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リアクション
第三章 大奥茶会2
「睦姫様、湯屋の準備が整ったようです」
睦姫の警護を申し出たオルレアーヌ・ジゼル・オンズロー(おるれあーぬじぜる・おんずろー)が片足を引きずりながら付き従う。
同じく、久坂 玄瑞(くさか・げんずい)も控えている。
二人は、お茶会に出るために風呂に入りたいという睦姫に同行していた。
「お茶会楽しみですね。エリュシオンと交流のある瑞穂の姫がお世継ぎを産めば、マホロバも帝国と新しい関係が望めようというもの」
オルレアーヌの探るような物言いに睦姫はぴしゃりと言った。
「もちろん、分かってるわ。そのために私は大奥に来たのだから。オルレアーヌ、いずれあなたの望むようになるかもね」
「それは好ましいことですね……ん?」
前方より小柄な女の子と髪の長い少女が歩いてきた。
睦姫とすれ違いざま、声をかける。
「これ落としたよ?」
そう言って桐生 円(きりゅう・まどか)は手のひらを見せた。
銀色に光る変わった細工のネックレスがある。
「これは私の……!礼をいいます」
「どういたしましてー。えっと、睦姫様? 噂には聞いてたけど美人さんだね。可愛い。巻き髪も綺麗だね、どうやって手入れしてるの?」
「こ、これは」
円に親しげに話しかけられて、睦姫は戸惑っていた。
いつも大人に囲まれて育ってきた彼女には、このような経験はあまりなかった。
円は睦姫の手を取って、なおもぺらぺらと話しかける。
「睦姫様、お時間ですので」
傍に控えていた玄瑞が促すと、睦姫は逃げるように去った。
「円ー、そんな早口に言っても解らないわよー。逃げられちゃったじゃない」
円のパートナーオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が金色の目を光らせている。
「だって、見た感じ面白そうな子だったもん。で、どうだった? 何か感じた?」
「んー、私の力を使ってみたけどぉ、よく分からなかったわ。なんか邪魔されてるみたいで。それにわざわざ落とさせてみたあの銀のネックレスだけど、あれって巧妙にできたロザリオよねー。私は触れたくないわー」
吸血鬼のオリヴィアは首をすくめた。
「ロザリオ? もしかして……エリュシオン製ってやつ?」
円は睦姫の慌てて立ち去った後姿を思い出していた。
卍卍卍
「睦姫様は入浴中か。今のうちに調べておきますか」
忍者
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は瑞穂藩、並びに睦姫の周辺を探していた。
「しかし、女性の着物って動きにくいですね」
彼は男なので大奥内では女装している。
ずれる胸パットを手で抑えながら、次々に部屋を物色していた。
「な、何をしているのかな〜? 悪い子はお仕置きしちゃうぞ」
ウィングがぎょっとして振り返ると、そこには巨体を着物で覆った厚化粧の女官が居た。
睦姫の女官だと自称する
ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)はじろじろとウィングを眺めている。
「キミ、それって胸パットだよね。ニセ乳だよね。ボクは何百人てアイドルを見てきたからすぐわかるよ。あ、違った。ワタクシは……ホホホ」
ブルタは引きつった高笑いし、眼鏡がキラーンと光る。
「今、見たことは黙っててあげるから、ボクが睦姫様の湯屋に入るのを手伝って欲しいな。ボクが付いて行くと気味悪がられて追い出されるんだ」
「それは、そうでしょう……では、私は調べのもがあるのでこれで」
「ちょっと待った!」
ウィングはブルタの厚化粧の匂いに気分が悪くり、一刻も早くこの場から立ち去りたかったが、この自称女官は彼を放そうとしなかった。
「ボクの見立てでは睦姫様は混血。純粋のマホロバ人ではないと思う。将軍家の血筋に新たな血が必要とでもたきつければ、きっと面白いことになる……。そのためにも睦姫様のおカラダを、か、確認しなければぁ!」
ブルタは興奮し息を詰まらせながらウィングを引きずっていく。
しかし、当然のごとく二人とも追い出されていた。
いつの間にか『風呂を勝手に覗いたものは死罪(by 睦姫)』という紙が張られるようになっていた……。
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