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【借金返済への道】美食家の頼み

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【借金返済への道】美食家の頼み

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第2章


 難なくジャタの森へと到着したホイップ一行。
 キノコ狩りがスタートとなった。
 キノコを採るメンバーは猪から守ってくれる人達の内側へと入る。
 上から見ると、円形の陣のようだ。

「よっしゃ! キノコ狩りだぁー!!」
「注意事項聞いてないのかぁ! 待ちなさい馬鹿ベアぁー!」
 ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)が小さなシャベルを持ち、1人で突っ走る。
 それをマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)が慌てて追いかける。
「おりゃーっ!! キノコどこだぁー!」
「待てって言ってんでしょぉ!」
 2人の声がどんどん遠ざかっていく。
「ベアさんとマナさんて、本当に仲良いよね」
「そうだな」
 ホイップと側に居た藍澤 黎(あいざわ・れい)がほのぼのと両者を見て呟いた。
「まったくでありますな」
「同意ですわ」
 昴 コウジ(すばる・こうじ)ルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)も加わる。
「やっと止まった!」
 ようやく止まったベアにマナが駆け寄る。
「……もう味方は居ないのか。例え俺1人になろうとも最後まで戦う。マナ、お前は必ず俺が守るからな……」
「えっ……?」
 マナはいつもとは違うベアに顔を赤くして呆けている。
 ベアは手にしていた小さなシャベルで側でキノコ狩りをしていたメンバーに次々に切りかかっていく。
「きゃっ」
 ぼうっとしていた久世 沙幸(くぜ・さゆき)が攻撃され、悲鳴を上げる。
 その声に気付き、マナが正気に戻る。
「マナの笑顔を見れるなら……俺は……」
 そう言い、今度はホイップへとシャベルを振り下ろす。
「何やってるのよ馬鹿ベアーーー!!」
 取り出した青白いロングソードの形をした光条兵器で思いっきり殴り気絶させた。
 迎撃態勢をとっていた黎とコウジは気絶したのを見て、緊張を解く。
 マナは地面に突っ伏したベアを抱き上げる。
「大丈夫!?」
 急いで、ホイップが匂い袋をベアの鼻へと持っていく。
 険しかった表情が安らいだものへと変化する。
「有難う」
 変化を確認したマナがホイップへとお礼を言う。
「ありましたわ」
 ベアがおかしくなった付近からキノコを持ったルディが現れる。
「馬鹿ベアも役に立ったわね」
 言うと、マナはまだ気絶しているベアを小突いた。

「以外と見つからないものですわね。まだ本物は3本しか集まってませんわ。なんだかそこにあったのに採られているような痕跡もありますし……」
 ホイップが見える範囲でキノコを採っているのは荒巻 さけ(あらまき・さけ)だ。
 裂いて、中身が抹茶色の本物をじーっと見つめる。
 きょろきょろと辺りを見回して、誰も見ていないのを確認する。
 ビニール袋を取り出すとジャタ松茸を中に入れて匂いを嗅ぐ。
「こ、これで幻覚の中だけでも……」
 暫く嗅いでいると効果が出てきた。
 目の前に広がるのは大きなステージから見える大勢の観客。
 皆、さけの名前を呼んだり、団扇を振っている。
 さけの手にはマイクがあり、衣装はフリルやリボンがふんだんに使われている少しセクシーなもの。
 息を思い切り吸い込み声を観客へ飛ばす。
「みんなー! 今日はコンサートに来てくれてありがとですわーー!!」
 さけの見ている幻覚はアイドルになった自分だ。
 異変に気が付いたホイップがさけの元へと走り、匂い袋を鼻へと持っていく。
「あ、アレ? 観客は? わたくしのコンサートは?」
 その手に握られていたのはマイクではなく、ジャタ松茸だった。
「大丈夫?」
「……匂いだけでこれなら、食べたら……止めては駄目ですわー!」
 手にしていたジャタ松茸を生のまま口へと運ぶ。
「うわー! さけさんどうしたの!?」
「……ん? 土臭い……うぇっ。効果があるのは匂いだけですのね」
 ジャタ松茸を吐き出す。
「もう、馬鹿な事しちゃダメだよ」
「はい……ですわ。あ、これ集めた分は渡しておきますわ」
「有難う!」
 差し出されたキノコを嬉しそうに受け取る。

「反応があります。どうやらこの近辺にジャタ松茸があるものと思われます」
「そうか。しっかり探せ。研究用にも確保したいからな」
 臭気センサーでロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)が場所を絞り、ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)が地面に鼻をつけんばかりに探す。
「ロージーってばそんな事が出来るんだ! 凄いね!」
「お役に立てているようで何よりです」
 沙幸がロージーを褒めると少し嬉しそうに答える。
「あっ! あった!!」
 話している間にも沙幸がジャタ松茸を発見した。
 急いでチャック付きのビニール袋に入れる。
「それは本物なのか?」
「ん〜、裂いてみるね」
 キノコをビニールの中で裂く。
「あっ……」
 ビニールは沙幸の爪に耐えられず、簡単に破けてしまった。
 匂いが漏れる。
「あっ、いやっ、そんな事しちゃ……だ、ダメぇ〜!!」
「沙幸!?」
 急に沙幸がなんともエロい声を上げた。
 驚いてブレイズが声を掛ける。
「んんっ……あっ、ふあぁ〜ん」
 話しかけられたブレイズの方へと沙幸が向くと余計に悶えだした。
 沙幸の目には……うん、まあ、ここはあえて言わずにおきましょう。
「ふふははは! そうか……ついにこの僕の価値を世界が認めたのだな!」
「ブレイズ……?」
 今度はブレイズが急に立ち上がり、ロージーをビックリさせる。
 天にも届くほど高い塔の上から見下ろす絶景。
 塔の下で人々がブレイズの名を呼びながら跪いている様が良く見える。
「ミロ! ヒトガゴミノヨウダー!!」
 両手を広げ声高に叫ぶ。
「ハァ……2人とも待っていて下さい。今ホイップさんを呼んできます。そのまま動かないで下さいね。……聞こえて無いでしょうけど」
 悶えて顔を赤らめる沙幸と高笑いをしているブレイズという異様な光景を背にロージーはホイップを呼びに動いたのだった。