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リアクション
■第36章
――ナオシ達は何事も無く、肆ノ島へと到着していた。
不安要素であったヒノカグツチは情報通り機能を停止しており、ただ雲海を漂う無機物となっていた。
もう一つの不安要素である魔物に関しても、オミ・ナが手に入れた粉を撒くと、船を忌み嫌うかのように自ら避けていったのである。
「スレスレの距離で横を通られた時はヒヤヒヤしたぞ」
モリ・ヤが溜息交じりでそう呟くと、ウヅ・キが隣でその光景を思い出したのか、身震いしている。
「安心するのはまだ早ぇ。本番はこれからだ」
振り返ることなく、ナオシは先頭を歩く。その手には金属製の籠手が装着されている。彼の武装のようだ。
「……あの、本当にあの部下の人達、連れて来なくてよかったんですか?」
ウヅ・キがおずおずと呟く様に言った。それはナオシとオミ・ナ、そしてモリ・ヤに問いかけていた。
現在肆ノ島に上陸しているのはナオシとオミ・ナとモリ・ヤとウヅ・キ、そしてコントラクター達である。ナオシ達の部下達は船にて待機している。
中でもナオシの部下達は最後までついて行くと聞かなかったが、何とか説き伏せたのである。
「連れて行くわけにもいかねぇよ、流石に多すぎる」
ナオシが歩きながら答えると顔だけ振り返りウヅ・キを見る。
「お前だって残って良かったんだ。元はと言えば俺が巻き込んだだけだ。この先、何があるかわからねぇんだぞ?」
その言葉にウヅ・キは首を横に振ります。
「いえ、ここまで話を聞いて黙っているわけにもいきません。最後までお付き合いします……役に立つかはわかりませんが」
「それに、こいつを危ない目には遭わるようなことはさせねぇよ」
「うむ、我々がそんな事はさせぬ!」
ウヅ・キの横を歩いていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の言葉と、それに同調する様に言ったコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)の言葉を聞いて、ナオシは黙って前を向いた。
「というか、そういう事なら俺達も巻き込まれたようなもんなんだけどなぁ?」
朝霧 垂(あさぎり・しづり)の言葉に、ナオシが「あー……それはその、なんだ……」と言葉を詰まらせる。
「大体拉致なんて方法とらねぇでよ、事情をちゃんと説明しろよ。俺達だって事情を知ってれば手伝うって言うのに」
「それなら聞くけどよ、証拠も無い、状況のみで太守――お偉いさんをブッ殺すから手伝ってくれや、なんて事頼んで手伝うか? 初対面の俺の事をよ?」
そう言われると、今度は垂が言葉を詰まらせる。
「そういう無茶な事に巻き込んだんだよ、俺は。時間もない、まともな戦法も取れない。となると賭けになるようなことしかできなかったんだ……お前らには悪い事をしたと思ってるよ」
小さく呟いた最後のナオシの言葉に、少し垂は意外そうな顔をする。
「……まぁ、今は事情は分かった。こういう事情なら喜んで協力する。けど、全て事が終わったらちゃんとした形で俺達に謝れ。これはケジメの問題だからな、有耶無耶にしたくない」
ナオシは垂の顔を見ずに「わかった」とだけ小さく言った。
「所で兄貴、奴の屋敷にどうやって侵入するって言うのさ? 作戦でもあるの?」
「あ? ねぇよンなモン」
「……それはプランBが無いって話?」
「BどころかAもねぇよバカヤロウ」
平然と言い放つナオシに、オミ・ナは頭を押さえる。
「策ならありますが」
アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が「司馬先生」と司馬懿 仲達(しばい・ちゅうたつ)を呼ぶ。そしてその背後にはアルツールが召喚した数多の【不滅兵団】が構えている。
策、というのはこうだ。
正面から【不滅騎士団】が館に進行し、陽動役として扱う。
数が多ければ対処する為戦力を削る事が出来る。その隙に侵入するというのだ。
「成程、所謂ダイナミックお邪魔しますというやつだな」
シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)が嬉しそうに言うが、ナオシは「駄目だ」と首を横に振る。
「中には他にも……クク・ノ・チとは無関係の奴らもいる。そいつらは今オオワタツミからの避難で駆け回っている筈だ。そいつらの邪魔をすることになる」
「そう言うけど兄貴……他に手はあるの?」
「まどろっこしい事必要ねぇよバカヤロウ。シンプルな方法があるだろ」
呆れた様に溜息を吐いてから、ナオシはこう言った。
「正面から堂々と入る」
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