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少女に勇気と走る夢を……

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少女に勇気と走る夢を……

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「……携帯? 見つかったらあたしから連絡するのにどうしたのかな」
 空から分身捜索していたマリエッタはいきなり鳴った携帯電話に急いで出た。

「あ、もしもし。カーリーどうしたの? えっ、そんな事があったの?」
 電話に出るなり、優斗が分身を捜していて見かけなかったかという問いかけだった。

「……そう。それらしき人物ね」
 電話を片手にぐるりと街を見渡す。そして、発見。

「いたよ! 本人に代わってくれる?」
 急いで優斗に代わるように言った。

「えぇ、見つけたわ。女の子と一緒にその……ランジェリーショップに入ろうとしているみたい」
 見た事をそのまま伝えると電話の向こうで優斗は驚いていた。

「それほど遠くはないから、急げば間に合うかもしれないわ」
 自分の位置と店の位置を確認しながら希望になればともう一つ言った。

「携帯はそのまま切って構わないわ」
 まだゆかりの分身は見つかっていないのでこのまま捜索を続けなければならない。

 携帯電話を切ってすぐ

「あれはカーリーの分身!」

 惨状を拡大しているゆかりの分身を見つけて慌ててもう一度連絡を入れた。

「カーリー、分身を見つけたよ!」
 そして、捕獲作戦の相談後、マリエッタは空から分身に回り込んでゆかりと挟み撃ちにする事にした。

 地上。
「そのまま、マリーは空から現場に行って。そこで挟み撃ちをしましょう」
 ゆかりはマリエッタの連絡後、携帯電話を切って現場に急いだ。

 現場。

「見つけたわよ。覚悟しなさい!!」
 手荒な真似をしたくないと言っていたはずなのに手にはハンドガン。
 ためらいなく足元を狙って撃っていく。

「カーリー、手荒な真似をしたくなかったんじゃないの」
 マリエッタは空から急行し、分身の逃げ場を奪う。

「私の邪魔をして」
 邪魔をされてキレたゆかりの分身は、『サイコキネシス』を使った。

「本物を馬鹿にしないで欲しいわ」
 そう言いつつこちらのゆかりも『サイコキネシス』を使う。

「あたしも力を貸すわ」
 捕縛を速めたいマリエッタも『サイコキネシス』を使った。
 二人に攻撃され、分身はすっかり負けてしまい、その場にへたりこんでしまった。

「あとは大人しく眠って貰うよ」
 マリエッタは『ヒプノシス』を使った。

 しかし、
「……そんなもの」
 分身はウトウト気味だが、『不寝番』を持っているせいかなかなか完全には眠らない。

「……しぶとい」
 ゆかりが『ライトニングウェポン』で帯電させたハンドガンで分身を気絶させた。
 何とか無事に分身捕獲を終えた。あとは解除薬を待つだけとなった。

 喫茶店内。

「先ほど降っていた雨は止んだみたいですわね」
 テレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)が店の窓から外を見ていた。

「しかし、色々なものがあるのだな」
 鬼城の 灯姫(きじょうの・あかりひめ)は窓から見える賑やかな店々を眺めながら言った。

「時間はたっぷりありますから、まずはお洋服とか色々見て回りましょう」
 テレサは笑顔で言った。

「だったら灯お姉ちゃんの服装のコーディネートは僕がするよ!」
 ミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)は楽しそうに立ち上がり、胸を叩いた。

 三人は十分に寛ぎ終え、喫茶店を出た。

「まずはあのお店から行きましょうか」
 テレサは向かいの店を指さした。店先にマスコットなのか可愛らしい子犬がベンチに座っていた。

「わぁ、かわいい〜」
 動物好きのミアは顔を綻ばせ、子犬に駆けて行った。
「ミアは早いな」
 灯姫は楽しそうにミアの所に行った。ミアは子犬の隣に座って頭を撫で撫でしている。

「本当に可愛いですわね。灯さんもどうですか?」
 テレサも思わず子犬を撫でながら様子を見ている灯姫に言葉をかけた。

「……うむ。なかなかの毛並みだな」
 恐る恐る灯姫も子犬に触った。子犬はすっかり人気者である。

「あら、三人で楽しそうですね!」

 同じように空京の街を楽しんでいた富永 佐那(とみなが・さな)が現れた。佐那もまたショッピングというかコスプレ関係の店周りをして楽しんでいる途中だった。

「……富永さん」
 テレサは顔を上げた。
「佐那さんもお買い物?」
 ミアも楽しそうに訊ねた。
「そうですよ。そちらも?」
 にっこり答えてから訊ねた。

「似たようなものだ。テレサとミアに街を案内して貰っているのだ」
 灯姫が子犬の頭を撫でながら答えた。

「先ほどの雨が止んでから街がとても賑やかですよね」
「確かに。でも、この街はいつもこんな感じじゃないですか」
 先ほどの妙な雨の事を話すテレサに佐那は肩をすくめながら答えた。
「言われてみればそうですね」
 佐那の言葉にテレサは笑みながらうなずいた。

