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リアクション
第六章 噴花のとき1
「天子様、鬼とはなんなのか。噴花は止められないのか。なぜ地球人と契約しているのか。パラミタと地球は以前にも接触があったのか。あなたの知る限りの事私にも共有させてくださいませ、あなたの後は私が引き継ぎますから」
扶桑の中では、秋葉 つかさ(あきば・つかさ)が天子に向かって呼びかけていた。
彼女にも、何かが起ころうとしているのが分かる。
ややあって、返事が帰ってきた。
扶桑と一体化しているという天子は、そこまで回復していたのだろう。
『すべては、噴花へ通じます』
「それではわからぬ。とりあえず四つの鍵とは鬼城家に伝わると言う『刀』『槍』『皿』『印籠』で間違いないのか? それで、噴花が起こる? そこまでして、なぜ噴花をせねばならん」
つかさと共に扶桑に取り込まれた吸血鬼ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)も疑問をぶつけていた。
蝕装帯 バイアセート(しょくそうたい・ばいあせーと)が冷ややかに言う。
「俺は考える事には向いてないからな、おまえらだけで勝手にやりなっといいたいところだが……一つ聞いておきたい。いちいち人を大量に死なすのはどうしてだ。そこまでする必要があるのか?」
天子は、以前話した通りだといった。
『死と復活と繁栄は繰り返されます。
人は永遠には生きられず、また世界も同じです』
天子は抑揚のない声で続ける。
『あなたの命はどこから来ましたか』
「それは……」
つかさは逆に天子に問いかけられて言葉に窮した。
天子のいわんやとすることを考えていた。
『噴花は命を送り、送られる儀式。もう一度生まれ変わり、新たな生を送るため。
そのことに気づいたものが数千年にわたって命を見守り、見送らねばなりません。
そして、ただ繁栄のみを願い祈るのです。
天子はそのために存在し続けるだけのもの。
私はその間、鬼にこの地を護らせました。それだけの力を鬼はもっていたのです』
「だが、鬼はそのためにどんな犠牲を払ってきたことか。托卵も……苦しんでいる女たちや鬼の子はどうしたらいいのか。失われたものを取り戻すには!?」
ヴァレリーは、つかさや他の御花実たちのことが気がかりである。
マホロバの統治権を『天鬼力』という鬼の血とともに継承するために、大奥では悲劇が繰り返されてきた。
鬼の血を継いだ子供たちにこの業を背負わせていくのか。
『噴花とは生と死が行き交う時間。
その瞬間に鬼の力を返せば戻るでしょう。
鬼の血は、花びらが、運んでいきましょう』
天子の声がだんだんと大きくなる。
『時は流れ、鬼も人も変わる――この先どうなるかは、私にもわかりません』
『あなた方はまだ生きなければならないのです。
私をこうして蘇らせてくれたのが証拠。
人は生き続けたいのだという意思として、確かに受け取りました――』
つかさは、ハッとして扶桑の外を見た。
大勢の人が集まっている。
彼女は天子が、扶桑から自分たちを追いだそうとしていると感じた。
「いやです。私はここにいます。私があなたの代わりになりますから!」
『あなた方にはその資質があった。
しかし、扶桑の役割を真に理解しようとするものはいなかった。
いえ、そのほうが良かったのです。
でなければ、数千年もの間、会いたい人に会うこともできないでしょう』
『もうすぐ、噴花がはじまります。
私がもとは地球人でなぜ扶桑の契約者となったか、それは送られた先にいけばわかります』
いきなさい――