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そして、蒼空のフロンティアへ

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そして、蒼空のフロンティアへ
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空京大学へ



「ふーん、さすがに、大学は高校とは違うわね。何もかも、大きかったり、専門的だったり……」
 エルサーラ サイジャリー(えるさーら・さいじゃりー)は、 ペシェ・アルカウス(ぺしぇ・あるかうす)と一緒に、空京大学のキャンパスを見学していました。
 来年には蒼空学園を卒業する二人は、揃って空京大学に入学することになっています。
 実家から厄介払いされる形で百合園女学院に入学したエルサーラ・サイジャリーですが、エリュシオン帝国によってシャンバラが東西に分割されたときに、蒼空学園へと転校して疎開しました。帝国にいては、地球へ戻れなくなるかもしれないと思ったからです。
 最初から不良として百合園女学院へと入学し、族のヘッドにまでなってしまっていたエルサーラ・サイジャリーでしたが、蒼空学園への転校によってある程度初期化された交友関係のおかげで、不良仲間以外の友達もできました。そこで意識改革したエルサーラ・サイジャリーは、はみ出し者たちのためのセンコーがいてもいいのではないかという考えを持ち、教職免許を取るために空京大学の教育学部への進学を決めたのです。
 ペシェ・アルカウスは、農学部を専攻しました。好きな野菜を思いっきり作りたいという理由です。
 無事、二人とも入学試験に合格したので、ちゃんとキャンパスを見学しようと思ってやってきたわけですが、入学試験のときにちょっと見たのと、今回のようにじっくり見たのとでは印象もかなり違います。
 だいたいにして、高校のときのような自分たちの教室という物が見あたりません。ほとんどすべてが専門教室で、一般課程の授業などは、でっかい講堂で行われます。逆に、学年が進むと専門課程は少人数のゼミ単位になるようです。
 それぞれの課程では、高校では写真でしか見られなかったような機械も実際に使って授業を行うようです。
「はあ、見て回るだけでも、一日がかりね」
「本当に、一日でたりるのですか? ボクは畑とかも見たいです」
「畑ねえ……。実験農場とか、プラントみたいのがあるみたいだけど、あっちかなあ」
 パンフレットの地図を見つつ歩いていると、キョロキョロしすぎて不審がられたのか、教授らしき人に声をかけられてしまいました。
「君たちは、どこの学部の何年生かね」
 アクリト・シーカー(あくりと・しーかー)が、まだ大学生っぽくないエルサーラ・サイジャリーペシェ・アルカウスを上から下まで眺めました。ちょっとしどろもどろに、二人が見学だと説明します。
「来期の新入生か。見学とは感心だな。ぜひ向上心を養ってくれたまえ。プラントやイコン試験場などの広域施設はあちらだ。不審がられたら、これを見せて通してもらうといい」
 そう言うと、アクリト・シーカーが、自分の名刺に「この二名は来期新入生。見学者」と走り書きして渡してくれました。
「ありがとうございますですー」
 ペシェ・アルカウスが、しっかりと名刺をいただきます。エルサーラ・サイジャリーに持たせたら、なくしそうなので、先に手を出したのでした。
「意外と、自由な気質だね」
 親切にされたので、気分よくエルサーラ・サイジャリーが案内された方向に歩きだしました。
 でっかい畑に辿り着くかと思ったのですが、何やら重厚な倉庫のような所に辿り着きます。
「ええと、ここは……、イコン基地? とりあえず入ってみよっか」
「はーい」
 せっかく来たのだから、見ないで通りすぎるのもなんです。エルサーラ・サイジャリーたちは建物の中に入っていきました。
 中には、整備中のアグニ、アルジェナ、パールヴァティーなどがメンテナンスハンガーに固定されていたり、パーツ分解されて整備されていたりしました。
「そこの者、パイロットスーツや整備服以外で立ち入るとは、普段何を学んでおる!」
 いきなり頭上から大音声で叱られて、二人は耳を塞ぎながら上を見あげました。
 居ならぶイコンの間に、それと同じくらい大きなドラゴンがいます。
「すいません、見学ですー」
 ペシェ・アルカウスが、先ほどアクリト・シーカーからもらった名刺をドラゴンに見せました。
「ふむ。来期の新入生(仮)か。よろしい、見学を許可しよう。ワタシが、本学長のティフォンだ」
 嵐を起こすもの ティフォン(あらしをおこすもの・てぃふぉん)が名乗りました。いきなり、空京大学学長、ラスボスの登場です。
「ティフォン学長先生は、どんなお野菜が好きですかあー? トラックぐらいのトマトとかあったら好き?」
 あまり物怖じせずに、ペシェ・アルカウスがティフォンに訊ねました。
「ううむ、そうだな……」
 なんだか変なペシェ・アルカウスの質問にも、真面目に考えるティフォンです。
「そんな大きさの野菜なんて聞いたこともないわよ」
 呆れて、エルサーラ・サイジャリーがツッコミます。
「えー、でもでもおっきいと、みんなで食べられるもん。ボクはそういうトマトとか作りたいなあ」
「はっはっはっ、それはいい!」
 突然の笑い声に吹っ飛ばされそうになり、エルサーラ・サイジャリーがペシェ・アルカウスのしっぽを掴んで、慌ててその場に踏ん張りました。あっけなく吹っ飛ばされなかったのはさすがです。
「いいだろう。おっきなトマトを食べられるのを楽しみにしておこう。トマトは、ワタシも好きだ」
 豪快に笑いながら、ティフォンが言いました。
「そんなワケで、新入生なったら、よろしく頼むわ校長先生」
 エルサーラ・サイジャリーが、そうあらためて挨拶をしました。