校長室
海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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★ ★ ★ 「あの砂嵐は?」 フィーニクス・ストライカー/Fのコックピットで、ジヴァ・アカーシがモニターに映った不審な砂嵐を指して言った。 「今調べるね」 イーリャ・アカーシが、魔道レーダーで砂嵐周辺を走査した。 「反応あり。敵?」 イーリャ・アカーシが再確認する間もなく、砂嵐に異変が起きた。 まるで、砂自体が海水か何かであるかのように、それをかき分けて次々に巨大な影が浮上してきた。敵分遣艦隊だ。 砂の波をかき分けて大型飛空艇の舳先が現れ、艦橋から砲塔にかけての威容を表す。 「敵大型艦4、中型艦6、艦載機……多数!」 戦艦の艦首カタパルトから次々に発進していくアートゥラ・フィーニクスとアーテル・フィーニクスを見て、イーリャ・アカーシがブラックバードに報告した。駆逐艦の甲板からも、搭載していたヴァラヌス・フライヤーが発進していく。 『受信した。データはリンク。いったん下がれ』 ブラックバードの佐野和輝から返信がある。 「さすがに、いったん引くわよ」 むかってくる敵フィーニクスの編隊を見て、ジヴァ・アカーシが牽制のミサイルを一斉発射してから反転した。 「大当たりか。速いな」 敵データを収集しつつ、マルコキアスの源鉄心が言った。スピードだけで言えば、敵は同じフィーニクスであるフィーニクス・ストライカー/Fとマルコキアスをはるかに凌駕している。 「掩護します」 ティー・ティーが、マルコキアスのツインレーザーライフルでフィーニクス・ストライカー/Fを掩護した。 「偵察機は無理はするな。こちらの後方支援に徹しろ」 柊恭也が、刃金を前進させて僚機に告げた。 レーザーマシンガンで弾幕を張りつつ、ウイッチクラフトキャノンで敵を狙い撃つ。 「また無駄弾! つまらないミスはするな」 柊恭也が外すのを見て、柊唯依が叫んだ。 「敵が速すぎるんだ」 「とりあえず、敵の足ぐらいは止めろよ」 「分かってるって」 サンダービームで敵を牽制しつつ、刃金が僚機の後退の時間を稼いだ。 ★ ★ ★ 「敵の別働隊か。やりおる。我が恐竜騎士団からの報告はあるか?」 恐竜要塞グリムロックの中で、ジャジラッド・ボゴルがサルガタナス・ドルドフェリオンに聞いた。 「そちらの索敵には、引っ掛かる敵はいないようですわ。おそらく、あれが敵の隠し球のすべてかと」 魔道レーダーでも索敵しながら、サルガタナス・ドルドフェリオンが答えた。 「ならば問題ない。如月和馬にも、猫井又吉にも変更なしと伝えい。ブルタ・バルチャは?」 「どうも、警戒されて、ブリッジには近づけないようですが」 「あの風貌だからな。なるべく、エステルの情報を集めさせろ」 「はい」 ★ ★ ★ 「おっまたせー、お手伝いするよ。ここは私に任せて」 逸早く駆けつけてきたオクスペタルム号のブリッジで、ノーン・クリスタリアが言った。旗艦隊を目指す、敵別働隊と戦端を開く。 「みんなー、お願いだよ」 各砲塔に散った乗組員に攻撃を頼みつつ、ノーン・クリスタリアがミサイルを発射していく。使い方が荒いので、弾薬を補充する対イコン傭兵も必死だ。それでも、ノーン・クリスタリアの存在に、熱狂してかいがいしく働く乗組員たちであった。 「……、右回頭!」 操舵輪を預かるエリシア・ボックが、敵の攻撃を予測して素早く舵を切った。かすめるようにして、敵主砲の砲弾が飛んでいく。 敵分遣艦隊左側から攻撃を仕掛けたオクスペタルム号を追うようにして、フラン・ロレーヌ(ふらん・ろれーぬ)とフルリオー・ド・ラングル(ふるりおー・どらんぐる)のアストロラーベ号が攻撃を開始していた。艦隊戦があると聞いて直接アトラスの傷跡で合流すべくやってきたのだが、なんとも絶妙のタイミングで合流することになってしまったものだ。そのため、端から遊軍という感じで敵艦隊に攻撃を開始していた。 「敵艦隊と一定距離を保ちつつ、間断ない攻撃を加えるよ。撃てっ!!」 近づいては撃ち、撃っては離れを繰り返し、アストロラーベ号が敵艦を挑発する。 「あれが、エリュシオン帝国の艦か」 アストロラーベ号の艦長であるフルリオー・ド・ラングルが、みごとな操船で敵艦隊の周囲を移動しながら言った。 「諸君、敵の飛空艇は概ね拿捕するとのフラン提督のお達しである。大いに狩りを楽しもうじゃないか!!」 戦利品として、敵艦を手に入れる気満々でフルリオー・ド・ラングルが乗組員を鼓舞した。 敵艦隊の隊列を崩そうとアストロラーベ号もオクスペタルム号も左右から攻撃を加えるが、敵艦隊は陣形を崩さず、艦砲射撃でそれに対応した。本来なら、イコンで一掃するところなのであろうが、イコン部隊は偵察部隊をも半ば無視して旗艦であるフリングホルニを目指していた。 未だ、艦船の砲撃戦は始まっていない。まずは、艦載機で旗艦であるフリングホルニを潰すのが目的のようであった。 当然、フリングホルニからもイコン部隊が迎撃に出るはずではあるのだが、なぜか、このとき、フリングホルニの指揮系統は乱れていた。