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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第八章 そして、誰もいなくなった家 3

「ん〜……あんまり、面白いものってないわね〜」
 そう言って、ラブ・リトル(らぶ・りとる)は少し不満げな顔をした。
 何か面白いものの一つや二つは転がっているだろう、と思って家の中をあちこち飛び回ってはみたのだが、特に変哲もない家具と、得体の知れない壊れた機械くらいしか見当たらなかったのである。
「特に危なくないなら、外も行ってみようかしら……でも、やっぱり何かないとも限らないし」
 行くか、やめるか、ラブが悩んでいると、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がぽつりとこう言った。
「行っても、多分ほとんど何もないですよ」
「え?」
「少なくとも財宝の類はほとんどなさそうです。せいぜいこのくらいでしょう」
 そう言いながら、懐から地味な指輪を取り出す。
「隣の部屋の隅、落ちてたんで拾ってきました。さほど価値のあるものとは思えませんが」
 実を言うと、唯斗をはじめ「トレジャーセンス」の持ち主は決して少なくない。
 けれども、そのうちの誰一人として、この階層に財宝があるというはっきりした反応は感知できていなかったのだ。
「……それじゃ、『ギフト』って何なのよ?」
 不思議そうな顔で指輪を返すラブに、唯斗は首を横に振った。
「俺にもさっぱり。普通の財宝の類じゃない、ってことだけですね、わかるのは」

「しかし、生活の跡すらほとんど残ってない、ってのはな」
 アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)は一つ大きなため息をついた。
 彼が探索していたのはキッチンであり、一番何らかの痕跡が残りやすい場所の一つである。
「おまけに酒の一つもないときた、と。ニルヴァーナの酒なんてのがありゃ、ぜひ試してみたかったんだがなぁ」
 そんなことをぼやいていると、ふわりと真横に空飛ぶマンボウが漂ってきた。
 見た目はどこからどう見ても単なる空飛ぶマンボウなのだが、単なる出オチ担当ではなく、これでもれっきとした守護天使である。
 そんな彼の名は、ウーマ・ンボー(うーま・んぼー)……って、やっぱり出オチじゃん!
「何だマンボウ?」
 当然のごとくアキュートからもマンボウ呼ばわりであるが、ウーマももはやその程度のことは慣れ切っているため特に気にしない。
「何だ、ではない。仕事中にまた酒の話など」
「そう言ったってな。食ったら、次は飲みたくなる。普通そうだろ」
「自分と一緒にするな、アキュート。皆が皆そうではない」
 渋い声で正論を語るウーマ。中身はこれ以上ないくらいにシリアスなだけに、見た目とのギャップが実に惜しい……もしくは、実においしい。
「そんなもんかねぇ」
 少し不満そうなアキュートに、ウーマはきっぱりとこう言った。
「そういうものだ。現に、それがしがそうだからな」
「お前と一緒にするなこのマンボウ!!」
 ……かくして、出オチではなく、きっちりちゃんとしたオチがついたのであった。

「それにしても、どうしてこの階層には軟体生物がいないんだろうな」
 不思議そうに呟いたのはエースである。
 確かに、明らかに空気が違う感じはあったが、それは軟体動物がいないことの結果であって、原因ではないように感じられる。
「君もそう思うかい? 『ギフト』には一切手を触れず、その手前で訪れるものを妨害する存在……これじゃ、まるで守護者か何かだよ」
 そんな風に応じながら、天音は心の中でもう一言つけ加えた。
 そうであってくれたら、どんなによかったか、と。
 先ほどの「カマかけ」の結果を信用するならば、まだこの先には高確率で何らかの危険が待ち受けている、ということになる。
「でも、本当の『守護者』は別にいる、とかしそうだよね」
 話に乗ってきたのはカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
「だって、やっぱり軟体生物がこの階層にいないのって、超デンジャラスな何かがあって、本能的に近寄って来ない……って感じだし」
「同感です。機械的にも魔法的にも結界らしきものが見当たらない以上、そう解釈するのが一番自然です」
 持参したミニノートパソコンを閉じながら、エオリアが一つため息をつく。
 すると、その横でジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が肩をすくめた。
「その危険な『何か』が守護者だったらまだよかろう。我はもっと厄介なこともありうると思っておる」
 ジュレールのいう「もっと厄介なこと」が何か、それは皆口にせずともわかっていた。
 そして、それが杞憂であることを願ってもいた。
 ――「ギフト」自体が危険物であるとしたら、それをどうしたらいいというのか?

「やはり、何らかの方法で『ギフト』がこの階層を軟体生物から守っているのかもしれませんね」
 一方、こんな結論に達したのは、セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)
「そうだね……そうなると、やっぱり『ファーストクイーン』が作ったものなのかな」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)も、彼女の推理に賛同する。
「あるいは、もしかしたら『熾天使』の関係かもしれないけど……誰かから、ニルヴァーナの人たちへの贈り物、だったのかな」