校長室
空と時を駆ける者
リアクション公開中!
目覚めたリュイシラを連れて村に帰ってきたフリューネの目に映ったのは、惨劇の後だった。 辺りには獣人も空賊入り乱れて倒れたまま、血の痕が村のそこここに生々しく残っている。 村人や仲間たちの中には、村の周囲を走り回って戦いの後片付けをしている人もいた。 一人生き残っていた空賊の頭を、エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)がレバーアクションライフルから放つ電撃の弾丸が撃ち抜く。 「あ、お帰りなさい!」 フリューネに気付き、無邪気に答えるエーリカ。 フリューネはリュイシラを村の外で待つように言い聞かせてから、村の中へと入っていった。 「意外と遅かったな。私たちと空峡から帰ってきた味方全員で敵を掃討した」 リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)は、中央広場にテーブルとイスを用意し、優雅に紅茶を飲んでいた。 「一緒にお茶でもどうだ、今日は最高級のスリランカ産の茶葉だぞ」 「……」 浮かない顔のフリューネに、レノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)とアルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)が相対する。 「リブロの指揮に文句でもあるのか」 トゥーハンディッドソードの柄に手をかけるレノア。 「文句があるなら、相手になってやっても良いぞ」 フリューネを軽く挑発するようなアルビダ。 「レノア。アルビダ。下がれ」 リブロは二人を諌めると、紅茶をテーブルに置いてフリューネを見上げた。 「まずは二人の非礼を詫びよう。そして、村の防衛にも辿り着くのが遅くなって済まなかった」 「いえ、村を守ってくれたことに変わりはないわ」 フリューネはそう言いながら、空賊と村人と獣人とのそれぞれの信じた正義に思いを馳せる。 「ニルヴァーナに送られた子供たちの安否もそろそろ分かるだろう。 だが、まずは仲間たちと共に休息を取って来るのが良いだろう」 「そうさせてもらうわ。皆が無事かも、確認したいしね」 「ああ、そうだ。戦死した村長の墓を先ほど村人たちが作っていたようだ。 墓参りもしていくといい」 リブロの声を背に受けながら、フリューネは村長の家へと向かって歩き出した。 「フリューネさん」 村長の家の二階、窓から空を眺めていたフリューネの元に、父の元へ返したはずのリュイシラがやってきていた。 「どうしたの?」 「……無理なお願いかもしれませんが、私を村の外へ連れ出してもらえませんか?」 フリューネは、誰かの口からリュイシラ本人に出生の話が漏れたのだろうな、と推測する。 「……私、もともと父の本当の娘でないことは知っていたんです」 フリューネの思考を遮るように、リュイシラは言葉を続けた。 「本当の父がこの村を訪れた時、私はその気配に勘付きました。地下の倉庫から聞こえる声も、聞き取ることができました。 幼かったため、よく分からないこともありましたが、本当の家族は別にいることと、私は獣人であるということは分かりました」 言葉に詰まったフリューネを見て、リュイシラは少し俯いた。 「父には、もうこの話はしてあります。 そして、『こんな村だとしても、リュイシラの故郷であることに代わりはない。いつでも戻ってきなさい』と、言ってもらいましたから、心残りはありません」 その決意に満ちた表情は、リュイシラの育ての母のものに少し似ていた。 「……間違えても、やり直せることだっていくつもあるはずよね」 フリューネは、リュイシラに優しく語りかけた。 フリューネは、エネフから地上を見下ろした。 その少し後ろに、捕虜にしたペガサスに乗るリュイシラの姿がある。 徐々に小さくなっていく村を見下ろしながら、フリューネたちは天高く駆け上っていった。
▼担当マスター
八子 棗
▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。そしてこんにちは、八子 棗です。 寒くなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 今回はバトル中心のシナリオでしたが、いかがでしたでしょうか。 アクションにて伏線に突っ込んで貰えた分は、恐らく全て回収した……はず……です。 こちらのシナリオと関連したシナリオを書くつもりでおりますので、その際はよろしくお願い致します。 何か一つでも思い出に残りましたら、嬉しく思います。 それでは、また他のシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。