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第4章 戦いの意味

「飛兵を抑える。その間に人型隊は増援隊援護へ!」
 試作機02隊は回り込んで、国軍増援部隊と合流を果たす。
 ドラゴン型試作機小隊の小隊長である輪廻が指示を出し、ドラゴン型試作機の射撃攻撃が開始される。
「了解。狙いを定めるでござる!」
「この機体は固まってると能力が活かせないよね! 操縦は任せて」
 明日葉が指揮官である龍騎士を確認。狙いを定めていき、真理が操縦桿を操る。
「こちらは任せる」
 輪廻の方針もあり、離れすぎず、しかし固まらずに攻撃を仕掛けることになる。
 輪廻自身は、反対側――敵を挟み込める位置へと移動していく。
「速い速いー! でも、楽しんでばかりいられないよね。未羅ちゃん行くよっ」
「うん、撃つの」
 未沙はワイバーン、ドラゴンの気を引くよう飛び回り、未羅が銃を撃っていく。
 弾はドラゴンの鱗には弾かれてしまうが、ワイバーンには着実にダメージを与えていく。
「爆薬積んでるから、敵の攻撃は一撃だって受けられないよ! でも、僕らはイコンの戦闘経験は他校の生徒より長いんだ! 『歴戦の立ち回り』ってやつを見せてやろうな、フェル!」
「うん。状況は圧倒的に不利……でも、これ位切り抜けなきゃ!」
 リオは通信機に注意を払いながら、敵の様子を探りレーダに集中。
 フェルクレールトは、巧みにイコンを操り、敵の目を引きつけていく。
「中距離攻撃行くわよ!」
 人型試作機小隊の小隊長である紗姫が、前線に立つ国軍イコンの後方につく。
「ワイバーンとドラゴンを狙うわ。龍騎士の魔法攻撃と、前線のイコンの射撃に注意して!」
「レーダーをちゃんと見ないとねぇ〜。いくよぉ〜」
 紗姫は敵の攻撃を避けながら、上空のワイバーンを狙い、シェスが銃を撃つ。
「了解。戦闘データがきちんと取れるよう、回避を重視して戦うぞ」
「バックアップを自分等でとることはできなそうじゃが、生還すればこの頭の中に記録を残せるしのぉ」
 真司は、行動予測の能力で敵の行動を予測し、回避に努める。
 アレーティアは、真司からの連絡はほぼテレパシーで受け、セルフモニタリングで自身の状態をコントロールしながら、レーダー、目視で周囲の状況把握に努める。
「えっと……こちら『アリスドール』、これより要塞守備戦に加勢します……!」
 有栖はそう通信を入れた後、操縦桿を握る手に力を込める。
「試作とはいえ流石は新型。なかなかの性能のようですわね。この技術、是非とも今後の開発に活かして、ヴァイシャリー、百合園にも新型機を導入していただきたいものですわ」
 ミルフィは照準を合わせながらそう言う。
 顔を合わせる余裕はないけれど、心の中で有栖に微笑みかけながらこう続ける。
「その為にも、わたくし達もデータ収集に協力いたしましょうね、お嬢様」
「はい……! シャンバラの為に、少しでも戦力を……!」
 ミルフィの言葉に強く頷いて、有栖は実戦の中へと飛び込んでいく。
「攪乱は任せろ!」
 鬼羅は地上には下りず、敵飛兵部隊の方へとつっこんでいく。
「勝手な行動は許可しません!」
「やることはちゃんとやる。皆が狙いやすいようにしてやるだけだ。危なくなったらどうすりゃいいのかも、心得てるぜ!」
 すぐに紗姫は止めるが、鬼羅の行動方針は変わらないようだ。
「わかりました。皆、彼を援護するわよ。ドラゴン隊も合わせて!」
 紗姫の言葉に「了解」と隊員達から声が上がる。
「さぁさぁさぁ!! 遠からん者は音にも聞け! 近くば寄って目にも見よ! オレの名は天空寺鬼羅だ!」
 鬼羅は銃を乱射しながら、飛兵隊に向かっていく。
