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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!
目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム! 目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

リアクション

                              ☆


「……ちょっと見ないうちに、趣味がずいぶんと変わったのぅ」
 と、カメリアは目を丸くした。
 残ったクラゲを追ってツァンダの街を仲間と共に進むカメリアは、友人である鬼崎 朔(きざき・さく)に出会ったのだ。
 まあ、それは問題ではない。ツァンダの街に住んでいたこともある朔は、カメリアと街で出会うことはそう珍しいことではない。
 だが、問題はこの夜に朔が着ていた服だ。

 そもそもその日は、朔の妹である花琳・アーティフ・アル・ムンタキム(かりんあーてぃふ・あるむんたきむ)に街を案内しようと、パートナーのブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)月読 ミチル(つきよみ・みちる)と共にツァンダの街を訪れていたのであるが。
 朔にとって不幸だったことは、ゆっくりとホテルのお風呂に入っている間に停電が起こったことだろうか。
 さらに不幸なことは、カリンが気を利かせて朔の服を洗ってしまったことであろうか。
 ついでに不幸なことは、花琳がノリノリで昼間購入した衣服を使って『アーデルハイトなりきりセット』的な何かを作ってしまったことかもしれない。


 というわけで、今夜の朔はアーデルハイト様のコスプレ状態なわけだがその衣装たるや皆様ご存知の通りなワケで。


「……朔よ……色々とつらいこともあろうけれど、強く生きるのじゃぞ……」
 呆然と呟くカメリアに、顔を真っ赤にした朔は叫んだ。
「カ、カメリア! 違う、違うのこれは……!! ちょっとおなかが、そうお腹痛かっただけなの!! ぽんぽんペインだったの!!」
 普段は服で隠して見えないが、朔の左わき腹と背中には大きな刺青がある。花琳が作ったなりきりセットは普通よりも大きめなマントになっているので背中は見えないが、わき腹の刺青は何かの拍子に見えてしまうかもしれない。
 マントの内側で必死にわき腹を隠す朔の様子は、確かにお腹が痛いように見えたかもしれない。

「いや、ぽんペイなら隠しとけ」
 しかし冷静に突っ込むカメリアに、さらに顔を紅潮させた朔は、何かに耐え切れなくなったのだろう、叫びながら走って行ってしまう。

「うわあああぁぁぁ、違うのー、痴女じゃないのーーーっ!!!」

「おい朔、どうせならこれを持って行け!!」
 と、カメリアは後ろから情熱クリスタルを朔に向かって投げる。
「お、おい朔ッチ!! 待てよ!!」
 カリンがその後ろから朔を追いかける。
「……何だったんじゃ」
 後に残されたカメリアが呟くと、そこに花琳がぺこりと頭を下げた。
「あなたがカメリアさんですか? 私、お姉ちゃんの妹の花琳です! 姉がいつもお世話になっています!!」
 その様子に、カメリアは目を細めた。
「おお、朔に妹がおったのか、そういえば家族のこととかは話さぬからのぅ、朔は。……そちらも、朔のパートナーか? カメリアじゃ、よろしくな」
 カメリアは、優しく微笑むミチルに右手を差し出す。ミチルは、ゆっくりとその手を取って握手をした。
「はい。よろしくね、カメリアさん♪」
 朔が走り去って行った後を眺めながら、カメリアはミチルに呟いた。
「のぅ……チラッと見えたが、朔のわき腹……」
 隠しているところを見ると、それを人に見られたくないのだろう、とカメリアは察して何も言わなかったが、走り去る朔の左わき腹の刺青をカメリアは見てしまっていた。
 だが、ミチルはそんなカメリアに微笑み、意外なほど軽く言い放った。
「そうなのよ、せっかく魔女っ子ヒーローの格好も似合ってるんだから、もっと毅然としてればいいのにねぇ」

 うっかり深刻になりかけたカメリアに対して、あまりにも大らかなミチルに、ぷっと軽く吹き出して、カメリアは笑い返した。
「――そうじゃのぅ、朔も色々あるのじゃろうが、そういう風に笑い飛ばせればいいのじゃろうがな」
 そこに花琳が割り込み、情熱クリスタルを握って、言った。
「ねぇねぇカメリアさん、このクリスタル使うとビーム出せるんだよね? これでお姉ちゃんと一緒にビーム撃っていい?」
 瞳を輝かせる花琳に、カメリアは笑った。
「ああ――というか別に儂のもんじゃない、好きに使ってあのクラゲ共をさっさと退治してくれ。儂ゃ暗いのは飽きたわ」
 すると、数本のクリスタルをにぎったまま、花琳は朔の後を追って走っていく。

「わーい、ありすびぃぃぃむっ!!!」
 と、思う存分目からビームを楽しみながら。
 その後をさらに追いかけるミチル。最後にカメリアを振り向いて、一度だけ深く、お辞儀をした。


