リアクション
* * * * * * * * * * まっすぐに輸送車へと向かってくる。狙いは荷物にある食料なのか、それとも別の理由があるのか分からないが。レッドタイフーンがこのままのスピードで突き進めば、輸送車など簡単に壊されてしまうのは確実だった。 「竜退治には飽き飽きしていたところだ!」 賞金首であるレッドタイフーンを狙っていた十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が飛び出した。真正面から受け止めることはせず、剣でレッドタイフーンの横っつらを叩いて針路をそらす。 「君には悪いけど、倒させてもらうよ」 理沙がレッドタイフーンに謝罪しながら、宵一の攻撃で一瞬動きを止めたレッドタイフーンに攻撃を……がちゃんと背の火炎放射器が動いて理沙に向けられる。 「え?」 「理沙!」 彼女の名を叫んだカイルが間へと身体を投げ出し――爆風がカイルの髪と服を揺らした。柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の放ったバズーカがレッドタイフーンの攻撃を相殺したのだ。 近くで爆撃を浴びたはずのレッドタイフーンだったが、まるでダメージはないようだった。恭也のもとへと突撃していく。 「ちっ! さすがにあれだけじゃ無理か。賞金首になるだけのことはありやがる」 軍用バイクに乗っている恭也は、ジグザグに走りながらレッドタイフーンから目を離さない。身を乗り出しかねない彼に 「主、自重して下さい」 サイドカーから運転の補助をしながらエグゼリカ・メレティ(えぐぜりか・めれてぃ)が声をかけ、六連ミサイルをレッドタイフーンに向けてぶっ放す。レッドタイフーンをとにかく輸送車に近付けないように動いていた。 2人の目的は賞金首だが、かといって輸送車を傷つけるつもりもないのだ。 「何となくドラム缶を押したくなってきた!」 「その厄介な火炎放射。ふさがせてもらいますわよ」 宵一が何かを言っていたが、ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)は気にせず3対の氷の翼を動かす。狙いは背中の火炎放射器。パキパキと火炎放射器が凍っていく。 「……ぐぉ、おおおおおおおおおおおおおおおっ」 しかしレッドタイフーンは火炎の熱で氷を溶かしてしまう。 「やりますわね。でもまだまだ」 すぐさま魔力で生み出した光の刃をレッドタイフーンの足元へと突き刺し、針路を妨害する。 レッドタイフーンの目が血走る。暴れ方が大きくなる。怒っている。 「リイム様、そちらに行きましたわよ」 「わかったのでふ!」 誘導した方角には、リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が作った小さな落とし穴。もちろん、それだけで倒せる相手とは思っていない。一瞬でも動きを止めるのが狙いだ。 そして狙い通り、一本の足を落し穴につきいれてレッドタイフーンがバランスを崩す。――今! 蹂躙飛空艇に乗った宵一が、レッドタイフーンの背後から奇襲をかける。レッドタイフーンの目が宵一をとらえるが、そのころにはもう懐に入っていた。 (これで決める!) 「危ないでふ、リーダー!」 リイムが叫んだ。機晶キャノンが宵一に向かって放たれる。宵一は攻撃の態勢を無理やり崩して身体をひねる。耳のすぐそばを砲弾が通り過ぎていった。間一髪……いや、まだだ。敵はまだ彼の目前にいる。 「させないでふよ!」 宵一に追撃をかけようとしていたレッドタイフーンにリイムが爆弾を投げて阻止する。レッドタイフーンは追撃を辞めて、爆弾を避ける。 「くらいやがれ!」 恭也が続くように攻撃するが、中々当たらない。 爆風をその速度で次々にかわしていく。 「話に聞いていた通りの強さで安心したぞ」 その避けた瞬間に切りかかったレティシアの刃が、レッドタイフーンの体毛を少しだけ切り取った。確実に身体に当たっていたのだが、まるで金属に当たったような感触が剣から伝わった。 「ふむ。予想よりも固いようだな。……やはり動きを止めて攻撃が最良か。モミジ、サクラ、行くぞ!」 ニャンルーを連れて向かっていくレティシアの頭には、護衛のことがどこかへ飛んでいってしまっている。 「これは随分と大きいイノシシさんですね。 動きも速く、攻防に優れている……それでも輸送車には指一本触れさせませぬ故、お覚悟を」 「しゃーねぇなー、とっとと片付けるぞ」 レティシアの後を追いレッドタイフーンに向かうフレンディス。ベルクはやれやれとため息をついてから、魔法を唱えはじめる。まずは魔法攻撃力を高める。 前衛で動く仲間たちのフォローをしつつ、広い視野で他の敵が来ないかどうかも警戒する。 (強いな。ここで他のやつらがきやがったら、ちとやばいか?) レッドタイフーンの火炎放射をブリザードで相殺し、再び呪文を唱えていく。やばかろうが、戦うしかすべはない。 「こいよ三下、返り討ちだ!」 「……主」 味方が増えたことを確認した恭也が、敵を挑発しながらバズーカを放ち、レッドタイフーンを誘導していく。エグゼリカはそんな彼に呆れつつも、操縦補佐を。そして恭也が誘導した先で待つレティシアや宵一、理沙が攻撃をくわえていく。 「頭を狙うべきだな。モミジ、サクラ、足止めを」」 「むせる」 「輸送車は絶対守ってみせる!」 互いに互いの呼吸を感じ取りつつ、なんとか連携しようとしていた。 ◆ 「あのねぇ、いい案があるんだよ」 と、声を上げたのは咲和だった。その時から陽介は、悪い予感を抱いていた。 「あたし考えるの嫌いですから乗るですよぅ。イノシシが食えたらそれでオッケーでぇす」 意見を聞く前からあっさり賛同する九九。あと1人のパートナークレイは、というとさめざめと泣いている。 「妹がいないなんて……ん? 良い案がある? ここに陽介と立っとけ?」 咲和に声をかけられて良く分からないまま、指示に従う。 「え? トマホーク投げたらいいんですかぁ? まぁ、良いですけ、ど!」 と、九九が斧をレッドタイフーンに向けて投げる。斧は生身の部分に命中したらしく、血が噴き出た。 「ぐるるぁぁぁぁっ」 ギロリ。 鋭すぎる怒りの目が九九――ではなく陽介とクレイに向けられる。 「ふぇ?」 そうしてレッドタイフーンは彼らへ突撃を開始。陽介は後ろに隠れた九九たちのためにも、避けられない! とかなんとかでその場にとどまったが、クレイはあっさり逃亡。 「なぜこっちにっ?」 獣である修正か。下手に動いたクレイを追いかけるレッドタイフーン。あ。轢かれた。 宙を舞うクレイ。……なぜか服が脱げて全裸になっている……良い子のみんなは真似しないように。 「ん? あれは、10代の女? ふ、ふふふ……ふははは! 新しい妹のはっけ」 「えいっ」 「ぐぼばば」 全裸で不気味な笑い声をあげながら空を飛んでいるクレイを、咲和が遠慮なく叩き落とす。 「て、やっぱこっちにも来るか!?」 そしてレッドタイフーンは、というと……陽介の方へと向かっていた。九九が「陽ちゃん、がんばれぇ〜」と遠くから声援を送っている。 「クレイの死(※死んでません)を無駄にしない為にも、俺は逃げない! さぁ、来い! レッドタイぶぉっ」 陽介はその日、見事なお星様になったのであった。 |
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