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リアクション
他の場所で同じようにぬいぐるみに遭遇している二人がいた。
「どこからともなく聞こえる動物の声! 我々を招き入れる恐怖かそれとも新たな出会いか!? 追ってみるであります」
廊下を歩いていた吹雪はどこからともなく聞こえる熊の声を耳にして追って行った。
「……ぬいぐるみとの出会い」
コルセアは冷静に一言。
二人は廊下を進み、熊のぬいぐるみと出会った。
「今、我々の目の前に厳しい環境を生き抜いた猛者がいるであります! その身の汚れこそその証!」
薄汚れた熊のぬいぐるみを感動の混じった声で解説する吹雪。
「吹雪!」
コルセアが飛んで来る鉱物に気付いた。
「可愛さに潜む、ただならぬ凶暴性!」
吹雪は機晶スパイラルライフルで飛んで来る鉱物を粉々にした。
その間に熊のぬいぐるみはどこかに行ってしまった。
「思いもよらない出会いはどこかに消えたであります。まだまだ我々の探検の道は続くであります!」
吹雪は記録しているコルセアに呼びかけ、先を急いだ。
「こんな所にいたのかぁ」
書斎を出た司は廊下を歩き回った末、兎のぬいぐるみに遭遇した。当然、色眼鏡と匂いの異常状態である錯乱と幻視幻聴の効果で妹に見えている。
「本を投げたり危ないだろう。悪戯はだめだぞ。遊んであげるからもう寂しくないぞ」
飛んで来る本を見事に避けつつ走って行く兎のぬいぐるみを笑いながら追いかける。異常状態に陥る前に考えていた事を口にする。ぬいぐるみはきっと構って欲しくて悪戯をしているのだろうと。
「ツカサ! って完全無視。まぁ、面白いからいいけど。でも気になる事言ってたし」
後ろにいる自分の事を完全無視する司に肩をすくめるシオン。
「何、このツカサのシスコンっぷり〜。しかも妄想とかぁ。キモイしサイテー! シオン〜、何とかしなさいよぉ〜☆」
司に替わってミステルが喋り始めた。一見すれば司の身体に生えた薔薇のミステルは司と身体を同じくしているため司の口を使っての会話である。ちなみに薔薇が本体である。
何とかしろと言う割にはかなり愉しそうである。
「もう少し愉しんだらね〜。これはオルナとお近づきにならなきゃね」
シオンも愉しそうに答え、こんなに面白い物を作ったオルナと知り合いにならねばと思っていたり。
「こらこら、危ない事しちゃだめだぞ」
司は妹の世話を焼く兄のように笑みを浮かべながら追いかけまくっている。よく聞けば口調まで変わってしまっている。
「何か、アタシまで幻視幻聴の状態になったみたいで〜。苦しんでいる人間に見えるよぉ」
司と身体を同じくするためかミステルも影響を受けているらしく、近くのごみ袋を『アルティマ・トゥーレ』で凍らせ砕いてしまう。
「あはは、砕けちゃったよ〜」
砕ける様子を見て愉しそうに笑う。
「ハッハッハ……お転婆さんだなぁ」
司は相変わらず楽しそうに兎のぬいぐるみを追いかけて行った。
外。
「……すごいね」
「これほどまでに溜め込んでいたとは」
書斎の掃除を終えたイリアとルファンは枕やマットレス、掛け布団を干すために外に出ていた。
大量の洗濯物が干されているのにも関わらず汚れ物が大量にある景色。
二人は干す物を干してから忙しそうな人達の所に行った。
「イリアも手伝うよ」
イリアは手洗いで洗濯をしているアメリ、ダン、青夜に声をかけた。
「……ありがとう」
「助かる」
アメリとダンは新たな手伝いを歓迎した。
「洗い物する前に気を付けるのだぞ。薬品が付いてたら危ないからな」
青夜が注意。水もたっぷり確保できてるので思う存分洗濯が出来る。
「大丈夫かのぅ」
ルファンは洗濯物を干しているササカに声をかけた。どことなく不安そうに見えたので。
「はい。本当にあの子のためにありがとうございます。最近、様子を見に行っていなかったから。無事かどうかも」
ササカは、心配の気持ちを吐露した。無事に救出されると信じてはいるが、こうなる前に防げなかったのかと思ってしまう。
「きっと無事じゃ」
ルファンは静かに言った。きっと誰かがオルナを救出してくれると信じているのだ。
「そうだよ。大丈夫、大丈夫!」
二人の話を耳にしたイリアが明るく言った。
「ありがとうございます」
ササカは励ます二人に礼を言った。
そんな時、
「誰か買い出しに行くのだ」
厨房・食堂の清掃完了を受けた法正が一緒に伝えられた依頼をみんなに伝えた。地図に食堂・厨房を塗り潰し、浴場に二人ほど担当者を増やした。
「買い出しなら私が。あの子の好みは知ってるから」
「イリアも一緒に行くよ!」
ササカとイリアが名乗り出た。
「お願いします」
そう言ってササカはイリアを連れて急いで買い出しに行った。
残ったルファンは洗い終わった洗濯物を次々と干していった。
さらに時間が経過した頃、
「オルナ救出完了、残るは実験室の掃除だけなのだ」
という法正の知らせは外にいるみんなを安心させた。玉小からの連絡だ。城内で知らないのは掃除やぬいぐるみ捕獲の者達なので彼らに知らせるのは担当している仕事が終了してからの方がよかろうと考えてしなかった。それにしなくてもみんな誰かがオルナを救出していると信じていたので必要も無かった。
この後、すぐに法正は浴場にいるオデットに入浴の準備を指示した。
ササカとイリアが買い出しに出掛けてすぐの事だった。
ササカにダリルの知らせが入ったのは親友の好物を買っている時だった。
さらにそれから時間が経過し、
「それなら僕はここで待機して舞花とラウズが持って来るのを受け取るんだね」
青夜は裕樹から連絡を受けた。実験器具洗浄が始まる。
「すごい量ですね」
「これ、全部あの城にあったんだね。見たら驚くだろうねぇ」
厨房と食堂の清掃を終えたクナイと北都が現れた。目の前にあるのはごみが入っているコンテナ。外に出てから二人はオルナが救出された事を知った。
「少しずつ綺麗になってますよ」
ごみ出しをするホリイが少し嬉しそうに言った。ゴキブリに遭遇するのは嫌だが、城内が綺麗になっていくのは楽しい。
「……手伝うよ。人が多ければ早く終わるだろうしねぇ」
そう言い、北都はクナイと共にごみの分別を手伝い始めた。
「はい。お願いします」
ホリイは嬉しそうに言ってから仕事に戻った。
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