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リアクション
間幕 sideA 神官の部屋
神殿に、円はいた。
いまだ帰還の意思は見られず、神官の部屋に土足で入っては、そこにある物を勝手に調べ回っていた。
神官はその円に何も言わなかった。黙りこくったまま、祭壇にも似た場所で座り込んでいるのだった。
部屋に残っているのは何の変哲もない雑貨や生活品ばかりだったが、円がその中に不思議な色合いをした剣を見つけたのはそのときだった。
「これって……」
それは藍色と黄玉の色を混ぜ合わせたような輝きを放つ剣だった。
巨大な手のような形をした飾り棚に置かれていたそれを、円が握り持つと、神官の顔が強張った。
円はそれを目ざとく見つけた。
「これって、なに? その……神官さんの過去と……なにか関係でもあるの……?」
神官は答えなかった。しばらく彼は円と剣をじっと見つめたまま、何かを思い詰めたような表情をしていた。
だが、やがて――
「……懐かしきものだ」
そう、口を開いていた。
「それはかつて、私の振るっていたもの。仲間と共に、戦い続けていたかつて……」
「仲間と一緒に?」
「そう……遙か昔……」
神官はそう言って、遠いどこかを見るような色を瞳に滲ませた。
それから神官はなにも言わなくなった。円はそっと剣を元に戻した。
仲間――神官には、かつて仲間がいたのだろうか?
だとしたら――
(その人たちは……どこに行ったんだろう……?)
円は考えるが、答えは得られそうになかった。
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