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リアクション
場所は街から院内に移動。
「分身薬、これで私専用のミルディを……♪」
和泉 真奈(いずみ・まな)は一人、小瓶に入った不気味な液体を嬉しそうに眺めていた。実はロズフェル兄弟が分身薬を見舞い相手に自慢しているのを耳にして、頼んでほんの少し譲って貰ったのだ。目的はただ一つ、社会的に迷惑をかけずにミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)を占有するために他ならない。
「お待たせ、真奈……って何するの!?」
用事を終えたミルディアが戻って来るなり真奈は液体を素早くふりかけた。
途端、ミルディアの横にそっくりさんが登場。
「ちょっと、何かけたのよ。うわっ」
現れた自分の分身に驚きつつ真奈に訊ねるも飛んで来る観葉植物の植木鉢を『実力行使』で粉砕。
「あれ? 予想外の展開が……!? 聞いていたのと違うような……こんなに好き勝手に動くはずは」
聞いていたのと違う様子に戸惑う真奈。
「こらぁ! 待ちなさいってばぁー!」
ミルディアはそこら中にある物を吹っ飛ばしながら院内をうろつく暴れん坊な自分の分身を追いかけ始めた。
「……ともかく、何か対策を考えなければ」
予想と違う事を考え続けるよりもとりあえずミルディアの分身捕獲を手伝う事にした。手伝いながら広がる被害を収拾する方法を考えていた。
そして、分身を追いながら院内を走り回っている途中、
「危ないから避けてーー」
ミルディアは曲がり角から突然現れた人物に注意を呼びかけた。
「早くしーちゃん達の所に戻らないと」
用事を終えた東峰院 香奈(とうほういん・かな)は、急いで桜葉 忍(さくらば・しのぶ)と織田 信長(おだ・のぶなが)の元へ急いでいた。
そこに物を吹っ飛ばしながら走り回る人物が突っ込んで来た。
「えっ」
響くミルディアの注意に香奈は急いで避けた。その横を物を吹っ飛ばしながら分身とミルディアが走って行った。
「大丈夫ですか」
真奈が迷惑をかけた香奈の無事を確認し、二人の後を追う。
「大丈夫。何かあったの?」
香奈は答えつつ放っておけず後を追い、事情を訊ねた。
「真奈に薬をかけられてそしたら自分そっくりなのがいて……保護しようとしてるんだけど」
ミルディアは訳が分からないというように自分の身に起きた事を話した。
「暴れん坊な分身が現れるなんて予想外ですわ」
真奈はため息をつく。
「……もし良かったら手伝うよ」
優しい香奈は放っておけずこのまま手伝う事にした。
「ありがとう」
「助かりますわ」
ミルディアと真奈はそれぞれ香奈に礼を言った。
早速、保護作戦を開始。
「真奈、痺れさせるか気絶させてよ。東峰院さんは援護をお願い」
「……分かりましたわ」
「任せて」
ミルディアの指示の元、真奈と香奈はそれぞれ動く。ミルディアは『実力行使』、香奈は優しい弓で飛んで来る物を粉砕し、真奈がその隙に『雷術』で分身を気絶させた。
「これでもう大丈夫だよ。ありがとう、東峰院さん」
「何とかなりましたわ」
何とか作戦が完了し、二人は香奈に礼を言った。
「どういたしまして。それじゃ、私はこれで」
香奈はにっこり笑い、自分を待っている人達の元に急いだ。
香奈を見送った二人は、分身の処遇について相談を始めた。
「保護はしたけど、これからどうしたらいいの?」
「……解除薬があると」
ミルディアの問いかけに真奈は解除薬の事を思い出した。
「持ってるよね?」
「持っていませんわ。こうなると思いませんでしたもの」
一気に解決だと思いきやこれまた予想外の答え。予想通りの分身が現れると思っていた真奈は解除薬を必要ないと言って断っていたのだ。
「……じゃ、どうするの!?」
「……ともかく対策を考えましょう。そうですわ、薬をくれた二人に聞けば解決です。まだ近くにいるはずですわ」
短気なミルディアは思わず声を大きくして真奈に迫った。真奈は何とか弁解をする。
「……解決って」
ミルディアは真奈の言葉にため息をついた。
