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リアクション
「はい。これもお願い。いっぱいだね」
朋美は膨張して今にも破れそうなごみ袋を甚五郎に渡した。種類別に用意されたコンテナはどれもごみがたくんさん。
「あぁ、掃除が終了すればもっと増えるだろう」
甚五郎は受け取ったごみを処理しながら言った。
「本当に、人ってどこでも生活出来るんだね」
朋美はコンテナに詰まっているごみを見て思わず、言葉を洩らした。
「数年分の大掃除という感じね」
トメも少し呆れ気味に言う。
「これだけの人数だ。気合い入れりゃすぐに終わる」
と甚五郎が力強く言った。話す間もごみの分別の手は休めない。
「また行って来るよ。行こう、おばあちゃん」
「さっさと終わらせましょうかね」
朋美はトメを連れてまたごみで溢れる城内に戻った。
各部屋の掃除が進む中。
「……これって銅像よね?」
セレンフィリティが通路を妨害する横倒しになった何を表現したのか分からない銅像を発見した。
「どう見ても銅像ね」
セレアナが示された物を見て冷静に一言。
「買ったものかな。だとしたら飾らずに廊下に放置って」
セレンフィリティは呆れたように銅像を眺めていた。
「……それ何?」
ごみ回収をしていた朋美がやって来た。
「何かの銅像みたいね」
トメも登場。
「ここに転がってたんだけど。何が何やら」
セレンフィリティは肩をすくめながら答えた。
「……メモがあるわ」
セレアナが貼り付けられているメモに気付き、手に取った。
「……何て書いてる」
セレンフィリティは何が書いてあるか読もうとしないセレアナが気になりひょいっと覗いた。
「……うわぁ何、これ。何かの暗号? メモの意味無いわよ」
メモを見た途端、セレンフィリティはドン引きしてしまった。
「ともかくこれをどうにかするわよ」
セレアナはメモを持ったまま注意を再び銅像に戻した。
「処分するにしてもここにあるのは邪魔ね」
トメが言った。
「とりあえず」
セレンフィリティは『サイコキネシス』を使って廊下の端に寄せた。
「というかこの銅像破壊した方がいいと思うんだけど」
セレンフィリティはドン引き顔のままセレアナに言った。
「必要な物かもしれないわよ」
セレアナは至極冷静に言った。
「これが必要ってどんな時よ。連絡してみる」
信じられないという顔でセレンフィリティは外で洗濯をしているササカに確認を取ってみた。親友ならもしかしたら知っているかもしれないと。
そしてすぐに話し終えた。
「どうかね?」
トメが一番に訊ねた。
「この銅像について知ってたわ。衝動買いしていらなくなった物だって。普通、衝動買いでもこんな物買わないわよ」
セレンフィリティは聞いた事をみんなに話した。
「それで」
セレアナは話を促した。肝心の処分についてがまだだ。
「処分していいって」
セレンフィリティは思い出したように言った。
「……衝動買いでこんな銅像を買うなんて」
朋美もセレンフィリティと同じような反応を見せた。
「人それぞれよ」
トメはそんな朋美に言った。
「さっそく。処分開始。みんな離れて」
『破壊工作』を持つセレンフィリティは機晶爆弾を銅像に設置し、
ドガァァァァァァァァァン。
粉々に爆破。
「はー、少しすっきり」
清々しい表情で粉々になった銅像を眺めるセレンフィリティ。
「……さすが、壊し屋ね」
セレアナが一言。
「これで大きなごみが一つ減ったね」
朋美も少し清々しい表情。
「朋美、ごみ袋に入れるのよ」
トメは突っ立っている朋美に言い、かけらを拾い始めた。
「分かってるよ」
朋美は、そう言って粉々になった銅像をごみ袋に入れていった。
「セレンも」
