、尾長 黒羽(おなが・くろは)に肩を叩かれ振り返った。
「おぉっ!こ、コレは――!」
アリスやエリザベートと共に踊っている観客の中に、東野公広城 豊雄(こうじょう・とよたけ)
の姿を見つけた類は、慌ててカメラを向けた。
「四州と葦原の交流を印象づけるのに、コレ以上いい絵はなんじゃないかしら」
「ああ。みんな、とてもイイ顔をしている。――なかでも、東野公の笑顔はまた格別だな。好きなんじゃないか、子供?」
「そうですわね。本当に楽しそう」
自然と沸き起こる手拍子の中、楽しいダンスはいつまでも続いていた。
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