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リアクション
「ねえ、公瑾ちゃん。
私たち乙王朝側なのに、ミツエちゃんの妨害なんかして大丈夫なのかな?
ミツエちゃん、怒ると怖いよ……」
秋月 葵(あきづき・あおい)は、実のところ、セルウスとミツエがパートナーになれば、何か面白いことになりそうだ、とも思っていたりする。
「我が友、孫権が危機的状況なのです。そのようなことを言っている場合ですか?」
パートナーの英霊、周瑜 公瑾(しゅうゆ・こうきん)は、過去の時代より、今も変わらず友である孫権の、助けにならなくてはと力説した。
「この周瑜の目の黒いうちに、彼を待機パートナーなどにさせてなるものですか!!」
「まあ公瑾ちゃんの頼みごとだし? 協力してあげる」
「周瑜! 葵!」
孫権に連絡し、待ち合わせた場所で、三人は再会する。
「この度は災難ですね。何か私達にできることはありますか?」
「とにかく、セルウスをミツエの前に連れて行かないこと、なんだよな」
「じゃあ、セルウスを助けて、彼の仲間に合流させちゃえばいいんだよね!」
葵はそう言うと、魔砲ステッキを掲げる。
魔法少女りりかるあおいに変身し、「どう?」と言った。
「変装すれば、ミツエちゃん達にも正体バレないよね!」
「変、装……?」
周瑜と孫権は、怪訝そうな眼差しで、りりかるあおいを見る。
「葵、変身しても顔は素顔を晒していますが、大丈夫なのですか?」
周瑜が言った。
「そこを突っ込んだら駄目! お約束効果を知らないの!?」
「……うん、まあ、そうだな……。
ミツエは、物分りがいい奴だと思うぜ……?」
孫権も、無理矢理頷く。
「とにかく、セルウスはある程度丈夫だし、ちょっと位放っておいても問題ないかなって」
「そうですね。
捜索は任せて、我々は三勢力の陽動や妨害をしましょう」
「俺はそれには加われないが」
すまない、と孫権は言う。
「解っています。貴公も健闘を祈ります」
そして二人は、一旦孫権と別れた。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)のパートナー、英霊の夏侯 淵(かこう・えん)は、武闘大会の後始末をしていたルカルカを引っ張り出して、乙王朝へと向かった。
曰く
「殿がまた変なことに巻き込まれた故、手伝って欲しい」
殿、とは曹操のことである。
事情を知って、
「家庭の事情に首を突っ込むのはアレだけど、影響が大き過ぎるもんね」
とルカルカも協力を決めた。
帝国に敵対するつもりは全く無いが、人命救助として、騒乱の現場からセルウスを助け出すことは、してやりたい。
一方、同じように、パートナーの強い希望で、曹操との対面を求める者がいた。魔鎧、曹丕 子桓(そうひ・しかん)は、かつて曹操の息子だった英霊の魂を宿している。
「ようやく動き出したかと思えば、子供探しとは……情けない! 一言言ってやりたい!!」
という曹丕の言葉に、柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)は、まあ気持ちは解るか、と苦笑した。
「俺も自分の父親が小娘にいいようにこき使われてたらと思うとな、うん。
確か、曹操の連絡先を知ってる英霊がいたな……」
と、ルカルカに連絡を取り、合流してみて、曹丕は驚いた。正しくは、淵を見て、である。
「ちみっこ……?」
「ちみっこ言うな」
じろ、と睨みつける。
「おまえそのなり、他人を言えるのか」
「うるさい。曹操と連絡は取れたのか?」
「取れた。待ち合わせてくださる。劉備とは別行動らしいが、殿とは会える」
「ふん」
淵の答えに、曹丕は鼻を鳴らした。
曹操の部隊は荒野を中心に、劉備の部隊はサルヴィン川流域を中心にセルウスの捜索を行っている。
孫権の部隊も、当初セルウスの捜索を行っていたが、キリアナに協力する契約者達の動きを知ると、それに対抗する為に呼び戻された。
曹操は、淵と連絡をした場所に馬で乗り付け、配下を伴わずに待っていた。
「殿。お待たせして申し訳ない」
「いや、然程は待っておらぬ。退屈もしなかったしな」
駆け付けた淵に、曹操は答える。
馬具に頭蓋骨が括り付けてあって、それが丁度、馬を降りた曹操の頭に近い位置にあった。
クトニウスは、ちらちらと現れた者達を見、知り合いカ、と曹操に問う。曹操は頷いた。
「壮健そうで何より」
「うむ。そなたもな」
再会と、曹操の健在振りを喜ぶ淵に、ルカルカはひっそり笑う。
「淵、ルカはセルウスの捜索に行くね」
「頼む。俺は殿の護衛と、補佐に付く」
金剛竜で飛んで行くルカルカを見送り、淵はそのまま曹操の側につく。
彼と行動を共にするのは久しぶりだ。懐かしく、嬉しい。
だが、気になることがないわけではなかった。
また、隣りでは、曹丕が剣呑な表情をして、早く話をさせろと無言で主張している。
「殿」
と、淵は曹丕を紹介しようとし、曹丕はそれよりも先に、ズイ、と彼の前に詰め寄った。
「曹操。貴様には幻滅したぞ。
あんな小娘の配下に下り、子供探しに興じているとは、情けない!
貴様、本当にそんな扱いで良いのか?」
曹操は、ぽかんと曹丕を見ている。
「曹丕子桓だ」
と横で淵が言って、ようやく納得した顔をした。
「少なくとも、俺は嫌だ!
あんな小娘に召使のようにこき使われている貴様など見たくもない!」
ちら、と、曹操は淵を見、淵は微かに苦笑した。
似たようなことが、以前にもあった。
何故他人の下に就くのか、と訊ねられて、ミツエになら託してもいいと思った、と答えた。
淵は曹丕の訊ねたいことも、曹操の答えも知っていたが、それについて口を挟むことはしなかった。
「曹丕よ、貴様には、ミツエの器が解らないのだな」
曹操は、曹丕に視線を戻すと、そう言った。
「過去は過去、今は今。
転生を果たした今、親子と言っても仕方なかろう。おまえはおまえの好きにするがいい」
「つまり、あんたはミツエのセルウスとの契約に賛成なのか?」
氷藍の問いに、曹操は頷いた。
「いいではないか。ミツエが望むなら、やってみるがいい」
「そんな呑気に構えてていいのか?
今回に味をしめて、ミツエがまた同じことを繰り返したら、今度はお前らがベンチウォーマーになるかもしれないんだぜ?」
「あの少年は特別だ。あの資質を持つ者は、そう滅多にはおるまいよ」
曹操の言葉に、氷藍は納得できない思いで言い返す。
「没落したもんだな、三国の王。
いいか、お前らは三人揃ってやっとこさ三国志の三王なんだよ。
孫権が欠けちまったら、本気で出番無くなるぞ!」
「ふむ」
曹操は首を傾げた。
「少年をミツエのパートナーにすることはマイナス、か。何故手勢が増えるとは思えぬ?」
「三武将が力を合わせることこそ王道。
王道を蔑ろにして大望は成せるのか、とは、思う」
淵が、そう疑問を口にして、ふ、と曹操は笑った。
「王道、か。
それは劉備が望むものだな。
だから、あやつは確かに、今回のことを賛成はしておらなんだが」
「ならば、殿の望むものは?」
「朕がミツエに望むものは覇道よ」
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