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リアクション
第八章 そして、誰もいなくなった家 5
「にしても、結局『ギフト』って何なんだろうな?」
結城 奈津(ゆうき・なつ)の言葉に、永倉 八重(ながくら・やえ)は首をひねった。
「具体的に何かはわからないけど、ひょっとしたらそれがこのシェルターが放棄された理由なのかも。クロもああ言ってたし」
さすがにバイクを持ち込むわけにはいかないので今は入り口付近で待機してもらっているが、クロことブラック ゴースト(ぶらっく・ごーすと)は最初からこう言っていた。
「軟体生物共が寄り付かぬということは、奴等よりも上位の捕食者がいる可能性が高い」……と。
しかし、奈津にはやはりまだ疑問があった。
「けどさ、それなら何でそれが『ギフト』なんだ?」
「えっ? なっちゃん、私にそう言われても……」
八重が言葉に詰まると、奈津は何やら難しい顔で考え始め……。
「ギフトぎふと……はっ、岐阜人!?」
何やら、おかしなことに思い至ったようである。
「解ったぜ! 岐阜人ってのは岐阜県民の中に眠っていた力を呼び覚ますための鍵だったんだ!」
口に出すまでは、なかなかの思いつきだと思ったのかもしれないが……実際に口から出たそれは、辺りを凍りつかせる魔法に変わった。
「……え、ええと……?」
笑うべきか、呆れるべきか、それともどうするべきか。
反応に困って、八重が微妙な表情のまま固まる。
そしてもちろん、奈津の師匠であるミスター バロン(みすたー・ばろん)は、腕を組んだまま、完全に今の発言を「聞かなかったこと」にしていた。
「……ご、ごめん! 師匠にシカトされるのは慣れてるけど、八重にまでそんな顔されるのは耐えられないー!」
人間、思っても口に出してはいけないこともたくさんある。
それを身をもって学んで、奈津はまた一つ賢くなったのであった。
「このシェルターは……どうして、無人となったのでしょうね」
戸棚の上に積もった埃を見ながら、鈴鹿はふとそんなことを思った。
シェルターは無人化してからかなり長い年月が経っているらしく、食料やエネルギーに該当するものもほとんど残ってはいなかった。
また、地下二階の様子から察するに、このシェルターは……もしかしたら、軟体生物襲来よりも早く放棄されていたのではないか、という可能性すらある。
「機晶技術にしても、現在のものとはレベルが違う。このわらわの知識をもってしても、一つとして起動させられぬとはの」
織部 イル(おりべ・いる)が小さくため息をつく。
「せめて、どなたかお一人でもご無事な方がいらっしゃれば……そして、その手がかりがつかめれば、と思ったのですが……」
あのたいむちゃんの涙を思い出し、悲しげな表情を浮かべる鈴鹿。
そんな彼女に、イルは励ますようにこう言った。
「そのためにも、今はまず『ギフト』とやらを確保せねばならぬ。少なくとも、あのゲルバッキーにとってはそれなりに有益なもののようじゃからな」
――と。
そうして、各人が思い思いに休憩時間を過ごし、いよいよ捜索に移ろうか、と思った矢先。
「……爆音!?」
司をはじめ、「超感覚」の持ち主たちが、外から――それも、この地下三階のどこかからの爆音を耳にした。
「誰かが戦っている!?」
「でも誰が、誰と!?」
「そこまでわかるか!!」
何にしても、放置しておくわけにはいかない。
そう感じて、一同は一斉に表へ飛び出し、爆音のした方へと駆け出した。
そんな一行のやや左側を、突然、一条の光線が通過した。
「!?」
かなりのエネルギーを持ったそれは、そのままシェルターの奥の壁に直撃し、辺りの空気を揺らした。
ことここに至って、皆が考えていたことは、ほぼ同じだった。
――まさか、今のが「ギフト」じゃないだろうな?