「それじゃ、私は行きますね」
 佐那は頃合いを見計らって別れを口にして自分のショッピングに戻った。

「バイバイ!」
 ミアが元気よく佐那を見送った。

「さっそく、お店に入りましょうか、灯さん。ミアちゃんはどうします?」
 テレサは灯姫とミアに訊ねた。

「そうだな」
「もう少しこの子と遊んでから入るよ」
 灯姫はテレサに続き、ミアはベンチに座ったまま答えたが、急に勢いよく立ち上がった。

「あれ? あそこにいるのは優斗お兄ちゃんだよね?」

 立ち上がったミアは誰かを発見したのか指をさしながら言った。

「優斗さん?」
「優斗?」
 店に入る事を忘れて勢いよくミアの言葉に反応するテレサと灯姫。

 三人の視線の先には女の子と楽しくお喋りをしながら店に入って行く優斗の姿。

「どうして優斗さんがランジェリーショップに入って行くのでしょうか?」
「女の子もいたよ。まさか……」
「私に内緒で女の子とデートを!?」

 優斗を見た三人の考えは寸分違わずに一致し、これから起こす行動も同じだった。

「許せません!!」
「浮気は許さないよ」
「腹が立ってきたぞ! すぐに問いただして答えによっては折檻だ!!」

 三人は怒りの顔でランジェリーショップに向かった。
 三人は気付いていなかった自分達が目にしているのは分身である事を。

「あともう少しですね。おわっ」

 目的の店に向かおうとしていた優斗は突然向こうからやって来た人物に肩をぶつけられ急いで避けるも

「僕の分身!?」
 ぶつかってきた人物が誰なのか知った優斗は急いで追いかけようとするも背後からの殺気に思わず振り向いた。

「み、みんな、どうしたんですか」
 殺気立つ三人に動けなくなる優斗。どうやら嫌な予感は的中したようだ。

「どうしてあんなお店にいたのですか?」
「優斗お兄ちゃん、浮気は許さないよ」
「どういうつもりだ、優斗」

 ランジェリーショップに乗り込むも危機を察知した分身優斗は素早く逃げた。三人が追いかけて追いついたのが本物の優斗だった。

「……あれは僕の分身です。分身薬を浴びてしまい、ナンパな分身が」
 何とか分かってもらおうとするがどうにも通じた様子は無く、

「分身? 言い訳はそれですか」
「許さないよ。逃げたらもっと酷い目に遭わすって言ったよね」
「もう少しまともな言い訳をするのだな」

 ただの言い訳にしか思ってもらえず、三人は武器を構えていた。

「本当に分身……」
 この言葉を残し、優斗は酷い目に遭ってしまった。
 しかし、すぐに濡れ衣は晴れた。

「どうですか? 僕と一緒に出掛けませんか?」
 ナンパな優斗の分身は近くで女の子を口説いていた。

「あれ? 優斗お兄ちゃんがもう一人いるよ」
 一番に発見したミアが指し示してテレサと灯姫に教えた。

「優斗の話は本当だったのか」
 ただの言い訳でない事を知った灯姫。
「優斗さん!!」
 テレサは血相を変えて酷い目に合わせた優斗に急いだ。

「こら!!」
「そこまでだ」
 ミアはねこぱんちで灯姫は『轟雷閃』によって優斗の分身を見事に戦闘不能にした。

「ごめんなさい、優斗さん」
 テレサは急いで『ヒール』で優斗の傷を癒した。

「優斗お兄ちゃん、ごめんね」
「すまない、優斗」
 分身との戦闘を終えたミアと灯姫も謝った。

「いや、いいですよ。何とか捕まえてくれたんですね」
 優しい優斗は怒らずに分身の事を訊ねた。

「うん、バッチリだよ!」
 そう言い、ミアは倒れている分身の方を指さした。

「……」
 優斗はあまりの悲惨な有様に言葉が出なかった。
 とにもかくにもとりあえず分身確保完了。あとは、解除薬を待つだけだ。