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リアクション
換気後、朋美達が潜入してすぐ。掃除担当組が動く前。
「一緒に頑張ってオルナさんを救出しましょう!」
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)はベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)と忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)を連れて城の入り口へ。
換気後すぐなので匂いもまだ残っているが、オルナを放っておけないフレンディスは気にせずに先に進んだ。対策としてフレンディスは虹のタリスマンと『肉体の完成』を使い、ベルクが側にいる間発動中となる『超感覚』で出現する耳と尻尾がピンと立ってやる気満々を訴えている。何より『方向感覚』を持っているのでごみによって道を迷わされる事は無い。
「……うわぁ、酷ぇなんてモンじゃねーな。これは色々駄目だろ」
朋美達によって多少ごみは減ったものの凄まじさは健在の部屋にため息をつくベルク。
「……はぁ、行くしかねぇか。気を付けろ。匂いはまだ残っているはずだ」
先へ進むフレンディスを心配するベルク。嫌な予感しかない。虹のタリスマンと『冥界渡り』で自身の対策をして『イナンナの加護』を仲間にかけて対策はぱっちりにしてはいるが油断は禁物。
「腰抜けはここで待ってるのだ。ご主人様、僕の嗅覚に任せて下さい。“ここ掘れワンワンの術”で物でも人でも発見しますよ」
ポチの助はちらりとベルクを見た後、胸を張って自己主張。
「お願いしますね」
フレンディスはポチの助の頭を撫でながらにっこり。
「ふふん♪」
尻尾を振りながら勝ち誇った笑みをベルク投げた。
「……嗅覚か」
激しく動く尻尾を見ながらベルクはこんな匂いの中では嗅覚の良さは仇になるのではと思うも口にはしない。
先頭を『トレジャーセンス』を使うポチの助が務め、その後ろにフレンディス、殿はベルクで進む。
進む度に魔法ごみと思われる物に遭遇しまくる。
「……危険すぎるだろ」
ベルクは見つける度に闇氷翼や『クライオクラズム』でを凍らせていく。現状の惨事回避を目的としているのでそのまま放置。自然解凍後の処理は後続に任せればいい。
「……フレイ」
先を歩くフレンディスに用心を怠るなと注意しようと顔を向けた瞬間、疲れの表情に変貌した。
「わーい、お兄ちゃんだ」
にっこりと可愛らしい声を上げるフレンディス。
「……フレイ?」
あまりの変貌に呆気にとられるもすぐに事情を理解する。目を離している隙に匂いにやられたのだ。
「ワンちゃん、ねんねしたー」
抱っこしているポチの助を撫で撫でしながら楽しそうに言う。
嗅覚の良さ故に匂いにやられたポチの助。
「……」
精神が幼児化したフレンディスにかける言葉が見つからず、見守っているとポチの助を膝の上に寝かせ万歳をした。
「おんぶ。おにーちゃん、おんぶ、おんぶ」
万歳のまま甘えるフレンディス。ベルクは放っておけず屈んで背中をフレンディスに向けた。
「……ほら」
フレンディスを背中に乗せると同時にポチの助を一緒に連れて来た猛き霊獣の背中に乗せた。さぞポチの助を見て呆れ顔をしているであろう。
ベルクに背負われたフレンディスは匂いのせいなのか眠ってしまった。
「……眠ってるな。出だしからこれで大丈夫か」
フレンディスの寝息を聞きながらベルクは疲れに満ちたため息を吐いた。まだオルナも見つかっていないというのに。ほんの少しいつもと違うフレンディスが見られて嬉しかったりもするが。当分の間、両手が塞がったベルク独りだった。
「……ん? あれ」
しばらくしてフレンディスは目を覚まし、視界の位置がいつもと違う事に戸惑い始めた。
「起きたか?」
フレンディスが目覚めた事に気付き、ベルクが声をかけた。
「あ、はい。ごめんなさい。修行不足です。降りますね」
フレンディスは、迷惑を掛けた事と背負われている事に顔を赤くしながら謝った。
「あぁ」
フレンディスの言う通りに降ろした。
ポチの助はまだ猛き霊獣の背中で尻尾を振りながら気持ちよさそうに眠っていた。夢の中でフレンディスにたっぷりと褒められ撫でて貰っているのだ。
「……あの、あの部屋調べてみます」
フレンディスは、迷惑を掛けた分を取り戻そうと気になった近くの部屋を『壁抜けの術』で様子を見に行った。
「フレイ!」
ベルクの制止は間に合わなかったが、フレンディスはすぐに姿を現した。
「……何もありませんでした」
いつもの調子でフレンディスはベルクに報告した。
「頑張りたいのは分かるが、無茶をするな」
何も無くて安心するも先ほどの事もあって少し厳しい調子のベルク。
「……はい」
フレンディスは耳と尻尾を垂らしてしょんぼりと反省。
「急ぐぞ」
今度はベルクが先を歩いた。
「はい!」
フレンディスは元気に返事をしてついて行った。
ポチの助はそのままにされた。目覚めても抜群の嗅覚で同じ目に遭うと予想出来るからだ。目覚めた時に誰もいなかったら可哀想というフレンディスの主張でこのまま連れて行く事になった。
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