この後、二人はすぐに分身騒ぎを知り、分身を見張りながら事件解決を待つ事にした。
「遅くなってごめんね!」
ミルディアの分身捕獲を手伝い終えた香奈は、病院を出て忍と信長が待っている場所に行った。
到着してびっくり。
「えっ! しーちゃんが二人!? どっちが本物なの?」
目の前には性格が反転した忍の分身。
二人の忍の隣では性別が反転して男になった自分の分身を興味深そうに観察している信長がいた。
「ふむ、分身薬とは面白い物を作ったものじゃな」
これから分身達と協力して解除薬探しと思いきや
「そんなくだらない事を聞くな!」
性格が反転した忍の分身は、本物を訊ねた香奈に思わず斬りかかった。消えたくないという強い思いと悪い性格のための行動。
「きゃっ!!」
突然の行動に驚く香奈。
振り下ろされた剣を受け止めたのは、
「怪我は無いかのぅ」
信長の分身だった。
「うん、ありがとう」
香奈は無事を確認する信長の分身に答えた。
「ちっ」
忍の分身は舌打ちをしてどこかに行ってしまった。
「大丈夫か、香奈」
忍は心配の入り交じった声で香奈に言葉をかけた。
「大丈夫だけど、しーちゃんの分身、性格が反転してて少し怖かった」
香奈は笑顔で答えるも斬りかかってきた時の分身の顔を思い出していた。
「……ごめんな」
大切な香奈を怖がらせた事に分身に対しての怒りと香奈に対する申し訳なさを込めて謝った。
「……謝らなくても大丈夫よ。しーちゃんが悪いんじゃないんだから」
ぷるりと頭を振り、健気に笑顔で答えた。
二人の話が一段落したのを見計らって信長が言葉を挟んだ。
「……早く分身を止めに行った方がよかろう」
「解除薬を持つ美絵華の分身が危険かもしれぬ」
信長は分身を追いかける事を口にし、分身は、先ほどの様子から美絵華の無事を案じ始めた。
「そうだな。俺の分身がとんでもない事をする前に美絵華ちゃんの分身を見つける必要があるな」
忍は二人の信長の意見にうなずいた。
「そうじゃ、急いだ方がよかろう」
二人の信長はハモりながら急かした。
四人は解除薬入手と美絵華の分身の安全を確保するために急ぐ事にした。
「はっ? 分身?」
分身薬を浴びた佐野 和輝(さの・かずき)はナンパな分身を生み出していた。
「ふぁ!? 和輝が二人……じゃないそっちが偽者だ!!」
横にいたアニス・パラス(あにす・ぱらす)も驚くもすぐに偽者である事に気付いた。
分身はナンパに飛び回る前に近くにいたアニスを口説いた。
「やあ、そこの君。俺と一緒に出掛けないか?」
アニスはじっとナンパする分身を見て
「むーっ、和輝はそんなこと言わないもん!!」
口を真横に開いて“いーだっ”として追い払った。いくらナンパされても和輝と同じ姿形をしているという認識しかないのでなびく事はない。
分身は諦め、ナンパに飛び回った。
「あ、逃げるなーー!! 和輝、追いかけよう!!」
「あぁ」
二人は分身を追いかける事にした。
分身は女の子を口説き続けながら病院の方に向かっていた。
「……あんなナンパ野郎が俺の分身!? 冗談じゃない。俺はあんな性格じゃないぞ!!」
追いかけながらナンパな自分の分身に呆れる和輝。
「アニス、アイツが変な事をする前に排除するぞ……俺のイメージのために!!」
「分かった!!」
和輝は走りながらアニスに元気よく返事をした。
しかし、途中で見失ってしまった。追いかけられている事に気付いた分身が『カモフラージュ』で身を隠しながら移動をしたのだ。
「いないね〜」
「俺の分身、どこに行ったんだ!? ちょっと、いいか、俺の分身を見なかったか?」
きょろきょろ辺りを捜すアニスを連れ、和輝は近くにいた朱鷺に訊ねた。
「……分身、ですか? ここを左に曲がった所に行きましたよ」
暴れん坊の分身と共に移動している朱鷺が答えた。
「そうか、助かる。行くぞ」
「……ありがとう」
和輝は朱鷺から行方を聞くなり急いだ。アニスもこわごわと礼を言い、走り出した。
その道の先、さらなる人物と出会う事になった。
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