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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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 パーティの主催者に一言挨拶をしたいと言ったルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)が会ったのはカンゾーだった。
「荒野でクリスマスパーティをすると耳にしてね。彼としばしの間、お邪魔させてもらうよ」
 と、ルドルフは斜め後ろに控えていたヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)を紹介した。
「おう、誰でも大歓迎だぜ。校長ってのはいろいろあるんだろ。うちは三人だがあんたは一人だ。今日は思い切り羽を伸ばしてけよ」
「そうさせてもらおう」
「案内するぜ。おーい、ケーティ!」
 カンゾーに呼ばれて小走りにやって来たケーティが、二人をテーブルに案内した。
『珍しいお客様で緊張しますのん』
 ボードに書いて見せると、ルドルフは小さな笑みを浮かべた。
「今日はただの客だと思ってくれ。それにしても見事なツリーだ。そう思わないかい、ヴィナ」
「ええ。個性豊かなパラ実らしいツリーですね。訪れた人を楽しませてくれます」
『メニューをどうぞ。お飲み物はどうないますですのん?』
「ヴィナ、どうする?」
「ノンアルコールのカクテルを。ルドルフ校長は……」
「ワインを頼むよ」
『かしこまりましたのん』
 ケーティはちょこんとお辞儀をして厨房に行った。
「ルドルフさん、今日は来てくれてありがとう。それと、いつも一緒にいること、あなたを支えるのを許してくれてありがとう」
「どうしたんだい、急にあらたまって」
 聞いてきたルドルフに、ヴィナは静かな微笑みだけを返した。
 ヴィナがルドルフを支えていこうと思って傍で働いていることを、良く思わない人がいることに彼は気づいている。
 ヴィナ自身が気づいているのだから、周りをよく見ているルドルフが知らないわけがない。
 薔薇学特有のイエニチェリ制度により、さまざまな思惑が交錯するのは止めようがない。
 その上でヴィナをイエニチェリに任命したということは、ある生徒から見れば贔屓ととられても仕方のないことだ。
 それはルドルフにとって、決して良いことではないだろう。
 それでも選んでくれたことが、ヴィナは嬉しかったし感謝した。
 その気持ちを詳細に言葉にすることはできるけれど、多くを言うのは気恥ずかしくもあったし、余計な気を遣わせてしまうような気もして言わなかった。
「クリスマスだから……じゃ、変かな」
「では、素直にその気持ちを受け取っておこう」
「これからも、いろんなことが起こると思うけど、俺は変わらずにあなたの傍にいるよ。だから、あなたは迷わずになすべきことをしてほしい」
 ルドルフを裏切ることなど決してありえない、とヴィナはまっすぐにまだ若い校長を見つめた。
「ただし、間違った方向に進むようなら、蹴飛ばしてでも正すけどね」
「フフ。それは一発で目が覚めそうだな。安心して間違えることができそうだ」
「ルドルフさん、そんな……。心配はしていないと続けようとしたのに台無しだよ」
 ルドルフは悪戯が成功したように、クスクスと笑った。
「君が何の心配もしなくてすむように、努力しよう」
 話しに区切りがつくのを見計らっていたように、ケーティがワインとカクテルを運んできた。
『料理もすぐに来ますのん』
 つまみにチーズとカットフルーツが添えられた。
 ヴィナがルドルフのグラスにワインを注ぐ。
「ありがとう。では、メリークリスマス!」
 ワイングラスとカクテルグラスが澄んだ音を響かせた。


 クリスマスと言えばサンタクロース。サンタクロースと言えば赤と白。
 というわけで、辻永 理知(つじなが・りち)は赤いドレスに白いコートで合わせてきた。
 一方、夫の辻永 翔(つじなが・しょう)はタキシードだ。
 そっと腕を絡めてきた理知に少し驚いた翔だったが、すぐに受け入れて彼女に歩調を合わせてゆっくりと歩き出す。
「賑やかで楽しそう! 催し物とかあるのかな?」
「特にこれといったものはなさそうだけど……ああ、あれじゃないか? あの派手なツリー」
 翔は360度にさまざまな色のレーザーを飛ばすツリーを指さした。
「あと、あれも」
 続けて、ケーキのツリーも。
 理知はきょとんと目を丸くした。
「ウェディングケーキ? 緑だけど」
「形をツリーに見立てたんだろ。おもしろい発想だよな」
 と、その時。
 犬の鳴き声が近づいてきた。
 声の方向を見ると、ポメラニアンが二人に向かって駆けてくる。
「わっ、かわいい! 誰の犬だろう?」
「かわいいっていうか、でかいだろっ」
「ジャイアントポメラニアンだね。おいで〜」
 理知が広げた両腕に、人懐っこいジャナイアントポメラニアンは素直に飛び込んできた。約二メートルの巨体が。対する理知は百五十二センチ。
「理知……!」
「きゃっ」
 さすがに無理があり、押し倒されそうになった理知を翔が後ろから抱き留めた。