「てめぇらまとめてかかってきやがれ!! オレの覇道の踏み台にしてくれるぜ!!」
「散れ」
 龍騎士が従龍騎士に命じる。
 飛兵隊が夜空に広がっていく。
 月明かりと照明の明かりはあるものの、ビームサーベルを持ち、稼働音を立ているイコンより、龍騎士団の飛竜の方が見えにくかった。
「雑魚は任せる。龍騎士だけ見えればいい! ってかオレは強い奴と戦いてぇ!!」
 鬼羅は飛び回り、敵を攪乱しながら隊長と思われる龍騎士に向かっていく。
「地上からミサイル接近、避けるでぇ!」
 パートナーのリョーシカが、地上からの攻撃に気づき、加速する。
「地上の敵もまとめてやっつけてやるぜ!」
「鬼羅ちゃん、気持ちは分かる。けど、龍騎士に集中せなあかんでぇ! つようなりたいんやろ? 強敵を倒して、いいとこ魅せなな!」
「そうだな、まずは龍騎士だ! 下の雑魚も頼んだぜ!」
 そう通信をして鬼羅は再び龍騎士に向う。
「確実に仕留めましょう」
「こちらは任せて! 抑えるわよ」
 答えたのは、教導団の援軍に加わり訪れたエシク・ジョーザローザマリアだ。
 生身で戦っていたパートナー達は休息を取っているが、彼女はまだイコンを駆使して戦っていた。
 交代できるイコンはもうほとんどいない。
 だが、試作機の援軍が訪れたお蔭で、少しだけ希望が見えてきた。
 勝利は無理でも、一時撤退をさせることは可能かもしれない、と。
 ローザマリアは残っている地上部隊と共に、ヴァラヌスを集中攻撃。空中を狙わせる時間を与えない。
「ありがとなー。周りの従龍騎士はドラゴン隊にお任せや。人型隊は援護頼むで、みんな、なんばろうな!!」
 リョーシカが通信機に向かって言う。
「了解。周りのワイバーンを撃ち落とすぞ」
 ドラゴン隊は従龍騎士とワイバーンを狙い、攻撃を開始する。
「機動力を最大限に活かすぞ!」
 敵が隊列を作れないように、動き回って気を引いていき、ミサイルで攻撃。
「わわわ、揺れる揺れる」
 サポートをしているアリスは、荒い操縦に目を回しそうだった。
「落ちるなよ」
 言いながら輪廻はワイバーンの翼を、背を――騎乗する従龍騎士を撃ち落としていく。
「ワイバーンよりずっと速いね。距離を取っていれば、十分回避できる」
「大丈夫なの」
 未沙と未羅は距離を取って銃を乱射。近づいてきた従龍騎士のみ、狙い撃ちして落す。
「引きつけるでござる」
「生身じゃ敵わない相手だけど、ボクでも十分戦える!」
 明日葉と真理は、ワイバーンの傍まで飛び、すぐに離脱。
 追ってきたワイバーンを銃で撃破。
「よし、弾幕を張れ」
「うん、行くよー!」
「今だ、変態! 大口叩いたんだから、やってみせろよ」
 フェルクレールトがリオの指示に従い弾幕援護で、飛兵の視界を奪う。
 リオは通信機で鬼羅に合図を出した。
 任せろと、言った後、鬼羅はビームサーベルを龍騎士に叩き込んでいく。
 右腕には銃を持ち、乱射を始め、翼を広げて飛び回り斬って斬って斬りまくる。
「防御を忘れないで。自分の力を過信したらダメよ」
「皆離れすぎないでねぇ〜。味方から孤立だけはしないようにしないと、す〜ぐに落されちゃうじぇ〜?」

 紗姫は自分にも言い聞かせるように言いながら、距離を取り銃で鬼羅を援護。
 シェスは仲間に離れすぎないよう言いながら、周囲に注意を払っている。
「そこ、危ない……っ!」
 有栖が龍騎士の槍を銃で撃ち落とした。
「お嬢様、見事です」
「ええ、ミルフィ。でも龍騎士は簡単には倒せません……。油断せずに行きましょう」
 有栖は鬼羅が巻き添えにならないよう注意を払いながら銃で援護していく。
「しかし、あの変態……戦闘センスは悪くないよな」
