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リアクション
第二章 分身、大暴れ
「ちょ、やめろよ!!」
「大人しくしろ!!」
ロズフェル兄弟は必死に悪戯をして人々に迷惑をかける分身達を止めようと走り回っていた。
「あれは、ロズフェル兄弟。これは将来お金になりそうダヨ? 仲良くなって損は無いカモ!」
大騒ぎの街中にいたディンス・マーケット(でぃんす・まーけっと)は偶然、ロズフェル兄弟を発見し、コネ作りを思いついて彼らに声をかけに言った。
「よろしいデスカ」
「キスミ、そっちに回れ。ん?」
「今、大変なんだけど……」
ディンスに声をかけられたロズフェル兄弟達は、ディンスの方に視線を向けた。とても相手をしている場合ではないと表情が言っているが、ディンスは話を続ける。
「分身薬とはすごいデス。お二人には才能があると思うんデス! 次に何か始める時は是非、私にお声かけを……」
おもむろに名刺を差し出した瞬間、横やりが入って来た。しかも予想外の人物。
「スゴイ薬に驚きましたヨ。才能に惚れ惚れデス。次に何かを始める時は是非、私にお声かけを。これは名刺デス」
何と自分の分身だった。同じような口調で同じように名刺を差し出しているが、心なしかナンパな匂いが。よく見れば分身の背後には説得を容易にする魅惑のマニキュアも相まってか名刺を手にしている人が数多いた。
「……」
二人が差し出された名刺を困ったように見ている横で
「うおぉ、名刺だぞ、キスミ。分かる奴には分かるって奴だな」
「やっぱり、オレ達は最高だぜ」
双子の分身は、陽気に笑い二人のディンスから名刺を取り、嬉しそうに小躍りをする。
用事を終えたディンスの分身はまた口説きに行ってしまった。
「これでは、信用ががた落ちだヨ。解除薬を探さないと……」
惨状にため息をついている横でロズフェル兄弟達は、
「おい、返せよ。それは俺が貰った物だ」
「二枚もいらないだろ!」
名刺を巡って本物と分身がもみくちゃに争っていた。
ディンスは子供の様に争っている二人に向き直り、
「美絵華さんの顔を知っているお二人に解除薬探しに力を貸して欲しいデス。本物は……」
ディンスが訊ねる前に双子達は勢いよく主張を始め出した。
「俺が本物だ」
「オレが本物のキスミ・ロズフェルだ」
「お前は分身だろ。俺が本物のヒスミだ」
「オレが本物」
「……」
ディンスはじっと品定め。手掛かりとなる名刺はすっかり四人共、手に入れている。頼れるのは自分の第六感と今の街中で邪魔をしない方だろうという頼りのないもの。
「ではそちらでお願いしマス」
ディンスが指名したのは前者だった。
「よし、行くぞ。お前達は大人しく待ってろよ」
「おう、任せておけ!」
勢いよくディンスの解除薬捜索の手伝いを始めた。
「急ぎマス」
ディンスは『トレジャーセンス』を駆使して美絵華の分身を追い始めた。
残されたもう一組の双子が大人しくしているわけはなく、
「つまらないな」
「何か面白い事をしようぜ、ヒスミ」
三人が行った後、元気に悪戯を始めた。ディンスの見極めは正しかったようだ。
「分身を排除するだけの簡単な仕事、そう思ってた自分をぶっ飛ばしたくなるなホント……」
柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は分身で大混乱の街に嘆いていた。
「……女の子の説得なんて苦手だからこっちに回ったんだが、全力でやらないと速攻で返り討ちにされるな。ズタボロにされるのはごめんだからな」
恭也は二丁のマシンピストルを構えつつズタボロにされる姿を一瞬思い浮かべながらも排除に乗り出した。
排除に全力を尽くしている時、背後から声をかけられ振り向くと
「素晴らしい銃さばきデス。どうぞ、名刺デス」
現れたのはナンパなディンスの分身。
「あ、はい」
思わず流れで名刺を受け取ろうとする恭也。
「それは分身ダヨ」
双子を伴った本物のディンスが登場。
「……!!」
本物登場と共に分身は逃げ出してしまう。
「待て!」
恭也は瞬時に『シャープシューター』で足元を狙い、逃亡を止める。
「これ以上信用が落ちるのはごめんだヨ」
ディンスが『ライトニングウェポン』で帯電したニューラル・ウィップで大人しくさせた。
「……解除薬を探す途中だったから助かったヨ」
改めて恭也に礼を言うディンス。
「いや、礼はいいから早いとこ解除薬を見つけてくれよぉ、これ以上被害が広まる前に」
再びマシンピストルを構えながら恭也は言った。
「大丈夫だヨ」
ディンスはそう答え、双子と共に解除薬捜索に戻った。
「さて、もうしばらく相手をするか」
恭也はもみくちゃにされながらも必死に戦に戻った。
「綺麗な雨が降ったと思ったらもう一人の自分ですか」
たまたま病院周辺にいた東 朱鷺(あずま・とき)は見事に分身薬を浴び、暴れん坊な分身を生み出し、目に付くものを手当たり次第、吹っ飛ばしていた。
「これは面白いですね」
朱鷺には分身を止める様子は全くない。
「しばらく観察しましょうか」
朱鷺は分身とつかず離れずの場所で奇行を観察していた。
これから何度か同じように分身薬の被害を受けた者達に出会う事に。
「面白そうな事になってるねぇ。そう思わない?」
永井 託(ながい・たく)は賑やかな街を見回しながら隣にいるもう一人の自分に話しかけた。気付いたら自分と寸分違わない自分が目の前にいて話している内に外見だけではなく中身も同じと言う事で仲良く騒ぐ街を眺めているのだ。
「そんな事聞くまでもないよ」
うなずく分身。
「『僕』なら、こうなったらどうするか分かるよねぇ」
「うん、騒ぎを思いっきり楽しむ」
託と分身は騒ぎ収拾に勤しむ人達とは違う考えを浮かべる。
「僕が君で君が僕」
託は楽しそうに互いを指さしながらこれから始める悪戯を口にする。
「きっと気付かれない。まったく同じだしねぇ。それで解除薬を探している人に協力して……」
分身も楽しそうに話を続ける。
「そこからは言わなくても分かるよねぇ。『僕』なら」
「当然だよ」
二人はそれぞれこの祭りを賑やかにするために一度別れた。託は分身達に混じり、分身が解除薬を探す人を捜しに行った。互いに行動を確認しながら祭り盛り上げに精を出した。
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