セレアナは役目を終えたメモをごみ袋に捨てながらまだすっきり顔で立っているセレンフィリティに言った。
「はいはい」
我に返ったセレンフィリティも手伝った。
銅像は無事処分され、セレンフィリティとセレアナはまた薬品回収に回り、朋美とトメは道作りのためのごみ回収に勤しんだ。
城内、廊下。
換気後、他のみんながそれぞれ掃除を開始した頃、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)とカムイ・マギ(かむい・まぎ)の二人は『イナンナの加護』で身を守りつつ匂いの影響を受け、悪さをしている五体のぬいぐるみの捕獲に奔走していた。
「換気が行われましたから匂いは少しは薄らいでいるはずです」
まだまだごみにまみれている城内を見渡しながらカムイが言った。
先を歩いていたレキが突然、足を止め前方を指さした。
「あれ? ボク幻視幻聴の影響かな。猫がいるよ」
少し薄汚れた可愛らしい猫のぬいぐるみが立っていた。
「ニャアァ」
猫のぬいぐるみは可愛らしい声を上げたかと思ったら本を投げて来た。
本はぼうっとしているレキの額に的中した。
「痛いって事は本物だね。うわぁ、聞くのと見るのとは違うよ。すごくかわいい」
レキは、痛みで本物だと確認するなり口元が嬉しさで笑む。
「……大丈夫ですか? おそらくササカさんが話していたぬいぐるみです」
カムイはレキの無事を確認するなり『ナーシング』でレキの額の怪我を癒した。
その瞬間、本の次に飛んできたのは皿だった。廊下だというのに皿が転がっているとはさすがごみ屋敷。
「ありがとう、カムイ。おっと。よーし、捕まえるよ!」
レキは治療してくれたカムイに礼を言ってから動き始めた。レキは『イナンナの加護』と『歴戦の防御術』を使い、軽やかに飛んで来る皿を避け、接近し猫のぬいぐるみを掴み、抱き寄せた。ちなみに皿は粉々だ。
「カムイ、捕まえたよ。うはぁ」
レキは抱き締めたまま嬉しそうにカムイに報告。
「……レキ、可愛がりたいのは分かりますが、まだ敵ですから。匂いの効果が消えてからにして下さい」
カムイは暴れたそうに両手をバタバタしている猫のぬいぐるみを見ながら注意した。
その時、カムイの背後から襲撃者が現れた。
「コーン」
傘を持った狐のぬいぐるみだった。
「カムイ、後ろ!」
レキは大声を上げる。
「……!!」
カムイは瞬時に振り向き、『光条兵器』で狐のぬいぐるみが振り下ろした傘を受け止めた。斬る事はせず、そのまま床に叩き伏せる。
「えい!」
レキは消臭スプレーを吹きかけて両手足を泳がせている狐のぬいぐるみを大人しくさせた。
「ウホッ! これもかわいいよ。一体というか全部欲しいな。聞いてみようかな。で、どうする?」
レキは大人しくなった狐のぬいぐるみも拾い上げ、抱き締めた。腕の中には猫と狐。
心奪われながらカムイにどうするかを聞く。
「匂いの他にも少し汚れていますから洗った方がいいかもしれません」
ぬいぐるみを観察してから答えた。よく見れば汚れている。匂いを消すついでに洗った方がいいかもしれない。こんなごみ屋敷を徘徊していたのだから汚れていて当たり前である。
「そうだね。こんなにかわいいのに汚れたままは可哀想だよね」
レキはぬいぐるみ達の頭を撫でながら言った。
「とりあえず、袋に入れましょう」
大きな袋を取り出し、口を広げた。
「……少しの間だけ我慢してね」
レキはそう言うと狐のぬいぐるみを入れ、猫のぬいぐるみも消臭スプレーをかけてから優しく袋に入れた。
「あと、三体だね」
レキは気合いを入れ、ぬいぐるみ探しに急いだ。袋の口をしっかり縛ってからカムイもついて行った。
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