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リアクション
■幕間:武道大会ソロ部門−その後の展望−
セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)はリカインへの何度目かの攻撃で理解する。
(……我の方がやや力負けしておる……か)
彼女は前面を薙いだ。
槍が音を立ててリカインへと迫るが盾で防がれてしまう。
弾かれた反動を利用して下段へ、足払いを狙ってみるも盾を地面に突き刺して使用されこれもまた防がれてしまった。
「盾の使い方にしては荒々しいな」
「武器としても使ってるからそういう感想なのかしらね」
彼女は盾を鈍器のように振り下ろした。
それをセドナは柄で防ぐ。
――ゴンッ
重い音が耳に届いた。
「和深!」
「任されたっ!」
アストライトのブーメランを避けながら瀬乃 和深(せの・かずみ)はセドナの下へ駆け出した。
近づいてくる瀬乃を視認したリカインは攻撃を止め、後方へ跳躍すると盾を構え直した。
「やっちまえセドナっ」
雷が彼女に降り注ぐ。
盾で防ぎ、もう一撃来るかとリカインがセドナに注意を払うが、彼女の目標は違った。
狙われたのはアストライトだ。彼女は助走をつけながら手にした槍を投擲した。そして彼の方へと駆け出した。全速力である。
「武器捨ててどーするつもりだよ」
アストライトは言うとブーメランを取り出した。
迫る槍。彼は勢いよく振りかぶると殴った。
槍が弾き飛ぶ。
そしてお返しとばかりにアストライトはブーメランをセドナに投げつけた。
「我は無手ではないぞ。武器ならある」
彼女は髪飾りを抜くと手元で遊ばせた。
すると髪飾りはその姿を一本の槍へと変じた。
「このっ!」
アストライトは手元に戻ってきたブーメランをしまってブレードトンファーを取り出す。
迫る槍を撃ち返した。
反動をそのままにセドナの手元を軸に槍はぐるんと半回転する。
柄の先が彼の方へと向けられた。柄の部分から幾重にも連なって針が飛び出した。
「うおおおおっ!?」
ガッ、ガッ、ガキンッ、と続けざまに針を殴る。
刃と針とがぶつかりあって重い金属音が響いた。
(この程度の腕ならば押し切れるな……)
セドナは相対するアストライトを観察しながらそう判断した。
ちらりと瀬乃方へと視線を送る。
「その手袋……何かしらの仕掛けがあるな?」
「ええ、お察しの通りよ」
リカインは答えると天から降り注ぐ雷を掴んだ。
見る間に雷は収束していく。そして消えてしまう。
何も仕掛けはないとでもいうように手のひらを瀬乃に向けた。
そして雷光が迸る。
「――耐えるっ!」
彼の周囲でルーンの刻印が光をともなって現れた。
一種の防御結界のようである。
だが無効化するにはいささか足りなかったようだ。
服の一部が焼け焦げ、皮膚も赤く腫れていた。
「……遅いぜセドナ」
「間に合っただろう?」
その声にリカインは振り返る。
眼前には槍を構えたセドナの姿があった。
(こんなに早く片が付くなんて――)
彼女は倒れているアストライトを見た。
なにかジェスチャーをしているが……あとは任せたとでも言っているようである。
リカインはセドナの強襲を防ぐも瀬乃との連携を防ぎ切ることはできず、そのまま押し切られてしまう。
馬場曰く『パートナーの腕の差が出た』とのことであった。
■
試合は続いた。
駒を進めた青葉たちと綾原たちの戦いは相手の出鼻を挫くことで勝敗が決したと言っても良い内容となった。初戦と同様に光学迷彩による奇襲を行う青葉であったが、試合のペースを掴む大事な一撃は綾原の感覚の鋭さによって防がれてしまう。音と気配まで消せないのが難点だったと言えようか。
さらに山野と銃撃戦を繰り広げていたアデリーヌの手によって青葉の光学迷彩が無効化されてしまい、試合のペースが崩されたまま青葉たちは徐々に追い込まれてしまう。銭投げでかく乱を狙うも序盤での疲労が最後まで尾を引き、体力の高さでそれを補うも焼け石に水であった。
善戦はできたものの純粋に技で押し切られた形で幕を下ろした。
■
ハツネたちと瀬乃たちによる試合。
初手は大石とセドナによる近接戦闘が見物となった。
刀と槍による接近戦。地力で劣っていると判断した大石は持ち前の技の切れで勝負に挑むがセドナは力でそれをねじ伏せるように戦いを進める。二人の戦いは徐々に攻守が分かれ、大石は受けの一手へと回ってしまうことになる。
対してハツネと瀬乃の戦いは逆にハツネが優勢であった。
フラワシの特性を活かした奇襲が功を制したと言えた。瀬乃がセドナの下へ駆けつけないように氷の壁や得意の移動術でそれを防ぎつつ、フラワシによるかく乱。鎖による攻撃とその戦闘方法は多種多様だ。
だがそれも長くは続かない。
大石がセドナに押し切られる形で倒れると二体一という戦いへと移った。
さすがに対処がしきれずハツネは純粋に力でねじ伏せられることとなる。
不満そうな顔のまま倒れる二人の姿は印象的であった。
■
ペア部門の決勝戦は瀬乃たちと綾原たちとの試合となった。
試合の優勢を決める最初の一撃。
セドナと綾原がぶつかり合うことになったがその差は歴然だった。
勢いよく弾かれて後退を余儀なくされた綾原が終始防御に徹することになる。
アデリーヌがすぐに駆けつけて二体一で押し返そうとするが、そこは瀬乃の支援により連携が防がれてしまう。雷によるかく乱は思う以上に効果的だったようだ。
連携が失敗し、ペースが狂ったところをセドナに狙われ、綾原とアデリーヌは攻撃手段を失ってしまう。そのまま二人に押し切られる形で綾原たちは前線むなしく敗北を喫した。
こうして武道大会は無事、終わりを迎えることになった。