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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

リアクション


【5】


「ほんとにそのポンコツを修理する気?」
 サリアが運んだ”使える”サルベージ品を物色するアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)に、エメリアーヌ・エメラルダ(えめりあーぬ・えめらるだ)は言った。
 アルクの手には、昨日市場で入手した”壊れた荷電粒子銃”があった。彼は来るべき戦いに備え、この武器を修理しようと考えたのだった。
「イコンは専門外なんでね、イコンやユニットのサルベージには力になれそうにない。それにこの先、大きな戦いばかりとは限らない。この身ひとつで戦う状況だって起こるはずだ」
「その時のために修理するってわけ?」
「いざという時にこの状態では心もとないだろう?」
「でも、メタいこと言うけど、そのままのほうがいざって時に役に立つんじゃないの?」
 スキル(窮鼠の知恵)的な意味で。
「逆境には燃える質だが、わざわざ火の中に飛び込む真似はしないさ」
 それにこの銃には縁を感じている。
 昔、アルクが見た映画では、とんでもない量の電気を使って時間を超えていた。とんでもない量の電気を使うこの銃、時間を超えて未来に来た自分と繋がりを感じる。
「……あの映画では”ジゴワット”とか言ってたかな」
 パーツを集め、組み立て直してみると様になった。
 暴発を避けるため銃身を新たなものに。制御装置の部品も痛みの少ないものに換える。
「こいつも使ってみるといいぜ、お兄さん」
「む?」
 不意に声をかけたのは太公望だった。
 彼はサルベージ品から拾ったライフルスコープを、アルクに放り投げた。
「これは?」
「まぁ覗いてみな」
 船室に向けると船室の中が、海に向けると海の中が透けて見える。
「”スケルトンスコープ”ってんだ。見ての通り障害物を透視して標的を狙うことが出来る代物さ。荷電粒子銃の威力なら壁を貫通して攻撃が出来るだろ。役に立つと思うぜ」
「なるほど。便利なものだな」
「あーら、いいもの貰ったじゃない。でも、覗きに使っちゃだめよ」
 エメリーが言うとアルクは狼狽した。
「わ、私は別にそんな気は微塵も……」
「なに、そんな悪さにゃ使えんのよ。こいつで透視出来るのは分厚い壁とかだけ。逆に薄い服は透視出来ないのさ。ま、着替え中に覗きは出来るかもしれないけどねぇ……?」
「だから、しないと言っている!」 
 アルクは、壊れた荷電粒子銃あらため”スケルトンスコープ荷電粒子銃”を手に入れた。
 そこにエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が現れた。
「太公望隊長、提案したいことがあるんだが、ちょっとこれを見てもらえるか」
「なんだい、こりゃ?」
 エヴァルトが渡したのは筒状の装置。自在に形状を変化させるクルセイダーの武器、”聖剣アシュケロン”と呼ばれるものだった。
「前に連中と戦った時に奪ったものだ。量産して戦力にすることは出来ないだろうか?」
「へぇ……けど、連中の使う武器なんてイメージが悪くないか?」
「だが、元は大文字博士が考案したものなんだ。敵に使われっぱなしというのは、この武器が可哀想だ。どうにか博士が望む正義のために振るわせてやりたい」
 太公望は聖剣を見つめたまま、しばし沈黙。
「……じゃあこういうのはどうだ、これのドでかい奴を作るってぇのは?」
「どういうことだ?」
「このデカブツの武器にするのさ」
 そう言って、Gの刻印がされたコンテナを指した。
 ここには特務の技術者も仲間の技術者もいる。その上、幸いイコン用の資材はたくさんサルベージ出来た。そう無理な話でもない。
「なるほど。グランガクインの武装にするのか……!!」
 エヴァルトには見えた。蒼く輝く胸のクリスタルから、変幻自在の流体金属製の武器を取り出すグランガクインの姿が。
 武器には名前が必要だ。名を与えられて初めて魂が宿る。聖剣アシュケロン……確か、元の名はスパイラルナイフ。
「ならば名付けて、可変超装”スパイラルブレイヴァー”だ!!」
 その時、傍で話を聞いていたリカインは、なるほど、と手を打った。
「グランガクインの武器にする。そういうのもあるのね」
 超兵器の一部となれれば、志し半ばで散った愛竜も浮かばれる……かもしれない。
 早速、太公望に相談してみた。
「……そいつを超兵器に組み込むってぇ?」
「ええ。どうにかならないかしら」
 回収出来た装備は、ショルダーキャノンとワイヤークローの二つ。
 技術的な問題は何もないのだが、通常のイコンの何十倍もの大きさのグランガクインに取り付けるには、その二つは小さ過ぎてバランスが悪いように思える。
「うーん、俺達が爪楊枝で戦うようなもんだからなぁ……」
「なら一個と言わず、何百個も取り付けてみたらどうかしら?」
 ショルダーキャノンもワイヤークローも、イコンデッキに行けばたくさんある。
「おお。そのぐらい景気よく行けば、グランガクインの武装にもちょうどいいかもな」
 肩部に百連装のキャノン砲。マシンガンの如き制圧力の、名付けて”ガクインキャノン”
 束ねて強固にした無数のワイヤークロー。名付けて”ガクインアンカー”
「……よし、またひと潜り行ってくるわ!」