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【第十一話】最終局面へのカウントダウン、【第十二話(最終話)】この蒼空に生きる命のために

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【第十一話】最終局面へのカウントダウン、【第十二話(最終話)】この蒼空に生きる命のために

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 ――突然、暖かな光がその場を包み込んだ。
 そして、更に目の前に広がる不思議な風景に迅竜機甲師団は息を呑む。
 
 核攻撃を受けたパラミタの景色、それらに蜘蛛の巣状の線が広がる。
 次の瞬間、なんと風景が甲高く済んだ音を立てて『割れた』のだ。
 
『危ないところだったな』
『ええ。スミスは悪魔ですからね、人心を操るのは十八番でしょう。ですが、ウォーレンと私、そして歌菜さんがいる限り、その手は通じませんよ』
 ウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)ジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)が言う。
『こちら迅竜! 艦体、パラミタともに異常なし!』
 清 時尭(せい・ときあき)からの通信も入る。
 
『な、なにが……! いったい……! ――は……っ!』
 珍しくうろたえたところを見せるスミスは、眼前の光景を見て事情を理解する。
 
 今まさに一人の少女が機体の乗り換えを行っていた。
 念動力によるフィールドで自分を包み、こころが“ツァオベラー・ザルバイ”へと乗り込む。
 
 先程、スミスが幻を見せた時。
 正確にはその直前、念動フィールドに守られた歌菜が、戦場で戦う心竜へと乗り込んでいたのだ。
 歌菜、次いで“ツァオベラー・ザルバイ”から乗り移った羽純もウォーレン達に合流。
 四人を乗せ、フルメンバーとなった心竜は歌菜の想いの力を光として発し、スミスの術を打ち破ったのだった。
 
 そして心竜は漆黒の“ツァオベラー”とともに、再び想いの光を放つ。
 想いの光の力でグリューヴルムヒェンの周囲に展開するシルベルタイプの動きが一斉に鈍ったのを逃さず、ウォーレンが叫ぶ。
『今だ! 迅竜、艦砲射撃を!』
 
 間髪入れず放たれる迅竜からの艦砲射撃。
 本来ならば、“ツァオベラー”の特徴を持つグリューヴルムヒェンやその周囲に控えるシルベルタイプには傷もろくにつけられないだろう。
 
 だが、心竜に搭載された『異能者の筆』漆黒の“ツァオベラー”に搭載された『サイオニック・エフェクト』。
 二つの機能により、敵機の超能力による防御壁は無効化されている。
 ゆえに、シルベルタイプは直撃を受けて次々に大破。
 グリューヴルムヒェンも甚大なダメージを受ける。
 
 迅竜からの攻撃を前に直撃を許し、グリューヴルムヒェンの五つ目の変型パターンも沈黙する。
 
『くっ! 私によって与えられた力で好き放題……少々、悪戯が過ぎますよ!』
 怒りを垣間見せながらスミスは、グリューヴルムヒェンを新たな形態へと変化させる。
 新たな姿は六つ目の変型パターン。即ち、“シュピンネ”だ。
 
 だが、その姿になった直後。
 すぐに異変は訪れた。
 
『な、なぜだ! いったい……なにが!』
 うろたえるスミスに向けて、彩羽が声をかける。
『その装備なら、既に使えなくしておいたわ』
『馬鹿な! 彩羽さん、あなたがいかに優れたハッカーであり、その“シュピンネ”が優れた電子戦機であろうと、たった一人と一機では――』
『ええ。確かに私はウィザード級ハッカー。そして“シュピンネ”は本当に優秀な機体よ。けど、貴方の言う通り、それだけだったら貴方の機体を掌握できたかどうかはわからない。けど――』
 そこで一泊のを間を置き、彩羽は言葉を継ぐ。
『――今の私は一人じゃないもの』
 その言葉に合いの手を入れたのはダリルだ。
『まったく、まさかお前と協力し合うことになるとはな』
『助かったわ。“シュピンネ”の形態になった時なら電子戦をしかける余地はある。そう予想したけど、どうやら正解だったようね』