「――なんじゃ、しっかり家族もおるのではないか」
 と、カメリアはその様子を見ながら呟くのだった。


                    ☆


「あ、あれはカッコいいのだ……!!!」
 と、木之本 瑠璃(きのもと・るり)は感動に打ち震えた。
 夜の街を眩しく輝くビームが飛び交っているその光景を眺めた瑠璃は、手近な『情熱クリスタル』をもぎ取ってパートナーである相田 なぶら(あいだ・なぶら)に手渡した。
「行くぞなぶら殿、どうやらこれがあれば目からビームが撃てるようなのだ!! ここは平和と正義のためにあの電気クラゲを退治するしかあるまい!!」
 もともと正義感の強い瑠璃のこと、こうなることはコンマ1秒で予想できたが、なぶら本人はそこまで情熱とやる気に溢れた人物ではない。
「う、うん……でもさ、何か目からビームって……ちょっと恥ずかしくない?」
 しかし、いまひとつ煮え切らないなぶらを瑠璃の鉄拳制裁が襲う!!
「バカものぉーー!! それでも男かぁーーーっ!!!」
「へぶうっ!!」
 軽く吹っ飛んだなぶらを指差して、瑠璃は叫んだ。
「この状況下で何を言っているのだ!!
 街で困っている人が大勢いるのだぞ? それを恥ずかしいなどといっていることの方がよほど恥ずかしいのだ!!
それに勇者を目指すなぶら殿なら、きっとすごいビームが撃てると我輩は信じておる!! さぁ、一緒にビームを撃つのだ!!」
 差し出された瑠璃の手を握り、なぶらは立ち上がる。
「……ありがとう瑠璃、目が覚めたよ。普段はだらけてる俺だけど……そこまで言われて黙ってちゃあ男が廃るってもんだしな」
 その手をしっかりと握り返して、瑠璃は笑った。

 夜の闇の中、眩しいビームに照らされて、二人は笑い合った。

「さあ――行こうか瑠璃、俺たちの情熱、見せてやろう!!」
 珍しく気合の入ったなぶらを見て、瑠璃も嬉しそうに声を上げた。
「おお、さすがはなぶら殿なのだ!!
 それでこそ勇者、我輩が知ってる勇者王は凄まじいガッツの持ち主だったのだ!!
 だからなぶら殿にも撃てるのだ!! どんな敵にも負けない、常人の3倍はあろうかという情熱ビームがきっと撃てるのだぞ!!」
 情熱クリスタルを強く握り締め、二人は走り出した。

「ああ、燃えろ、俺の勇者魂!! 燃え上がれ俺の情熱!!」
 なぶらの気合に、瑠璃もまた情熱を燃やして応える!!
「燃え上がれ、我輩の正義の心!! 一緒に行くのだ、この心――燃え尽きるまで!!!」


「目からビィィィィィィムッッッ!!!」


 ――数分後。
「……なぁ瑠璃、ちょっといいか?」
「何なのだ、なぶら殿?」
「うん……やっぱり……燃やし尽くしちゃいけなかったんじゃないかな……って」
「あ」


 かなりレベルの高い情熱を見せつけた二人であったが、その分の反動もまた凄まじく、ものの数分で動けなくなって街角に倒れこむのだった。


                    ☆



「だぁぁぁっ!! なんでいいとこで停電なんだよっ!!!」
 と、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)は叫んだ。何しろパートナーの匿名 某(とくな・なにがし)と共に『特撮ヒーロー特集34選』のDVDを鑑賞中に停電になったのである、その怒りは理解できる。
「まぁ待てよ。理解はできるが、だからって目からビームなんて出ねぇっつーの普通に」
 康之ほど熱血マンではない某は、ため息混じりに呟いた。
 二人の手には『情熱クリスタル』があり、その効果も使用方法も街の様子を見れば一目瞭然だ。
 とりあえずロケットパンチをパラミタ電気クラゲに叩き込んでみた某だったが、その効果のなさに驚く。
「だから撃とうぜビーム!! 目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!!」
 と熱弁する康之だが、某はいまひとつ乗り気でない。
「うーん……そうは言うけどなぁ。まあ確かに康之が楽しみにしてた『中華戦隊チャイナマン』の47話が途中で見られなくなって残念なのは分かるけどよ」
 康之は、その某の言葉にぐぐっと拳を握って感情を高ぶらせた。
「そうなんだよ、あの話じゃ五人がかっけぇ名乗りするのに……!! そうだよ、某だって『咆哮戦隊ガオガオマン』の31話見たがってたじゃねぇか!!」


 飛行戦隊バードレンジャーの最終回は伝説級。


 それはそれとして、結崎 綾耶(ゆうざき・あや)もまた怒りに打ち震えていた。
「もーっ!! せっかく楽しみにしていたドラマだったのにーっ!! 続きが気になるーっ!!」
 と、こちらは情熱クリスタルを手に、ためらおうことなくビームを発射する。


「乙女の怒りーっ!! きしゃーーーっっっ!!!」


 可愛らしい綾耶のツインテールからピンクのビームが2本発射され、上空のパラミタ電気クラゲにヒットした。
「わざわざ今日来ることないじゃないですかーっ!!」
 そして、怒りに任せて次々にクラゲを撃破していく綾耶を、遠巻きに眺めているのがフェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)である。
「……今日の綾耶、ちょっと怖い」
 フェイはドラマには興味がなく、綾耶の付き合いでドラマを干渉しながら舟を漕いでいたくらいなので、さほどの怒りを感じているさけではないが、このまま停電が続けば綾耶が怒り続けることになるので、それも困るのだった。
「しかし、ビームねぇ。……情熱か……びーむ」
 だが、こちらもいまひとつ情熱の薄いフェイの指先からはなんか細くて黒いビームのようなものしか発射されない。その光線はへろへろと虚空を飛び、クラゲまで到達することなく消えてしまった。
「ダメか……ん?」
 ビームを撃つことを諦めかけたフェイは、怒り狂った綾耶の背中に、うっすらと光り輝く翼を見つけた。
 綾耶はその様子に気付いていない。ただ怒りに任せてビームを発射するタイミングに合わせて、光の翼が見え隠れするのだ。

 綾耶は守護天使だが、光の翼を展開することができない。それが今、ビームの影響かは分からないが、とにかく一瞬でも出現しているのだ。


「何が……起こってるんだ……?」
 と、クラゲが漂う夜空に、フェイは呟くのだった。