「お、重い……っ。ポメ、どいてくれ! 背骨が折れる!」
 翔の叫びを聞き分けたか、ポラニアンは体勢を戻すとおすわりの姿勢になった。
 そこに、天使姿の歌菜が慌ててやって来た。
「大丈夫でした!? 今、お席に案内しますね」
 ジャイアントポメラニアンは同じく天使姿の羽純に連れられて行ってしまった。
 テーブルに落ち着いた二人は今、料理とケーキを楽しんでいる。ケーキはツリーのケーキだ。
 理知はナッツがまぶされたケーキにご機嫌だ。
「ケーキのツリーってすごいよね。私も作りたいなぁ」
「あの巨大なのをか?」
「ん……やっぱり家に飾るとなると大変だよね。ご近所さんに配るとはどう?」
 翔が微妙な表情をした。
「ふふっ。冗談だよ。主婦とかならいいけど男の人にあげたら、あなたが好きですって誤解されちゃいそうだもの」
「家に収まって、二人で食べきれる大きさにしてよ」
「うん、そうするね」
 そろそろ食べ終わるかという頃、理知は体に異変を感じた。
「何だろ……急に暑くなってきたなぁ。気温あがった?」
 不思議に思いながらも理知はコートを脱いだ。
 胸元の開いた大人びたデザインのドレスが露わになる。
「翔くんは暑くないの?」
「少し暑いけど、脱ぐほどじゃないな。理知、薄着になるのはいいけど冷やし過ぎるなよ。風邪ひいたらつらいぞ」
「うん。でも暑いの〜」
「理知!?」
 背中のファスナーに手をかけた理知に驚き、翔は慌てて席を立った。
 止められた理知はシャンパンでほんのり染まった顔で翔を見上げる。
「……ダメ?」
「……ダメ」
「翔くんと二人きりならいい?」
「い、いいけど……ここで脱ぐなよ。──脱ぐなって言ってるだろー!」
「誰も見てないよぅ〜」
 翔は必死で止めているのだが、理知はじゃれ合い気分で夫をさんざん翻弄したのだった。


 プロポーズをしたのはハロウィンの時だった。
 それからクリスマスまで、短かったような長かったような。
「ゼーさん、ケーキ食べないの?」
 思い出に飛んでいたシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)は、金元 ななな(かねもと・ななな)の呼びかけて現実に戻ってきた。
 思い出も現実も、いつも傍にななながいてシャウラはとても幸せだ。
「ケーキほしいのか? あげるよ」
「いいの!?」
「いいよ。あ〜んして」
 なななは恥ずかしそうに視線をさまよわせた後、目を閉じて小さく口を開けた。
 無防備な顔にシャウラは眩暈を起こしそうになったが、グッと堪えて一口大に分けたケーキをなななの口元に運んだ。
 ぱくりと食べたなななの頬が幸せそうに緩む。
「ん〜っ、おいし〜い! ゼーさんも食べるべきだよ! 次はななながゼーさんに食べさせてあげるね」
 なななはシャウラの手からフォークを取り上げると、同じようにケーキを分けた。
「さ、あ〜んして」
 にっこり微笑まれてケーキを差し出されれば、今度こそシャウラは倒れそうになった。
 ケーキは、幸せの味だった。
 その後、二人はのんびり会場を歩いて回った。
 空京のようにオシャレなイルミネーションがあるわけでもなく、光っているものと言えばド派手なツリーとテーブルの蝋燭くらいだったが、その代わり夜空は綺麗な星空だった。
「ななな、寒くない?」
「へーきだよ。ゼーさんは大丈夫?」
「俺は少し暑いくらいかな。マフラーどうぞ」
 シャウラは自身のマフラーをなななに巻いた。
 あったかいね、となななの顔がほころぶ。
「式は、いつがいいかな。ホワイトウェディングってのもいいよな」
「オーロラが見えるところで?」
「オーロラ見たいのか? 寒いぞー、耐えられるかな?」
「ゼーさんがあっためてくれるよね?」
 いつになく誘惑的な言動なのはクリスマスという雰囲気のせいか、それとも……。
「ド、ドレスはどんなのがいいんだ? たしかドレスでの式をしたいって言ってたよな?」
「かわいい系も素敵だしエレガンス系も着てみたいんだよね。ゼーさんも一緒に見てほしいな。それで、式の後はいよいよ新婚旅行だね。行きたいとこある?」
「う、宇宙……かな? いや、なななとならどんな地の果てでも……」
 自分が言い出したこととはいえ、だんだん具体的になっていく内容にシャウラはドキドキしていた。
 なななの頬もほんのり赤い。
「子供は何人……」
 つい口走ってしまった言葉にシャウラはハッとしてなななを見た。
 先ほどよりも赤い顔をしていた。
「ち、違うっ。スケベなことは考えてないぞっ」
「……」
「……なんてな。ホントは今、こうしたいんだ」
 シャウラはなななを抱きしめた。
 彼女のぬくもりに心からあたたかくなっていく。
 なななも腕を回して応えてくれるのがまた嬉しい。
 これからツリーの傍に行って、なななにプレゼントを見つけてもらう予定なのに、このままでいたいと思ってしまう。
 プレゼントの宇宙怪獣のぬいぐるみの首には、カードを下げておいた。
 ぬいぐるみはポシェットをかけていて、中にはネックレスが入っている。
 見つけてほしいし、ネックレスをなななにかけてあげたい。
 シャウラは決心してなななから体を離した。
「メリークリスマス、ななな!」
 今は、キスまで。