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そして、蒼空のフロンティアへ

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そして、蒼空のフロンティアへ
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リアクション

    ★    ★    ★

 新幹線の別の車両には、新婚旅行にでかける坂下鹿次郎とエメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)夫妻が乗っていました。
「新婚旅行は日光だよ、マイハニー♪」
 もうラブラブな坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)は幸せ一杯でした。
「うむ、うるさい。はた迷惑なものだ」
 少し離れた席に座っていた土方 歳三(ひじかた・としぞう)が、軽く顔を顰めました。
 今度騒いだら、いちゃらぶな絵をスケッチして全世界に晒してやるぞと考えながら、土方歳三はルーブル美術館での個展のスケジュールの確認に戻りました。

    ★    ★    ★

「きゃー、あれよ、あれ!」
「待って、乗ります、乗ります!」
 もうじき新幹線が発車する時刻になって、大きな旅行用ケースをガラガラと引きずった桜花 舞(おうか・まい)赤城 静(あかぎ・しずか)が走ってきました。
 ぎりぎりで新幹線の車内に滑り込みます。
「危なかったあ」
 自分たちの指定席を見つけて座ると、やっと落ち着いたと桜花舞が大きく深呼吸しました。
「その大荷物どうしたの?」
 旅行用ケースの他に大きなバッグを持ってきた桜花舞に、赤城静が不思議そうに訊ねました。
「ああ、これはお土産。ちょっとたくさん買いすぎちゃって」
「大変でしょ。半分持つ?」
「ありがと。助かるわ」
 赤城静の申し出に、桜花舞が素直に甘えました。予備のバッグはありますので、さっそくお土産を二つに分け始めます。
 それにしても、パラミタ特産の野菜やら、お菓子やら、怪しい民芸品やら、まあ、いろいろ出てきます。
 仲良くそれを二つに分けると、やっと落ち着きました。
「舞の実家と日本に行くの、楽しみだわ。だって、私、シャンバラから出たことないんだもの」
 ニコニコしながら、赤城静が言いました。
「ねえ、そこってどんな所なの?」
「うーん、呉っていう町でね……」
 赤城静に聞かれて、桜花舞が自分の故郷の説明をしていきました。昔から海軍関係の港があった町ですが、パラミタしか知らない赤城静にちゃんと説明するのはちょっと大変です。まあ、実際に着いてからいろいろと案内した方が早いかもしれません。今は期待だけしてもらうこととしましょう。
「ねえ、舞は、どうして軍人になったの?」
「どうしてかなあ……」
 赤城静に聞かれて、桜花舞が、んーっと考え込みました。もしかして、何も考えずにシャンバラ教導団に入学したのでしょうか。
「なんてね。お給料もらえるから学費の心配がなかったからってのもあるんだけど、そのうちにしたいことも見つかって、女性でも頑張れば何かになれるかな……って。それに、静にも会えたし、好きな人もできたし……」
 もう、何を言わせるのと、桜花舞が軽く赤城静を叩きました。
「パラミタに来てよかった?」
「もちろん。それに、あなたも大好きよ、静」
 桜花舞が即答してうなずきます。
 そんな仲のいい友達同士のおしゃべりを続けていると、車内販売が回ってきました。パラミタのお弁当や、これから着く東京のお弁当などがあります。
 仲良く焼き肉弁当を頼むと、ついでに人形焼きもデザート代わりに買い込みます。
「それで、そこの見所はね……」
 お弁当を食べながら、桜花舞は赤城静の質問に答え続けていきました。
 様々な人々を乗せて、新幹線はじきに東京に着きます。


夢の中へ



 空京公園の、日当たりのいい芝生の上、人の姿をしたスープ・ストーン(すーぷ・すとーん)が、キツネの姿をしたゴン・ゴルゴンゾーラを枕にして寝ていました。
 陽射しはポカポカしていて、お昼寝にはもってこいです。
「うーん、おねーさーん……」
「もうこれで、物語がいつ終わってもいい覚悟……」
 なんだか、二人して、いい夢を見ているようです。
『はーい、スープちゃーん、こっちですよー』
 巫女服姿のテンコ・タレイヤが、たっゆんにスープ・ストーンの顔を押しつけて、艶めいた声で言いました。
『だめですよお、スープちゃんは、私の物ですよお』
 ぽっちゃりとしたタイモ・クレイオが、テンコ・タレイヤからスープ・ストーンを奪って、自分のたっゆんに押しつけようとします。
『ああ、二人共喧嘩しないで。順番、順番でござるよお』
 デレデレの顔で、スープ・ストーンが言いました。
『ああ、いい匂いでござるう。なんだか、ほんのり、チーズのような……。むむ、チーズ臭い、これは、ゴルゴンゾーラの臭いでござるか。ゴルゴンゾーラ、臭い……』
「いてててて……」
 いきなり首を絞められて、スープ・ストーンが目を覚ましました。
 見ると、スープ・ストーンのよだれでべとべとにされたゴン・ゴルゴンゾーラが、人間の姿になってスープ・ストーンを締めています。
「し、死ぬでござる。や、やめ!」
「ええい、人をべちょべちょにしおって。スープにしてやる!」
 そのままもみ合っているうちに、コロコロと芝生を転がって、二人共池に落ちてしまいました。なんとも、名は禍を呼ぶものです。