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冬のSSシナリオ

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奴は滅びぬ! 何度でもよみがえるさ!

「いやー燃えましたねぇ」
「何呑気に言ってるのよ……」
 呑気に笑うレティシアに、ミスティが疲れた様子で言った。

――あれから消火活動の甲斐あって、火は完全に鎮火していた。
 しかし炎の勢いは凄まじく、天守閣の大半は焼かれてしまった。
 更に一部アトラクションにまで火の手は及んでしまい、被害は相当な物であった。

「ふぅ……植物園は無事でよかったわ」
 幽那が安堵の息を吐く。ちなみに植物園は幽那の活躍により、一切被害が出ていない状況であった。
「さすガお祖母ちゃん! すごかッタヨ!」
「全くだ! あの時の母の格好よさと言ったら無かったな!」
 ハンナとアッシュがやたらと幽那を褒めまくる。
『あの時の幽那ちゃんの鬼気迫る形相といったらなかった』
 そしてアリスがぽつりと呟く。一体何があった。

「はっはっは、無事消火できてよかったですねぇ!」
「そうそう、よかったよかった」
 ルイと佳奈子が弥十郎作の赤出汁を啜りつつ笑った。
「そんな一言で済ませていいのかしら……」
 エレノアが焼け跡と化した天守閣を見て呟いた。
「……俺、良く生きてたな」
 その被害の凄まじさを見て、牙竜がポツリと呟いた。全く、コメディでなければ死んでいた。
「本当よ。あんまり危ないことしないの。見ているこっちはヒヤヒヤものなんだから」
 そんな牙竜に、セイニィが窘める様に言うと「全くでござる」とツールも頷く。
「まあまあいいではありませんか。あ、あちきにも秋刀魚下さい」
「はいよぉ。外で食べる秋刀魚も乙だよねぇ」
 弥十郎がレティシアに定食のお盆を渡す。今日の定食は秋刀魚定食。すだちと大根おろしもついている。
 他にも、消火作業が終わった面々へ弥十郎は、ずっと作っていた料理を労いの意味も込め配っていた。八雲も手伝い、まるで炊き出しのような光景である。
「輝お兄ちゃん、ぐっじょぶだにゃー!」
 そんな炊き出し会場と化した広場の中で、瑠奈が輝にサムズアップ。
「ふっ……ボク自身自分の才能が恐ろしいよ」
 そう言って輝もサムズアップで返す。
「で、何で俺はまたこんな恰好をさせられてるんだよ!」
 その横では、また可愛くさせられたシオンが居た。
「火を消す際に衣装を焦がしてしまったキミが悪いんじゃないかな、シオン君? ワタシ達は最後までこの格好をしなくてはいけないルールなんだよ? それを新しくしてくれたんだから、むしろ感謝すべきだとワタシは思うよ?」
「そこは普通に元の服を返せよ……」
 桃華に説教をされ、シオンが納得いかない表情を浮かべる。今回だけで色々と彼は失った物が多そうだ。
 一方、そこから離れた場所にて。
「ふぅ……これで終わりっと」
 永谷が柏手を叩き、礼で締める。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 その瞬間、ハデスが悲鳴を上げる。
 永谷が行っていたのは、浄化の儀式。今回の件が終わり、悪を浄化する、という事で手近な悪の組織であるハデスをふん捕まえて、儀式を行っていたのだ。
「あの、何故ご主人様……じゃなかったハデス博士は苦しんでいるのでしょうか?」
 のた打ち回るハデスを見てヘスティアが呟く。本当、ただの浄化の儀式なのに何故苦しむ。
「く……フハハハ! それはこのハデスが悪の組織であるからだろう! だがこれしきで我がオリュンポスは――」
「ん? まだ終わってなかったか。よし、もう一回」
「ぬぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 永谷が再度儀式を始めると、またもやハデスの悲鳴が上がった。
(ああ……綺麗なお花畑が見えます……アルテミスは今そちらへと向かいます……)
 ヘスティアの足元では、アルテミスの口から漂う白い靄が見てはいけない物を見ていた。アルテミスあかん、多分そっち行っちゃいけないやつや。

「――で、これどう収拾つけるの?」
 秋刀魚をむさぼるレティシアに、ミスティが問う。
「んむんむ……んぐっと……収拾ですかねぇ?」
「そうよ。結局最後の展開も有耶無耶だし、お城も燃えちゃうし、どう締めるつもり?」
「んー、こう言っておけば何とかなると思いますよぅ」
「何を言うのよ?」
 ミスティに聞かれ、レティシアはドヤ顔でこう言った。
「レティロット城は滅びぬ。何度でもよみがえるさ、とねぇ」
「全く締めになってないと思う」
 ごもっとも。

※注 風雲レティロット城はその後、スタッフがしっかりと直しました。