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chapter.13 駅長室 


 ティフォン愛のお仕置き部屋。
 いつからここの駅長室がそう呼ばれるようになったかは分からない。
 ただ、これまでのイベントとは違い、脱落者の方が実は快適に過ごせた、などという甘い展開は今回用意されていない。

 これまで脱落した68名は、皆この四駅目のホームに集められていた。
「これから何があるの?」
「どうせアレでしょ? 漫画とかドリンクバーとか置いてくれてるんでしょ?」
 イベント未経験の者、経験のある者たちがそれぞれの不安や予想を口にする。しかし待ち受けていたものは、彼らのどんな想像よりも残酷なものであった。
「はい集合」
 目付きの悪い駅員がやがて現れ、全員を呼びつける。彼の手元には、脱落者リストがあった。
 以下が、今回の脱落者リストである。

 脱落者一覧(下車順)

 一駅目〜二駅目間
 東條 カガチ
 漆髪 月夜

 二駅目〜三駅目間
 ラルク・アントゥルース
 世 羅儀
 叶 白竜
 小鳥遊 美羽
 ラムズ・シュリュズベリィ
 テラー・ダイノサウラス
 クロ・ト・シロ
 チンギス・ハン
 如月 正悟
 ネージュ・フロゥ
 六本木 優希
 麗華・リンクス
 ノート・シュヴェルトライテ
 東 朱鷺

 三駅目〜四駅目間
 風祭 隼人
 風森 巽
 ブルタ・バルチャ
 緋桜 遙遠
 ステンノーラ・グライアイ
 風森 望
 玖珂 美鈴
 カイ・フリートベルク
 ミスター バロン
 ヴィルヘルム・フォーゲルクロウ
 ユーリ・ロッソ・ネーモ
 御神楽 陽太
 イリス・クェイン
 クラウン・フェイス
 宇都宮 祥子
 武神 牙竜
 鈴木 周
 奈月 真尋
 アデリーヌ・シャントルイユ
 ドクター・ハデス
 綾原 さゆみ
 清風 青白磁
 騎沙良 詩穂
 東雲 秋日子
 喜多川 マリア
 雛乃・ヴィーシニャ
 ルカルカ・ルー
 夏侯 淵
 レン・オズワルド
 ロザリンド・セリナ
 カレン・クレスティア
 ジュレール・リーヴェンディ
 雷霆 リナリエッタ
 ベファーナ・ディ・カルボーネ
 リース・エンデルフィア
 アガレス・アンドレアルフス
 リクト・ティアーレ
 ノア・セイブレム
 天空寺 鬼羅
 五百蔵 東雲
 リキュカリア・ルノ
 スウェル・アルト
 ランタナ・チェレスタ
 志方 綾乃
 東條 葵
 弥涼 総司
 ミルディア・ディスティン
 茅野瀬 朱里
 コア・ハーティオン
 ラブ・リトル
 アキュート・クリッパー
 ブルーズ・アッシュワース

「おい一番前のヤツ、来い」
 リストを見ながら命令する駅員。呼ばれたのは、最初に脱落したカガチだった。
「え、いや愛のお仕置きとかちょっとそういうのは」
「いいからつべこべ言わず来い」
 無理やり連行されそうになるカガチを止めたのは、敗退したばかりの葵だった。
「そこまで強引に受けさせる愛のお仕置きとやらに、興味あるね」
「ん? なんだお前。順番通り並んでろ……いや待て、そんな軽口を叩ける余裕があるなら、お前最初行け」
「いいんだね? 僕、ちょっとやそっとじゃなんともないというか、満足しないよ?」
 そう言って、葵は駅長室へ連れて行かれた。
 数分後。
 ドアを開け、出てきた葵は、がっつりやつれていた。
「な、何があった!?」
 その変わり果てた様子に全員が駆け寄るが、葵はぷるぷると首を横に小さく振るだけで、何も語らない。
「……」
 一気に、場が重くなった。駅員がどんどん名前を呼ぶ。
「もう順番とか関係なく呼んでくぞ。今みたいなのがあったらキリがないからな。次、レン!」
「俺か……あ、いや俺はレンじゃなくてハギだけどな」
 危うくキャラが戻りかけてしまったレンが、駅長室に入る。そして。
 戻ってきたレンは、顔が青ざめ、足取りがフラフラだった。
「ど、どうした!?」
「ハギとか言ってすみません、ほんとすみません、レンオズワルドです。俺の名前はオズワルドです」
「……」
 一体中で何が行われているのか。そんな想像すら与えられる暇なく、駅員が名前を呼ぶ。
「次、ネージュ!」
「あ、あたしっ……!?」
 びくびくしながら駅長室に入るネージュ。
 数分後。
「ひくっ……ひくっ……」
「!?」
 ネージュは、泣きながら出てきた。
「中で何を……何をされた!!」
「ごめんなさい、ごめんなさいあたしが全部悪いの……これからはちゃんと、毎日オムツはきます」
「オムツ!!?」
 不可解な発言の後またネージュは泣き出したが、さらに駅員の点呼は続く。
「次、さゆみ!」
「私か……思い起こせば電車の中で好き放題やっちゃったから、怖いなあ」
 数分後。
「……こわい、生卵こわい」
「生卵!?」
 さゆみは、なぜか体のあちこちを白身と黄身で汚しながら帰ってきた。
「卵って、ああいう風に使うのね……私、まだまだ甘かった。ごめんなさい、卵様ごめんなさい」
「卵様!?」
「次、ロザリンド!」
「か弱い乙女だから、不安です……」
 数分後。
「……もう二度とパソコンとか触りません、本当にすみません。反省してます」
「か弱い!? 本当にか弱い!!?」
「はい次……」
 こうして、ひとり、またひとりと脱落者の名前が呼ばれ、その度駅長室に悲鳴がこだました。
 一体中では、何が行われたのか。それを知るのは、お仕置きを味わった本人のみである。