「無駄死ににはならんようじゃの」
 真司とアレーティアは冷静に援護をする。
「危険な行為だけど、いいデータがとれそうだ」
 真司はミサイルで、近づく従龍騎士の行く手を阻む。
 鬼羅は天学で変態として有名だ。今日もスーツが煩わしいとか言いだし、全裸でイコンに乗ろうとしたが止められたくらいの変態学生だ。
 でも、パイロットとしての実力は変態レベルとは関係がないようだ。
「あーっはっはっはっは!! さぁさぁ! 踊れ踊れ! 新型よぉおお!! てめぇの実力をオレに見せ付けてみやがれぇ!!!」
 狂ったように言いがなら、鬼羅はドラゴンと龍騎士を攻撃し続ける。
 ……気づけば、龍騎士の反撃により鬼羅の機体はボロボロになっていた。
 しかし、鬼羅は3人の龍騎士を打倒したのだった。
 無論、仲間との連携の成果だ。

○     ○     ○


 試作機01隊は、帝国第七騎士団の後方に直進していた。
「お? あれパラ実の奴らじゃねぇか? 俺に任せてくれ」
 モニターに映し出された不良達の姿を見て、和希が低空飛行に切り替え、パラ実生と思われる集団に近づいた。
 彼らは帝国の補給基地の側から、龍騎士団に攻撃をしかけている。
「ん? 竜司じゃないか、何やってんだ。龍騎士相手に生身じゃ勝てないぜ。ここは俺達に任せろ」
「おう、そろそろ退こうと思ってたところだぜ。……お前ら、生徒会長が全責任を負ってくれるってよォ、あとは高みの見物といこうぜェ!」
 そう叫ぶ竜司は満身創痍だった。
 付近には龍騎士の姿もある。
「なんだイコンに乗ってんのかァ。美味しいところ持っていきやがって、カイチョーは汚ねぇぜ〜」
 そんな事を言うパラ実生達もみなボロボロで、もう戦える状態ではなかった。
「悪ぃな! 下がってろよー」
「仕方ねぇな、退くぞてめぇら!」
 竜司が大声を上げ、パラ実生達は一斉に退却していく。
 皆が退くまで残っていた竜司は和希に一言「頼んだぜ」と言葉を残して、去っていく。
「ああ、任せとけ」
 言って、和希は状況を確認していく。
 基地に残っている騎士団員は火災の対応に追われている。
 しかし、数名の龍騎士、従竜騎士はこちらの存在に気づき、隊列を組んでこちらへと向かってくる。
「ドラゴンは2匹、なんとかなるか」
 和希、そして降下してきた他のドラゴン型パイロットが思った直後。
「……うっ!?」
 上昇しようとしたが、和希の機体が上がらない。
 仲間の機体もスピードが緩まり、ゆっくりと地上へと向かってくる。
「……な、んか、すごい……重力、を……感じる」
 和希達は言葉もまともに出せないほどの圧迫感を受けていた。
『01のドラゴン隊は射撃で敵の接近を阻め。人型隊の方は側面から回り込め』
 通信で状況を察知したクレアが、特殊機を含む01隊に指示を出す。
「初めて見る機体だな」
 風格のある龍騎士がドラゴン型試作機の前に現れた。
 この重力魔法の使い手のようだ。
「攻撃、開始」
 呼雪が指示を出し、銃を撃つが、狙いが上手く定まらない。
「厄介な相手のようだな……」
 クリストファーは軽く顔をしかめる。
「……撃つよ」
 クリスティーは、クリストファーが自身の立場を明かして、投降したりしないだろうかと、気にしながらミサイルを発射する。
 しかし、そのミサイルも敵には届かず、落下してしまう。
「どうにか、なんないか?」
「とにかく今出来ることは、敵が近づけないよう、攻撃を続けることだけ」
 自分の後ろに乗るシリウスに、サビクはそう答えて、銃とミサイルを撃っていく。
 補給基地に配備されていた敵イコンからの攻撃も、こちらへと向かってくる。
 上手く躱す事が出来ず、機体は少しずつ傷ついていく。