葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

【借金返済への道】美食家の頼み

リアクション公開中!

【借金返済への道】美食家の頼み

リアクション

「きゃーですぅ!」
 必死に走るシャーロットの後ろには猪がぴったりと張り付いている。
 囮役をやっているわけではなく、たまたまバッティングしてしまったのだ。
 それに狙いをつけ、光条兵器である銃剣付き拳銃を構えている者が1人。
「武尊さん、来ます」
 猪を狙っているのは国頭 武尊(くにがみ・たける)、隣にはシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)がいた。
「山鯨狩りじゃぁぁ!!」
 叫んでから引き金を引き眉間へと命中させた。
 森に銃声が響く。
「お見事です」
「当たり前だ!」
 仕留めた猪の近くへ行くと、シャーロットがお礼を言って去って行った。
 まだぴくぴくと痙攣を起こしているが、起きてくることはないだろう。

 場所は戻りまして、ホイップのキノコ狩り。
「あ! あったー!」
 木の根元にジャタ松茸を見つけ、嬉しそうに手を伸ばす。
 もう少しでキノコというところで木陰から出てきた足にその手を踏みつけられ阻まれる。
 エレキギターを掻き鳴らし登場したのは仏滅 サンダー明彦(ぶつめつ・さんだーあきひこ)だ。
「かーっぺっ! こいつは俺様のものだ! 貴様の分はねぇ!!」
 ホイップの顔へと唾を吐きかけ、せっかく見つけたキノコをもぎ取る。
「あぅ……えぅ……」
 涙をいっぱいに溜めるホイップ。
「あら、ふふ? あなた見たことない顔ですわね。ホイップさんに何をしているのかしら? まさか泣かせたの?」
 すぐ近くに居たルディが色っぽく微笑しながら近づいて来る。
 慌てて、ホイップの手から足をどかす。
「いや、えっと……その……お、俺の歌でも聴いて機嫌直せよ、なっ?」
 言うと、いきなりギターを弾き歌いだした。
「国頭〜、国頭〜、何処でもバイクだ国頭〜、俺の方がカッコイイ〜」
 …………。
 サンダー明彦が歌い終わると暫し沈黙が続いた。
「そんな味噌っかすみたいな歌詞の歌じゃ満足なんかしないわよ? ねぇ?」
「え、え〜っと……」
 ルディは楽しそうにしているが、ホイップは顔の唾を拭きどうして良いのか解らずにいた。
「あなた……私の下僕に丁度良いですわ」
 近寄ると耳元でルディがサンダー明彦に囁く。
 そのまま、首筋へと口を移動させる。
「!!?」
 囁かれた耳を押さえて、後ろへと後ずさりをし駆けだした。
「ん〜、もう少しでしたのに」
「なんなんだ! チクショー!! ぐへっ!!!」
 声を荒げたところで、歌を聴いてすっ飛んできていた武尊のバイクに轢かれたのだった。
「つまらぬ者を轢いたようだな!」
 轢かれながらほうほうの体で逃げていくサンダー明彦に聞こえるように言う。
「武尊さん、あの方は大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫!」
 後ろに乗っていたシーリルは心配そうにしていたが、案外丈夫らしくさっさと逃げ切っていた。

「これで全部かな。思ったより……」
「少のうございますね」
 ホイップの言葉のあとをクナイが継ぐ。
 ホイップの前には猪の山と10本程のジャタ松茸。
「ご、ごめん! ボクが食べちゃったりしたから……」
 カレンが小さくなって謝る。
「ううん。大丈夫だよ! それにしても、もう少しあると思ったのに……」
「それについては、思うところがある。誰かが先に採って行ってしまったのではないか? それらしき痕跡もあった」
 イレブンが断言をする。
「その通りです!」
 突如現れたのはエドワード・ショウ(えどわーど・しょう)だった。
 その背には大量のキノコが入ったビニールをかぶせた籠。
「このキノコを全てホイップに差し上げても良いですよ」
「本当!?」
「ただし条件があります」
「じょ、条件?」
「はい! ホイップからの情熱的なキッスをお願いします」
「じょ……!? きっ……!?」
 いきなりの事に顔を真っ赤にして口をぱくぱくしている。
「う、う〜ん……これじゃあダメ?」
 ホイップはエドワードにギュッと抱きついて、素早く離れる。
「は、恥ずかしいよぅ」
 更に顔が赤くなっているようだ。
「えと、こんなに沢山1人で集めてくれたんだよね? キスは……その出来ないけど、有難う!」
 お礼を言って、エドワードの顔の見てみる。
 エドワードの頭上では鐘がなっているようだ。
 顔がにやけている。
「構いませんよ! 全てどうぞ!」
 持っていたキノコを全て差し出した。
 こうして、キノコ狩りは無事に終了した。
 クナイと正義はジャタ松茸を裂き本物かどうか見極める。
 スターシークスは買ってきていた図鑑と照らし合わせ、他の食べられるキノコとそうでないものを分ける。
 猪のほとんどは武尊を始めウィングや葉月、恭之郎らの手によって解体され、1頭はそのままで空京へとお持ち帰りとなったのだった。
「こんなところで、まさかエドワード殿に会うとは思わなかった」
 呆れ気味に黎が言う。
「でも、側に居たのに出て来ませんでしたね」
「一応、信頼しているからな」
「はは、それはそれは」
 本気だったとは言えないエドワードだった。